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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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95/282

95話 闇依頼

メリークリスマス!








 今回の報酬金額、なんと“155,000”シルバ”だ!!


 俺達が単独撃破した戦車の中に、ちょっと修理すれば使える戦車が1両あったからだ。

 それ以外にもう1両、パーツを交換などの補修をすれば使えそうな戦車もあった為、これまた買取価格が上がった。

 この2両が回収できたことが大きい。

 味方勢力圏内での戦いではこういった特典があるのだ。

 被弾して乗り捨てた味方戦車も、戦闘が落ち着いて後に回収すれば新しく買わなくても済む。


 メンバーのそれぞれの分け前も、4等級ハンターの月収以上の金額になった。


 金持ちボンボン組はその金額にさして驚きもみせないのだが、彼らの収入といえば今やこのハンター稼業だけである。

 喜んだりはしない代わりに、収入があったことにホッとしている様子。


 タクが急に俺に身体を向けると、それを見たケイとソーヤも同様に身体を俺に向ける。

 そして3人が姿勢を正し、一呼吸置いたのちにタクが口を開く。


「ケン隊長、俺達3人をこのチームに入れてくれたこと、感謝します。それと戦闘の腕を上げてもらったことも、それに居場所をくれたことも、それから……」


「おいおいおい、何を言い出すかと思えば。そんなに改まって言うほどの事でもないだろ。俺達は“仲間”だぞ。それに何もお前たち3人には俺達も世話になってるしね」


「確かにケイは丸太戦車でそこそこ活躍の場を貰ってますけど、俺とソーヤは今回、後方でオーク歩兵を何匹か倒した程度ですから」


「いや、そんなことないだろ。例えばこれな」


 俺はハーフトラックの片隅に布で包まれている山を指さした。

 すると思い出したようにソーヤが声を上げる。


「あああ、忘れてました。オークの戦利品です。てっきりタクが申告してるのかと!」


 それを聞いたタクが血相を変えてソーヤに反論する。


「えええ、俺はソーヤが申告してくれてるかと思ってたし!」


 俺は苦笑いをしながら口を挟む。


「はいはい、わかったから。それに決算した後だからもう遅いよ。バレたらペナルティーになる。この事は黙っておくようにな」


 するとタク。


「え、申告しなくてもいいんですか?」


「そんなの当然。他のチームも金額の大小はあれど必ず何かしら申告しない戦利品はあるはずだからね。ご丁寧に戦利品のすべてを申告する奇特なハンターなんてそういないんだよ。ポケットに入るような宝石を手に入れて、わざわざ申告するか。そんな正直なハンターなんて聞いたことないよ」


 それを聞いたタクは「なるほど」とつぶやいて納得したようだ。

 ソーヤとケイも小さく頷いているところを見るとやはり納得したようだ。


 俺は布で包まれた戦利品に手を掛ける。

 一気にバッと布を取り去ると、そこには武器の山が出現した。


「すげえ量だな」


 俺は思わず声にだしてしまった。

 というのも、タクとソーヤ2人で倒したオークの戦利品にしては、量が多すぎるような気がしたからだ。

 すると俺が考えていた通りだったようでタクが白状した。


「あの、これって俺達が倒した以外の戦利品も入ってるんです。戦利品を回収してる時に、別のハンターの砲弾で吹っ飛んだオークが何匹も目に入ったもんで……ついでにっていうか」


 戦利品は対戦車ライフルにショルダーランチャーにライフル銃が数丁、それに拳銃と弾薬に手榴弾、それとオークの角が多数。

 それらが山積み状態だった。


 隠し戦利品としてはちょっと多いな。

 エミリーもそう思ったのかちょっと眉間にしわを寄せている。

 気まずい雰囲気になりかけたので慌てて俺がフォローに入る。


「ちょっと多いけどまあいいんじゃないか。直ぐに買取所へ持っていくと怪しまれるからしばらくは保管ね。念の為言うけど、絶対に他言無用だからね」


 全員が黙って頷いた。


 手榴弾とショルダーランチャーは持っててもいいかもしれない。

 対戦車ライフルも使い道があるかもしれない。

 そんなことを考えながらみんなしてモリじいのいるモリ商会へと向かった。

 丸太戦車の整備と弾薬の補給の為だ。


 モリ商会へと到着すると直ぐにあるものが俺の目に映った。


 75㎜対戦車砲だ。


 俺は思わず喜びを声に出す。


「やった! 遂にきたか!」


 待ちに待った75㎜砲。

 特に今や強力な戦車を所持するオークとの戦争も始まっているから、丸太戦車の搭載の50㎜砲では威力不足はゆがめない。

 そこへ届いた75㎜対戦車砲。

 俺は走ってモリ商会へと入って行く。


「モリじい! 早く75㎜砲取り付けてくれよお!」


 店内にいたモリじいが驚いた表情で俺を見る。


「こりゃ、いきなりなんじゃ。驚くじゃろうが」


 ちょっと驚かしてしまったけどそれどころじゃない。

 少しでも早く50㎜砲から75㎜砲へと換装してもらわないと、これ以降の俺達の生存に関わる。

 それがオークとの戦闘で嫌というほど感じたから。

 あんなカステラ戦車みたいなのが出てきたら、少なくても50㎜砲では豆鉄砲ということがわかったし。

 高ランクハンター達の75㎜砲でさえ撃破に苦労したんだから。


 機関銃の弾薬を補給した後、75㎜砲を大急ぎで換装してもらうように頼み込む。

 そして明日の夕方に取りに来ると勝手に言って、モリ商会を逃げる様にして後にした。

 もちろんモリじいの「それは無理じゃろ、無理、無理」という叫び声など聞こえなかったのだ。




 俺達は荷物や乗り物を宿に預けた後、祝杯を挙げるためにいつもより少し金額高めの飲み屋で集合した。


『『『かんぱーい』』』


 6人が集まっての乾杯だ。

 だた手に持つグラスはジュースだが。

 それでもいつも食べるものよりも数段上の料理に舌鼓を打ちながら、俺達は大盛り上がりだった。


 宴もたけなわというところで俺の後ろから声が掛かった。


「よお、ケン君達じゃないか。祝杯かい?」


 そう声を掛けてきたのはリュー隊長だった。


「リュー隊長じゃないですか。リュー隊長も祝杯ですか」


「ああ、そうだよ。だけど俺達はもう終わって解散したけどな」


 どうやら同じ店で飲んでいたらしい。


「そうだ、リュー隊長。折角ですからここで武勇伝でも語ってくださいよ」


 盛り上がったついでに俺が無茶ぶりを言うのだが、リュー隊長は酒が入っているせいか「そうか?」と言って俺達のテーブルに着き、さっそうと武勇伝を語り始めた――



 ――それから2時間が経つが、話が終わる雰囲気は全くない。

 正直失敗したかなと思うけど、それよりもみんなの俺を見る目が段々怖くなっていくんだが。

 リュー隊長は元々飲んでいた上に、このテーブルに来てさらにお替りのビールを頼む事数え切れず。


 その頃になると誰もリュー隊長の話など耳に入らず、エミリーなどテーブルに突っ伏して居眠りを始める始末。


 そんな中、リュー隊長が突然変な話を始めた。


「おお、それからな。今度オークの現金輸送車を襲う計画があるんだけど、どうだ、ドランキーラビッツも一枚かむか?」


「はあ? リュー隊長、何言ってるんすか」


 けだるそうにしていたメンバーも急に視線をリュー隊長へと向ける。


「いやあなに。カイセシアの街の半分が今、オークの勢力圏内になっちまっててな。その勢力圏内にハンター協会のカイセシア支部があったんだよ」


「それと現金輸送車とどういう関係があるんですか」


 俺の質問に不敵な笑みを見せたリュー隊長が語り出す。


「これはオークの捕虜から聞き出したんだがな、ハンター協会の事務所にあった金庫に大金が入っていたそうだ。詳しい金額までは解らないんだが、それを安全な後方へ輸送しようとしているっていうんだよ。ただな、サーカ川の橋が壊れてて修理に時間がかかってるっていうんだよ。その橋が修理完了次第輸送するらしんだけどね。そのお宝を頂こうって話だよ」


 そんな話ここでしちゃって大丈夫なのか?

 ちょっと心配してしまう俺。


「あの~、ちなみにその情報源のオークはどうなったんですか。情報を聞き出した後」


「そんなの決まってるだろ、今頃は土ん中に埋まってるよ。はははは」


 やっぱり……


 こうして俺達はちょっとやばい闇依頼に巻き込まれていくことになるのだった。







新しい展開に入っていきそうです。


標的はオークですが元はハンター協会という微妙なものです。





次話投稿は明後日の予定です。


次回もよろしくお願いします。

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