89話 ハンターの戦い
集合したハンター達は無線で連絡を取りつつ出発したのだが、どういう作戦でオークの強固な陣地を襲撃するのか、全く連絡のないままオークの斥候部隊と遭遇した。
遭遇したのは偵察装甲車らしき車両が2両と小型4輪駆動車が1両だ。
ハンター達は我先にとあっという間にそれらを殲滅してしまった。
軍と違って規律もないため捕虜は1匹もでない。
あくまでも魔獣討伐という行動だからだ。
仮に我々がオーク陣営に捕まった場合も捕虜などという待遇はなく、奴らに喰われておしまいだ。
俺達人間は奴らの餌でしかない。
オークの装備する武器は俺達から見ても決して酷い代物ではなく、ゴブリンの武器とは全然違う。
かなりの数が戦利品として市場に出回っていて、多くのハンターも利用している。
ちなみにオーク製のライフル銃を1丁、買取所へは出さずにミウ用に保管してある。
ミウはショットガンしか持ってないから長射程用にと思って取っておいたのだ。
折角命中魔法が使えるのだから狙撃もできる様にと、ライフル銃を確保しておいたという訳だ。
機会があれば狙撃もやってもらいたいのだが、狙撃用のスコープを手に入れなければいけないな。
オークの戦利品を回収し終わると再び前進する。
後続からくる戦闘に参加できなかったハンター達が、破壊された車両を見ながら悔しそうな表情を見せる。
こんなに破壊しなければ戦利品となったのにとでも言いたそうだ。
しかし先頭を進むグループは高ランクのハンター達。
金になりそうもない古いタイプの装甲車は即破壊であった。
その装甲車が金になりそうだと判断すれば、走行装置を破壊した時点で砲撃をやめるが、そうでない場合は初めから致命傷を与える攻撃をする。
それだけの撃ち分けができる腕を持っているのが高ランクハンターだ。
ただ、今の戦闘で敵に進軍していることがバレた可能性が高くなった。
警戒走行していたが一気に進軍速度を上げる。
荒地走行が得意な戦車はそれでもいいが、随伴しているトラックが大変だ。
歩兵のハンターを満載しているトラックは荷台を激しく揺さぶり、次々に車酔いをするハンターが続出し始めた。
だからと言ってトラックの速度にいちいち合わせていられるほどの余裕などない。
戦車部隊とトラック部隊との距離が空き始めた。
そんな時だった。
もう少しで廃墟の街が見えてくる頃だと考えていると、街ではなくオークの戦車部隊が現れた。
先頭を行く8輪偵察装甲車から全車両に無線連絡が入る。
『8輪から全車両へ。前方に敵オーク戦車多数発見! 1、2、3……ダメだ、数え切れねえぞ。やばいぞ、見つかった。後退しろ、後退。うわっ――』
それで無線は切れた。
恐らく撃破されたんだろう。
前方からどす黒い煙が昇るのが見える。
今回のこの部隊の隊長であり、言い出しっぺのリュー・サワリから無線伝達が入る。
『リューから全車へ。今の偵察車からの無線を聞いただろ。オーク戦車部隊を発見した。これより戦闘に入る。迫撃砲及び榴弾砲の攻撃も始まるから着弾地点には十分気を付けてくれ。それでは全部隊……吶喊!!』
するとハンター達からは『おおお!』という掛け声が返される。
ハンター戦車から次々に戦車砲が発射される。
しかし走行中とあって激しく揺れ動く車体から射撃、そう簡単に命中するはずもなく、砲弾は木や地面に突き刺さっていくばかりだ。
俺達の砲塔を持たない丸太戦車はというと、接近戦での戦車戦など不利でしかない。
それが分かっているから敢えて突撃していく味方戦車とは距離を取って、地の利を生かして停車しての遠距離射撃だ。
車体の下半分が隠れるような場所からの隠蔽攻撃だ。
ハンター達の中でも37㎜などの小口径砲装備の戦車は、真っ先に敵の中へと突撃していく。
距離が離れると威力が劣るからだ。
しかしオーク戦車から未だ1発の射撃もない。
俺達が潜んでいる場所から見える範囲でも、オーク戦車は全車停止した状態で射撃してこない。
味方の軽戦車3両が敵陣500mまで接近したところで、オーク戦車の一斉射撃が始まった。
最初の一斉射撃で突撃した味方軽戦車3両が炎を上げた。
『リューより全車両へ報告。敵戦車20両はいる。ほとんどがタイプ7戦車だが中にはタイプ34戦車も交じってるから気を付けろ。以上健闘を祈る』
やばい、タイプ34戦車だと丸太戦車の50㎜砲だと弾かれてしまう。
硬芯徹甲弾もまだ1発あるけど接近しないと効かないし。
成形炸薬弾も2発あるけどこれは100m以内に接近しないとまず当たらない。
どのみち相手がタイプ34だった場合は接近しないとダメだ。
オークの歩兵もいるらしくチラチラと見えるのだが、今のところ何もしてこない。
対戦車火器を持っていないのかもしれない。
味方戦車もある程度接近したところで停止射撃をはじめた。
俺達も早速魔法射撃を開始だ。
「1時方向に砲炎、距離1200。徹甲弾装填。ミウ見えるか」
「はい、見えます。タイプ7戦車だと思います」
さすが獣人、視力は人間よりも良い。
「装填完了」
「魔法照準完了です」
「よし撃てっ」
距離1200mあっても1発で命中だ。
ミウには頭が上がらない。
「命中!」
タイプ7戦車の装甲は非常に薄いから、命中さえすれば装甲を撃ち抜ける。
ただハンター達が使う砲弾のほとんどは徹甲弾であって、軍が使う徹甲榴弾とは破壊力に違いがある。
軍の使う徹甲榴弾は装甲を貫徹した後、戦車内部で爆発するからだ。
ハンター達が使う徹甲弾は装甲を貫徹するだけの砲弾。
敵戦車内部で跳ねまわったりもすることもあるが、やはり徹甲榴弾には破壊力でかなわない。
というのもハンター達と軍とでは目的が違うからだ。
軍は敵戦車を1発で撃破したい。
しかしハンターは撃破するよりも鹵獲して戦利品としたい。
だから出来るだけ戦利品には傷を付けたくないのだ。
もちろん俺達の丸太戦車でも徹甲榴弾は積んでいない。
値段が安いという理由もあるけど、やはり撃破した後に修理して利用できる可能性が高いやり方を選ぶ。
「命中したけど砲塔がまだ動いてる。もう1発いく。次発装填急げ」
その頃になってやっとトラックが追いついたらしく、ハンターを次々に下車させていく。
歩兵のハンターが敵に接近すると迫撃砲と榴弾砲の射撃も始まった。
75㎜榴弾砲は後方に設置してあるから無線で指示しながら着弾場所を修正していく。
迫撃砲は50㎜の小型のものだが1人で担いで運べるほどの軽量だが、射程は800mほどしかないのでこの戦車戦の中を必死に接近していく。
ハンター達の姿が現れた途端にオーク歩兵も機関銃を撃ち始めた。
その途端、空から砲弾が振ってきた。
オーク陣営からの迫撃砲の攻撃のようだ。
敵と味方の砲弾が空から降り注ぎ、森の木々が次々と爆発で打倒されていく。
幸いにも俺達のいる場所は攻撃範囲に入っていないようだ。
他のハンター達には申し訳ないが、俺達はこの安全な位置から確実に敵を仕留めていくのだ。
これが俺達の今のやり方だからね。
ただ一番心配なのは撃破した後に証拠の写真を撮ることができるかどうかだ。
これが問題だった。
組織的な行動に慣れていないハンター部隊
敵味方の砲弾が交差する戦場で、丸太戦車の活躍は如何に?!
次話投稿は明後日の予定です。
よろしくお願いします。




