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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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86話 戦車戦






 双眼鏡で森の奥を確認すると、戦車らしき影がチラチラと見え隠れしている。

 無線でタク達の乗るハーフトラックへ軍へ連絡して撤退するように伝える。

 

 1、2、3、4、5……10両以上はいるっぽいんだけど。


「エミリー、奴らは真っすぐに突っ込んでくる。左側へ回り込むぞ」


 一旦後進したのち、車体の向きを90度左方向へと回転させると、全速力で進んでいく。


「よし、あそこの茂みに入って停止。徹甲弾を装填。目標11時方向の黄色い旗を立ててる戦車、距離800、魔法照準」


 俺の指示通りに背の高い草の茂みの中で停止する。

 そしてその後直ぐに「装填完了」の声がケイから掛かる。

 続いてミウからも「魔法照準完了!」と力強い声が聞こえる。


「よし、撃て!」


 50㎜徹甲弾が黄色い旗を立てているタイプ7戦車へと吸い込まれる。

 タイプ7戦車は装甲が薄い。

 50㎜砲でもこの距離から十分貫徹できる。


 赤い旗の戦車は恐らく指揮官の戦車だろう。

 破壊できたかはこの場所からではわからないが、停車して動かなくなった事は確認できた。


 敵の数は多い。

 いちいち細かい撃破確認などやってられない。

 移動しなくなればそれでいい。

 

「エミリー、30m先の茂みに移動!」


 同じ位置にいたら場所がバレて集中攻撃を受ける可能性もある。

 この装甲厚では1発喰らっただけで終わりになる可能性もあるから、出来るだけ動き回って場所を特定できない様にしたい。

 あわよくば、複数の戦車が潜んでいると勘違いしてくれればラッキーだ。


 移動すると再び停止射撃を繰り返す。


「撃て!」


 2両目のオーク戦車にも50㎜徹甲弾はもちろん命中した。

 そして今度は派手に爆発してドス黒い煙を噴き上げた。


 よおし、2つ!


 すぐに車両を移動させての停止射撃を試みる。


「ケイ、次弾装填急げ」


 あっという間に2両撃破された敵戦車は、こちらの姿が捕らえられていないようだ。

 いや、それどころじゃない。

 多分、こっちが何両いて、どっから撃たれているかもわからないんじゃないだろうか。


 全車両が前進を止めて、それぞれの戦車が勝手な方向を向いている。

 俺達を探してるんだろう。

 それを見て俺は頬が緩んでいく。


「奴らこっちの位置がつかめてないみたいだな。面白くなってきたね。ミウ、射撃練習だ。通常射撃でいくよ。12時方向のケツを見せてる戦車を狙って。距離700」


「……照準よしです」


「撃てっ」


 50㎜徹甲弾は目標戦車のすぐ横の木に命中して木を破砕した。


「あ、おしい。もう少し左。次弾装填大急ぎ」


 ケイもだいぶ装填が慣れてきたようで、決して早くはないが危なっかしかった動きがなくなった。


「装填完了、これでも急いでるんだけどね!」


「照準よしです」


「よし、撃て」


 今度の50㎜徹甲弾は敵戦車の後部装甲を吹っ飛ばした。


「命中!」


 エンジン部分から炎が上がり。乗員が慌てて脱出するのが見える。


 これで3つ目!

 次!!


「最初の茂みへ移動。次弾装填!」


 移動した途端にすぐ左に敵戦車砲が着弾。


「くそ、バレた。後退! 11時方向距離600、魔法照準、砲塔がこっちへ向いてる奴だ。撃たれる前に撃つぞ」


「装填完了」


「魔法照準完了です」


「撃てっ!」


 砲弾は敵戦車の右側面に命中し反対側から飛び出す。

 装甲が薄いため両面の装甲を撃ち抜いたのだ。

 しかし驚いたことにその戦車は一旦は停止したのだが、すぐにまた移動を開始した。

 

「おいおい、あの戦車まだ動いてやがる。ミウ、もう一発ぶちかませ」


「了解です……いけます」


「よおし、とどめっ」


 敵戦車は正面に向きを変えていたが、50㎜徹甲弾は正面装甲も撃ち抜き、今度こそ擱座させた。


「徹甲弾装填しておけ」


 これで4つ!

 次の標的は……


 次の標的を探して双眼鏡を覗いていると恰好の標的を発見した。

 ん?

 タイプ7だよな?

 でもなんか少し違うような気がするんだけど気のせいか。


「1時方向、砲塔だけ見えてるやつ。距離600。魔法照準」


「装填完了」


「魔法照準完了」


「車体が見えたら撃つから少し待って」


 砲塔だけ見えていた敵戦車が動き出し、隠れていた車体のシルエットが徐々に姿を現す。


「今だ、撃てっ」


 砲弾は車体前面装甲に命中するが貫通しない。


「弾かれたぞ。ケイ、次発装填。急げ、急げ。エミリー、後退しろ、後退!」


 ケイが装填しながら横目で俺を睨むのだがそれどころではない。

 むしろこんな状況でも俺を睨む余裕のあるケイを称賛したい。


 50㎜砲弾を弾いた戦車が丘を越えて姿を完全に現した。


「まじかよ、タイプ34じゃねえか……」


 俺の言葉を聞いてミウが不思議そうに尋ねてくる。


「もしかして、それって強い戦車なんですか」


「ああ、かなり厄介な戦車だ。1等級か2等級クラスのハンターが相手にする戦車だよ。くそ、こうなったらもっと接近して硬芯徹甲弾をぶちかますぞ。エミリー、せめて500m以内に接近できるか」


「はぁ、お兄ちゃん、相変わらず無理言うよね。でもやってみるから」


「よし、ケイは硬芯徹甲弾装填。ミウは魔法照準の準備、急げ」


 その時、敵の砲弾が直ぐ近くの木に命中する。


「位置がバレてるぞ、みんな気を付けろ!」


 さらに至近弾が地面に着弾する。

 続いて戦闘室側面の装甲板に縛り付けてある丸太が吹っ飛ばされ、ケイが思わず声をあげる。


「ひ~、集中砲火じゃない。装填完了したから早く撃ち返して~」


 揺れる車体で踏ん張りながらもミウが「照準よしです」と告げる。


「――距離500、今だ、撃て!」


 硬芯徹甲弾が砲口から発射された。


 通常の砲弾よりも初速を上げるために、少ない重量で作られた硬い素材の砲弾、それが硬芯徹甲弾だ。

 主な材料は硬い素材の鉱物や魔獣の牙や角の場合が多い。

 その材料によって値段も大きく違ってくる。


 今回発射した硬芯徹甲弾は結構な値段で購入したものだが、それだけの価値はあったようだ。

 タイプ34戦車の車体右側面に命中し砲弾は、その分厚い装甲をも撃ち抜いた。


「命中……ああ、くぞ。まだ動いてやがる。もう一発硬芯徹甲弾あるだろ、ケイ、装填頼む」


 タイプ34戦車の装甲を撃ち抜いたようだが、敵戦車は速度を落としはしたがまだ走行可能なようで、徐々に後進して戦線を下がっていく。


 装填が終わったケイが言った。


「装填完了――あれ、でも敵さん後退してるみたいよ」


 ケイの言う通り確かにタイプ34以外のタイプ7も後退している。

 あれ、丸太戦車の怖さが分かったのかな。

 と思ったのだが、俺達が撃ってもいないのに、敵の戦車に向かっていくつもの砲弾が飛んでいくのが見えた。


 軍の戦車隊とハンター達の戦車が応援に来たのだ。


 助かったと言うべきか、逃げられたと言うべきなのか。


 あ、オーク戦車の撃破写真と戦利品を回収しないと、他のハンターに横取りされちまう!!




 






単騎でオーク戦車4両を撃破した主人公。

戦利品と討伐写真を撮って帰還すると、なぜか周りの人達の態度が……





次話は明後日投稿予定です。


次回もどうぞよろしくお願いします。

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