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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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83話 隠密偵察






 チームメンバー全員で情報収集をした結果、オークの戦車と戦闘したというハンターから戦車に関する情報を得た。

 その時のオーク戦車は26型戦車といって古くからある一般的な軽戦車。

 ただし、オーク軍仕様であったそうだ。

 オーク軍仕様での外見的な違いはゴテゴテと骨のような装飾がされていたという。

 性能差まではわからないという結果だ。


 オークのその戦車が26型戦車と同じ性能ならば、45㎜戦車砲を搭載した装甲の薄い鈍い戦車のはず。

 はっきり言ってゴブリン戦車とあまり変わらない。

 しかし装甲は俺達の自走砲同様に薄いから、先に戦車砲を命中させた方が勝ちになる。

 違いがあると言えばオークの方が兵士の士気が圧倒的に高い。

 しかし情報はそれだけだった。

 あとは特に目に付くような情報はなかったのだが、見慣れない戦車を見たという情報は少し気になった。


 闇市で75㎜野砲で使っていた砲弾は全部売り払って、50㎜ヒート弾と50㎜硬芯徹甲弾をそれぞれ2発づつ購入。

 少し高い買い物となってけどオーク相手となると用心に越したことはない。

 切り札は持っておかないといけない。


 それと俺が使う短機関銃も苦労して探したんだが、闇市の露店で見つけたのはどれも正規品コピーの粗悪銃ばかりだ。

 戦闘中に暴発とかたまらん。


 困っていると全然関係ない雑貨の露店で中古のショットガンが売っているのが見えた。

 水平2連などの猟銃ではなくポンプアクションのショットガンなのだが、通常の物とは違い銃身の下に着剣装置が付いているタイプだ。

 露店の片隅にぶら下げてあるそれには、刃渡り30㎝ほどの長さの剣が付いている。

 値札には“1,200シルバ”と書かれていた。


 個人工房で製造されたオリジナル品らしく、銃に名称も製造番号もない。

 しばらくいじくりまわして俺はそれが気に入ってしまった。

 これなら接近戦でも使えるな。

 俺の戦い方にも合ってると思い、値切りに値切って各種弾丸と一緒に1,000シルバで購入した。

 でも買った後に気が付いたんだけど、銃を使った近接戦闘は得意だけど、銃剣を使うような格闘戦闘は苦手だった……。


 しかし闇市でも武器が不足してるとはな。




 そして夜明け前に工房へと行くと、しっかり作業は終了していた。

 恐ろしく速い。

 作業用の魔法を駆使したに違いない。

 ハンター協会の底力を思い知ったのだった。

 しかし、それほどまでにオーク陣営の情報がほしいんだな。


 簡単な説明を受けた後、俺達は街を出発した。

 途中まで自走砲とハーフトラックで行き、途中からは歩いて廃墟の街へ接近する予定だ。


 途中、街道から少しだけ外れて50㎜砲の試射をしてその、初速の速さに驚きながら扱いに慣れさせる。

 75㎜野砲とは初速が桁違いなのが肉眼でもわかった。

 暗闇なので照準鏡の調整は諦めるしかなかったが、操作に関しては全く問題ないようだ。


 普段のこの時間の街道は行きかう車両も少ないけど、戦時下とあって夜でも車両が走っている。

 ストマックレイクの中継所までは街道でほぼ真っすぐの道のりだ。

 夜だというのに時々砲弾が撃ち込まれて道路わきに穴を空ける。


 ストマックレイクの中継所に到着すると、中継所の周りにできていたハンター達の野営地は、砲撃痕しかなくなっている。

 代わりに中継所から少し離れた森の中には塹壕が多数掘られていて、ハンター達はそこに野営地を築いていた。

 それを横目で見ながらさらに先へと進む。


 最前線の軍の防衛陣地のすぐ横の森へと入る。

 さらに軍の監視所を通り過ぎて森の奥へと入って行く。

 ここからはいつ敵と出会ってもおかしくない地域となる。

 少し進んだ森の中で自走砲とハーフトラックを止め、ここからは徒歩で接近する。


 俺とタクとエミリーの3人でオーク陣地へと向かい、ケイとソーヤは車両の偽装をしながら留守番だ。

 危なくなったら直ぐに後退するように言い残して出発する。



 薄ぼんやりと空が明るくなってきた頃、森の奥に薄っすら動くものが見えた。


 俺はタクとエミリーに背を低くすることを伝えて目を細くしてそれを確認する。

 間違いない、4匹のオークの偵察隊だ。

 先に見つけたならこっちが有利だ。

 待ち伏せて強襲すれば撃退できる可能性が高いんだけど、今日の依頼は討伐じゃなく偵察だ。

 わざわざこっちから存在をばらすことはないと思い留まる。

 口に人差し指を当てて声を出さない様に伝える。


 俺達はしゃがんだままその場にじっとする。


 オークが徐々に近づいて来て時折しゃべり声まで聞こえる。

 やばい、こっちの方向へ歩いてきやがる。

 俺は音が立たない様にそっと茂みの中へ伏せた。

 エミリーとタクも俺にならって茂みの中で伏せる。


 もうオークの表情までくっきりとわかる距離まで来ている。

 俺はゆっくりと仰向けに寝がえって、ショットガンの着剣装置に刃渡り30㎝の剣を取り付けると、胸の上にそれをのせて息をそっと吐く。


 オークは無警戒にそのまま俺達の潜む茂みのすぐ横を歩いて行く。

 手を伸ばせば届きそうな距離だ。

 エミリーとタクが心配になり、そっと頭を持ち上げて後方を見る。


 タクは意外とキモが座っているらしく、真剣な表情で銃を抱えている。


 対してエミリーはというと、目をキョロキョロとさせて、今にも魔法を放ちそうな動きだ。

 俺が手の平を開いてエミリーに向けると、少し落ち着いたように頷いた。


 オークの足音が徐々に遠ざかる。


 念の為に5分ほどその場で様子を見た後、今度はさっきよりもかなり警戒しながら前に進んだ。

 俺がちょっとビビってしまったというのは内緒の話だ。


 しばらく歩くと森の切れ目が見えてくる。

 すでに陽は昇りつつあり、辺りは急激に明るさを取り戻してくる。

 夜明け前に到着するはずだったので、予定よりもかなり遅れているという事だ。


 少し早歩きになりながら森の切れ目の位置にある大きな倒木へとたどり着く。

 倒木からそっと顔を出して覗き見ると、廃墟の街の正面門から見て左90度くらいの所に出たらしい。

 本当は正面門にもっと近い場所に出て偵察するはずだったんだけど、この位置からでも門の出入りや廃墟の街中が見えなくもない。


 動いて発見されるリスクは冒さず、ここから偵察する事を選択した。

 ただ、ちょっと遠くて細かい種別の判断はできない。

 それに瓦礫と壁が邪魔をして街の中がほとんど見れない。


 これで敵の部隊規模とか装備とか判断できるかな。

 心配なんだがこれ以上のリスクは負いたくない。

 俺が双眼鏡で観察してタクがメモを取りつつ時々写真を撮る。

 エミリーは周囲の警戒だ。

 こんな事を30分ほどしていた時だった。


 後ろで警戒しているエミリーが突如騒ぎ出す。


「ん~っ、ん~っ!」


 俺は咄嗟に脇に置いてあるショットガンを手に取って振り向いた。


 するとそこには地面に腰をおろした状態のエミリーがいて、その背後からはエミリーの口を左手で塞ぎ、右手に持った変わった形の刃物で威嚇する、葉っぱだらけの化け物が目に映った。

 







やっと偵察行動開始というところで何者かに掴まってしまったエミリー。

さて、主人公達はどうやってこの危機を脱するのか?!




次回、「強行偵察」お楽しみに!




次話投稿は明後日の予定で時間は未定です。


次回もどうぞよろしくお願い致します。



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