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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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90話 台形戦車との闘い






「ミウ、止めを刺せ!」


 ミウが発射レバーを引くと、50㎜徹甲弾は木々の間をすり抜けるようにして飛んでいき、敵オーク戦車に吸い込まれていった。


「命中!」


 少しおいてオーク戦車からは、搭乗員が次々に這い出てくる様子が見える。

 煙や炎は出ていないけど1両擱座させたとみていいか。


 俺は次の標的を探して双眼鏡を戦闘室の装甲板上で滑らせる。

 

 オークマークの描かれた砲塔を見つけた。

 

「11時方向、距離1200。頭だけ出してる奴を狙うぞ。装填いいか」


 ケイが答える。


「装填済み、いつでもいいよ」


 続いてミウ。


「……魔法照準OKです」


「撃てっ」


 発射した寸前に標的の敵戦車が走り出す。

 しかし命中魔法は伊達ではない。

 弾頭の軌道がわずかに弧を描き、狙い違わず敵戦車の砲塔に命中した。

 しかし50㎜砲弾は標的の砲塔の上を滑るように火花を散らして弾かれた。


「くそ、進入角度が浅かったか。もう1回狙うぞ!」


 敵戦車はまだどこから撃たれたのか分かっていないようで、明後日の方向へ砲身を向けている。


「装填OK」


「魔法照準よしです」


「撃てっ」


 50㎜砲弾は再び同じ標的へと飛んでいく。

 敵戦車は移動していて一旦姿が隠れるのだが、再度姿を現したところで砲弾は命中した。


 敵戦車の前面装甲で火花が散るのが見えた。

 正面に命中したようだ。

 しかし敵戦車は平然と動いているところをみると弾かれたのかもしれない。


「命中なのか。まてよ、あのシルエット――タイプ34戦車か。くそ、効いてないってことか」


 俺の言葉を聞いてミウが言った。


「あれはこの前遭遇した硬い戦車と同じ形です。硬芯徹甲弾を撃ち込んだのと同じ台形の戦車です」


 この距離で50㎜砲じゃ貫徹できないか。


「エミリー、場所を移動する。10時方向にあるくぼみに車体を入れてくれ」


「了解だよ、お兄ちゃん。でもあの台形の戦車どうするの?」


「他のハンターに任せるしかないだろ。あとは徒歩のハンターが対戦車火器で仕留めてくれるのを期待しよう」


「うん、そうだね。折角ハンターが沢山いるんだもんね」


 丸太戦車をくぼみに入れて、俺は新たな標的を双眼鏡で探す。


「そうだな、11時方向の奴に――」


 と俺が言いかけた時に、徹甲弾の装填を完了したケイが、自前の双眼鏡を覗きながら俺の頭を引っぱたく。


「いてっ」


「台形戦車の砲塔がこっち向いてるって!!!」


 俺は慌ててさっきまで見ていた方角に視線を向ける。

 それとほぼ同時に5mほど離れた場所に砲弾が着弾した。


「エミリー! 後退、後退しろ!」


 俺の叫び声よりも少し早く、エミリーは後退の操作をすでにしていた。

 エミリー反応が早くなったな。


 双眼鏡で敵の姿を追うとこちらを追ってくるのが見える。


「場所がバレたぞ。このまま全速後退しろ。1時方向距離1000、ミウは魔法照準してくれ。揺れるけど何とか頼む」


 ミウは激しく揺れる車内で必死に捕まり照準器から目を離さない。


「大丈夫です。魔法照準OKです!」


 揺れる車内から狙いを定めるなんて神業なんだが、命中魔法は標的が視界に入ればいいらしく、照準器内に映れば発射できるらしい。

 魔法便利だな。


「撃てっ」


 どうせ当たっても貫通できないだろうけど、うまくキャタピラを破壊できれば逃げ切れる。

 しかし、こういう時に限って狙いどころには当たらないものだ。


「命中っ……あ、でもこれは側面に命中だな。時間稼ぎにもならないか。ああ、もう。エミリー反転して逃げるぞ」


 エミリーが一旦停車して180度回頭をしていると、俺の双眼鏡の中には煙をモクモクと上げる台形の戦車が映った。


「あ、れ。タイプ34型戦車、撃破?」


 車体が急制動を掛けて止まり、エミリーが後ろを振り返って俺に向かって言った。


「何よ、それじゃあ後退しなくていいのよね。疑問系はやめてよね、もう」


「ああ、悪い、すまん。えっと、元のくぼみに入れてくれ……」


「お兄ちゃん、あの場所ならハーフトラックから見えるんじゃないの?」


 エミリーの言葉に相槌を打ってケイに無線で確認させる。

 タク達のハーフトラックは後方で待機しながら観測してもらっていたから、場所によっては俺達の位置よりもよく戦場が見える。


 ケイが無線を繋ぎ、その会話を説明してくれる。


「ソーヤが言うにはタイプ70型とかいう戦車の側面装甲を貫通して撃破したって。乗員は1匹だけ出て来たけど、直ぐにハンターの機関銃で撃ち殺されたって言ってるよ」


 何?

 今、タイプ70って言ったよな。


「ケイ、もう一度確認してくれるか。今タイプ70って言ったよな。間違いないのか聞いてくれるか」


 俺の質問に返ってきた言葉。


「間違いないって。外見がタイプ34とそっくりで、遠くから見えるとよく間違えるんだってさ。でもあれはタイプ70の軽戦車なんだって」


 マジかよ。

 焦って損したじゃねえか。


 ああ、でも今はそんな事考えてる場合じゃないか。

 俺は次の標的を探す。


 見つけた標的はタイプ7、カモだな。


「命中、撃破!」


 今度は1発で敵戦車は爆発して炎上した。


 ここでミウの魔力残量が厳しくなった。

 ミウはもしかしたらギリギリもう1回は撃てるかもしれないと言ったけど、魔力を使い果たしてぶっ倒れられても困るから通常射撃に切り替える。

 ということは、ここからは魔法なしでのガチ勝負になる。


 リュー隊長の無線連絡によると、5両が撃破されて味方戦車は現在10両で、そのうち3両が戦闘不能だという。

 15両いた戦車と装甲車が今や半分近くで、戦闘続行可能なのは俺達の丸太戦車を入れて7両という有様だ。

 徒歩のハンター、つまり歩兵参加のハンター達もかなりの被害が出ている。

 こちらの残存兵力はまだはっきりわからないけど、かなりの数の死傷者が出ているらしい。


 この状況だと撤退するんだろうなと思っていると、リュー隊長からは驚きの声が掛かった。


『――という状況だ。しかし味方も半減してるが敵戦力も半減している。今が踏ん張りどころの稼ぎどころだ。今こそハンター魂を見せてやれ!』


 死んだハンターに戦利品の必要なし。

 これがハンター達のルールだ。


 この時点で生き残ってるハンター達が奮い立つ。

 はっきりいって金の亡者たちなのだ。


 だからと言って俺達も引き下がらない。

 本当かわからないけど、敵の戦力も半減してるなら戦力比率は初めと変わらない。

 

 ここで引き下がったら借金を返せないだろ!


 そう、俺達兄妹は後へは下がれないのだ。



 





厳しい戦いはまだ続きます。





次話投稿は明後日の予定です。

どうぞよろしくお願いします。



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