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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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88話 ハンター部隊





 皆のところに戻るとサクラさんは、俺とエミリーによろしく伝えてくれと言って宿屋へ向かったらしい。

 常に頭を垂らしてかなりの落ち込みようだったそうだ。

 あれじゃあしばらく立ち直れないだろうけど、結局は身から出た錆のような気もする。

 

 しかしゴブリンやオークの討伐報奨金額が大幅に下がってしまったのが困った。

 幸いにも輸送トラックの護衛の仕事が沢山あるようだけど、危険度が非常に高くなっている。

 以前に増してオークやゴブリンの兵士や野良が、あちこちうろついているからだ。

 ただ護衛の仕事だけだと、ハーフトラックと丸太戦車の維持費を保つにはかなりきつい。


 それならばいっそ自分たちで物資を輸送して、自分たちで護衛すればいいんじゃねっという結果になった。

 それには商業協会に届け出を出して許可証を貰わないといけない。

 届け出さえ受理されれば堂々とホットドック屋もできるし、大量の輸送物資も取り扱えるし、何よりも市場で業者として仕入れ値段で購入できる。

 それじゃあ商業事務所へ行って許可証を貰おうということになって、早速俺が動き出すのだが、ケイの一言で俺の動きは止まった。


「あ、それ私持ってるよ」


 は?

 何を言ってるのかこの子は。


「えっと、何を持ってるって?」


 俺が尋ねるとケイがバックから何やら取り出す。


「鈍い奴だね、商業協会の商業許可証に決まってるでしょ」


 するとタクがそれを説明する。


「ああ、そういえばケイは持ってたんだよね。それも1等級許可証だよね」


 商業協会にも等級あるんだな。

 でも1等級ってすげえな。

 どうせ金の力なんだろうけど。


 話によると1等級だと店も開くことも、大口の売買でもなんでもできるらしい。

 ただし、あまり派手な事をやると親に居場所がバレる可能性が高くなるから、それは勘弁してほしいとの事だ。


 とりあえず今日の所はこれで解散。

 各自補充品の買い出しや車両のメンテナンスをすることになる。

 俺は丸太戦車の整備と新しい丸太を調達して破壊された丸太と交換だ。


 そんな事をしてる内にあっという間に陽は沈んでいった。


 翌日、夜明け前にはメンバー全員がハンター事務所の駐車場に集合した。


 情報収集と依頼を探そうと、代表で俺とエミリーがハンター事務所のホールへと向かった。


 建物に入って行くとなんだか騒がしい。

 相変わらず混雑しているのだがハンター達の様子がおかしい。

 近くにいたハンターに尋ねてみたところ、ハンター独自に部隊を募って戦いを仕掛けようってことらしい。

 早い話、傭兵部隊を作ってオーク陣地に攻め込もうって魂胆こんたんだ。

 そのための依頼が掲示板に張ってあるというのだ。


 俺とエミリーも掲示板へと行ってみると、確かにその依頼はあった。

 どうやらハンター協会からの依頼ではなく、ある1人のハンターからの依頼というか提案のようだ。

 名前はリュー・サワリというらしいが、どこのパーティーにも入っていないようだ。

 2等級ハンターだがあまり有名ではないな。

 初めて聞く名前だ。

 

 個人からの依頼というか提案なので報酬というのはない。

 敵からの戦利品とハンター協会から貰える討伐褒賞だけだ。

 一見無意味な依頼にも見えるけど、こいうった依頼はよくあることだ。

 大きな魔獣の根城を奇襲するときなどに、足りない人員を補うために募集することがある。

 厳密にいえば仕事の依頼ではなく、一緒に魔獣討伐に行ってくれる人員の募集だ。

 

 ただ、今回の募集は規模がでかい。

 なんてったって襲撃する場所が、オーク部隊が陣取っている廃墟の街だからだ。

 数量の戦車や数十人のハンターくらいじゃ全然足りない。

 少なくても10両以上の戦車と100人以上の歩兵が必要になる。

 できれば迫撃砲や榴弾砲などもあれば役立つ。


 そうはいってもハンター達は軍隊ではない。

 戦車はあるが曲射砲の類など持っている者はほとんどいない。

 それに軍隊よりも戦闘経験は豊富だが、大規模集団戦闘となると慣れていない者が多い。

 それでもハンターの中には人族の域を超えた化け物のような奴も存在する。

 それは軍隊では絶対に存在しない。

 腕があれば稼げるのがハンターであって、一攫千金もありうるのがハンターの世界だ。


 出発は明日の夜明け前だ。

 滅多にない機会だし面白そうだと思ってエミリーに意見を聞いてみる。


「エミリー、これどう思う。俺は興味あるんだけど」


 すると少し考えた後、エミリーがしゃべりだす。


「そうね、面白そうだけど集まる人数が少ないと厳しい戦いになるんじゃないの?」


「う~ん、その時は中止になるんじゃないの。軍隊と違うから危なくなったら逃げればいいし。それにあの廃墟の街は何度も行ってるから、あそこに関しては詳しいしね」


「うん、わかった、お兄ちゃん。皆に相談してからね」


 その後、受付で昨日の討伐褒賞金や偵察依頼のお金を受け取って皆のところへと戻った。

 狼の毛皮や戦利品を売った分を合わせると、なんとか総額で30,000シルバに少し足りないくらいにはなった。

 良かった、悪い稼ぎではない。


 駐車場に戻ると、早速個人依頼である廃墟の街への襲撃の件について意見を聞いてみた。

 答えは簡単だった。


 全員一致で参加することになった。


 そうなると後は弾薬と燃料などをかき集めるために、闇市や各自の伝手を走り回って探すのだった。


 そして翌日、集合場所である街の正面門に行ってみると、予想以上の数のハンター達が集まっている。


 装甲車や戦車の数は合わせて15両、歩兵を運ぶためのトラックやどこで見つけてきたのか榴弾砲を牽引している車両も見える。


 こうしてハンター部隊は夜が明ける前にアシリアの街を出発した。






次回予告

オーク部隊への襲撃の為にハンターだけの大規模な襲撃部隊が作られた。

果たして指揮系統もない即席部隊の襲撃は成功するのだろか。








エミリー:「お兄ちゃん、硬芯徹甲弾って強いの?」


ケン:「そうだな、通常の弾頭よりも硬くして重量を軽くする事で初速を早くしてるんだよ」


エミリー:「えっとつまり、普通よりも硬い弾頭が通常よりも早い速度で目標にぶつかるって事?」


ケン:「そう、さすがエミリー。だからその分威力が増すんだよ。でもね、弾頭が軽いから空気抵抗なんかを受けやすくて遠くへは飛ばせないんだよ」


エミリー:「へえ、お兄ちゃん小学校もまともに出てないくせにさ、どーでもいい知識ばっかり詳しいよね」


ケン:「どーでもいい知識って言うな。生活がかかってるから当たり前だろ」


エミリー:「7×6は?」


ケン:「えっと……32!」


エミリー:「お兄ちゃん、これでわかったわよ。その偏った知識といえば……」


ケン:「な、なんだよ」


エミリー:「それは“ヲタク”よ!」


ケン:「正解!!」











次話投稿は明後日の予定です。


よろしくお願いします。

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