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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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91話 潜伏





  俺は周囲を警戒しながら指示を出す。


「エミリー、少し前へ出るぞ。敵歩兵に気を付けろ。皆も周囲警戒、特に歩兵は丸太戦車にとっては天敵だから注意してくれ」


 俺が前方の小高くなった場所の茂みに行くように指示すると、丸太戦車はゆっくりと前進する。

 戦車砲や銃撃音は聞こえるが俺達の場所からだと確認できず、敵戦車の位置がはっきりしない。


 ケイが突如叫ぶ。


「1時方向オーク兵!」


 俺が言われた方向を見ると、距離にして50m弱ほどのところにオーク兵数匹。

 自分の隊からはぐれでもしたんだろうか。


 軽く蹴散らす気持ちで俺は26型機関銃で射撃を加える。


 油断したと悟ったのはその直後だった。


 26型機関銃の銃架を取り付けてある装甲板に衝撃が走る。

 「しまった」と思った時には右こめかみに痛撃を感じた。

 着弾の衝撃時の破片が俺を襲ったらしい。


 俺はその場にしゃがみ込む。

 ミウが持っていたショットガンを投げ出して俺の両肩を支えてくれた。


「ケンさん、頭から出血してます!」


「くそ、また俺かよ。破片が刺さっただけだよ。撃たれたわけじゃない。しかし怪我すんのはいつも決まって俺じゃねえか。納得いかん」


 俺の声が聞こえたのか、エミリーが声を掛けてくる。


「びっくりさせないでよお兄ちゃん。それだけしゃべれるんなら早く次の指示を出してよね、もう」


 おいおい、それはねえだろ。

 そう思うがエミリーの言うのはごもっともだ。


 ミウに傷口を見てもらいながら、オーク分隊とは反対の方向へと向かうように伝える。


 そんな時、俺の代わりに26型機関銃を撃とうとしたケイが声を上げた。


「ケン隊長っ、ここ見て、ここ!」


 俺がケイの指さしたところを見ると、装甲板に何かが突き刺さっている。


 対戦車ライフルの弾丸らしい。

 貫通仕掛けて途中で止まってしまったようだ。

 その時の飛び散った装甲板の破片で俺は負傷したという訳だ。


 毎度の不幸なのか不幸中の幸いなのかわかりません。

 なんか俺1人だけ不幸を背負いこんでる感じがするんだが。


 イケメンでもなければ金持ちでもない。

 むしろ借金持ちだし。

 魔法も使えないし、やんなっちゃうよな。

 俺が勝てるのは魔獣だけだな。

 よし、まずはオークを蹴散らしてすっきりしよう。


 ミウに包帯を巻かれながらそんな事を考えていると、ライフル弾なのか対戦車ライフル弾なのか解らんが、戦闘室内へと突然飛び込んできた。


 その弾丸は戦闘室内で3回ほど跳弾した後、俺の左太ももをかすって外に出ていった。

 

「痛っ!!」  

 

 大した傷ではなかったが、俺の怒りと情けない気持ちの入り混じった感情は、実際の傷よりも大きかった。

 精神的ダメージ弾かよ。


 なおもカンカンと弾丸が装甲を叩く音が響く。

 歩兵から追撃される戦車……


 だがその追撃もわずかな時間の間だけだった。

 どうやら追ってはこないらしい。


 ほっと一安心したところで今度はオーク戦車数台を発見した。


「前方にタイプ7が3両、距離800。味方戦車と交戦してるみたいだな。掩護という名目で1両かっさらうぞ」


 横取りはハンター達から嫌われる行為でもあるが、今はそんなの知った事か。


 命中魔法はもう使えないから、車両を停車させてよく狙いを着けさせる。


「撃てっ」


 しかし敵戦車の後方に着弾。

 どうやらまだこちらの存在には気が付いていないようで、ハンターの戦車との交戦に夢中だ。

 俺は連続攻撃を決断。

 ミウにアドバイスする。


「ミウ、動いている標的には偏差射撃だぞ。まあいいか。一番右にいる奴は撃つときに必ず停車する。そこを狙って撃ってみて。タイミングは任せる」


「はい、ありがとうございます。やってみます」


 次弾装填完了の状態でしばらく照準器を覗き続けた後、ミウは50㎜砲の発射レバーを引いたのだが。


「外したぞミウ、もう一回。次弾装填!」


 そしてさらに次の発射でエンジン部分に砲弾は命中。

 1発でエンジンを爆発させた。


「命中、撃破」


「ケンさんやりました!」


 ミウが嬉しそうに叫んだ。


 その撃破を境にオーク戦車が後退を始める。


 隊長のリューからも敵戦車が後退を始めたと無線連絡が入った。


 まて、まだ3両しか破壊してないぞ。

 これだと稼ぎにならん!


「エミリー、追撃するぞ。それからケイ、追撃するってタクに無線連絡頼む」


 俺は前方にいるハンター達との誤射を避けるために大きく迂回しての追撃を選択。

 枯れ果てた河川敷を渡って対岸へと行く。


 そしてしばらく走ったところで、右側の方向でやっと敵戦車を捕らえた。


「発見した。エミリー、停車――3時方向、敵戦車3両、4、5両。 あれ、もっといるぞ。それに進んでる方向が違う、後退じゃない。侵攻してる!」


 するとケイが大慌てで声を叫ぶ。


「まずいよ、あれってオークの増援部隊だよ」


「確かにまずいな。後退するか。ケイ、無線で近くの味方に知らせてくれ」


 俺は後方の逃げ道を探す。

 敵に見つかったら大変だ。

 しかし、枯れ果てた石だらけの河川敷を渡ればまず発見されてしまう。


「ケン隊長、誰にも無線が繋がらないよ」


 やばい、孤立してしまたった!


 俺は慌てて地図を取り出してにらめっこするのだが、どう考えても敵部隊を避けて通る事は難しい。


 そんなことをしていると、とうとう前方からも敵部隊が侵攻してくるのが見えてきた。


 今いる場所からさらに左方向へ行くとなると険しい山に入って行くことになる。

 徒歩であれば山道を抜けて帰れると思うが、この丸太戦車では到底無理な道のりだ。


「しょうがない。エミリー、河川敷のギリギリのところまで下がろう。みんな、隠れられそうな場所を探してくれ」


 敵にバレない様にしながら河川敷まで後退する。

 河川敷の幅は200mくらいだが、枯れ果てているため草木も生えてない。

 つまり隠れる場所はほとんどない。

 特に丸太戦車は車高が高いからなおさらだ。


 やっとのことで見つけたのが2mほどの高さの段差だ。

 川岸との河川敷との段差であり、その下に丸太戦車を入れれば目立たないかもしれない。

 しかし考えている余裕などない。

 

「エミリー、河川敷に降りてあそこに車体を移動する、大急ぎで頼む」


 エミリーは「ったく」とつぶやいて見事な腕前でピタリとその段差に車体をはめた。

 ちょっとした窪地になっていたのだ。

 でも段差が少し足りない上に、窪地のサイズ的にどうしても砲身を段差の上に出さないといけない。

 恐らく敵が近くに来た場合、よほど接近しなければバレないかと思うが不安は残る。


 前と後ろを逆にした方がよかったかもしれないが、敵は近づいているからモタモタ動いている場合ではない。

 しかし段差の上には草が生えていて砲身がうまい具合に隠れる上に、敵側に砲口を向けているのは安心できる。

 撃つ気はないけどね。

 ここで撃ったらこの間のサクラさんの二の舞だから。


 ただ、敵部隊が河を渡るときに俺達の右側約50~100m付近を通る可能性が高い。

 丸太戦車の右側面は剥き出しではないけど、恐らく1mほど上半分が見えている。

 雨対策用の布を車体に掛けてはいるが、どこまでバレずにいけるかは運次第だな。


 時間があれば木々を拾ってきて偽装したんだが。


 こうして俺達は孤立した中でじっとすることになるのだった。



 

 




何とか見つからずに隠れることができた丸太戦車だが敵戦車は徐々に接近。

果たしてこの窮地をどうやって逃れるのか。





次話投稿は明後日の予定です。


次回もよろしくお願いします。

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