8話 街へ帰還
危なかった。
手直しに時間かかりました。
なんとか投稿できました。
それではどうぞ!
俺達はハンター協会の建物に入って行くと、受付のある待合ホールは大混雑となっていた。
陽が暮れる頃になると護衛完了や魔獣討伐の報告者で一気に混雑する。ちょうどその時間帯とかぶってしまったためだ。
ほとんどのハンターは日が昇ると同時に出発し、日が暮れる頃になると街に帰ってくる。
ただし、日暮れを待って出発するハンター達も中に入る。
通称“ナイトレンジャー”と呼ばれる夜目が聞く亜人の集団だ。
肌の色は青みがかかった灰色をしていて、背はゴブリンほどしかなく、男女ともに非常に華奢な体格をしている。
暗いところだと猫の目のように光るからちょっと怖い。
そんな怖い人達とすれ違いながらエミリーは受付に小走りで向かう。
30分はかからないだろうと俺は部屋の隅っこに移動して壁にもたれ掛かる。
椅子に座ろうにも一つも空いた席がないし。
その間に書類の記入を終えたエミリーが、整理券を取るために長蛇の列に並ぶ。
受付にたどり着く前に整理券の列という難関があるのだ。
30分くらい経っただろうか。
護衛失敗の報告書の提出を終えたエミリーが、別の受付の整理券を持って順番待ちをする。今度はゴブリン盗賊の討伐、つまり魔獣討伐の順番待ちだ。
これでさらに30分。
これでやっと手続きは終わり。
ゴブリンの討伐費用をここで入手。
まあ、大した金額にはならなかったけどさ。
ウルフライダーの狼の討伐部位があれば少し違ったんだけど、逃走中だったからそれはしょうがない。
回収も考えたんだけど街道沿いだから他のハンターや輸送車に取られる可能性が高いんで諦めました。
そして今度は買い取り所へ再び向かわなければいけない。
ここへ来る前に査定に出した品々の買取金額が出た頃だ。
装甲車の整備もしないといけない。
やることが多すぎる。
今日は疲れ果てたからもう宿屋に戻りたい。
我慢できずに俺はそれを口にする。
「なあエミリー。もう今日は宿に帰って休まないか。夕飯を食って早く眠りたいよ」
少し嫌そうにエミリーが俺に言葉を返す。
「手続きしてんの私なんですけどぉ」
「そうだよな。でも俺は限界寸前……」
「うん、わかったよ。実は私も限界だから今日は宿に戻ろう。買い取りは明日にしよっか」
「エミリーありがと……疲れたよ」
俺達はこの街アシリアを拠点にして目下荒稼ぎ中だ。
いや、言いすぎた。少ない稼ぎでほそぼそと暮らしている。
いつもなら真っ先に向かう定宿へは行かず、今日はちょっと高めの宿へと向かう。
装甲車を止められる施設がある宿へだ。
ある程度セキュリティーがある宿じゃないと、装甲車に悪戯されるのが心配だ。
前に乗ってたあのオンボロカーでさえ、タイヤを盗まれたことがあるからな。
今度は装甲車だから転輪か何かを盗まれるかもしれない。
オープントップだからエンジンのパーツを盗まれるかもしれん。
折角手に入れた装甲車。
多少お金がかかっても安心できる宿を選ぶことにした。
今回の護衛任務は失敗したので護衛費用は入らない。その上、宿代は掛かるし弾薬費用も馬鹿にならない。
代わりに装甲車が手に入ったと喜ぶべきなのか。
俺達はなんとか希望に近い宿を見つけて、食事もほどほどで直ぐに眠りに付いた。
翌朝、俺は妹のきつい一撃で目を覚ました。
「お兄ちゃん! 早く起きなさいよっ」
「ほげえっ」
エミリーは毎朝、寝起きの悪い俺を足の裏で踏んづけて起こすのだ。
エミリーの我儘で俺達はいつも個室に泊る。
といっても金が無いので1人部屋に2人で泊るんだが、当然ベットは1つだけだ。
その1つのベットにまさか2人で眠る訳にもいかず、必然とエミリーがベットで俺が床に寝ることになる。
俺が床で妹がベット、これが毎日続く。
重要な事なんで2度言いました。
そして毎朝のイベントと化しているのがこの踏みつけ攻撃と言う訳だ。
「ったく、毎朝毎朝飽きずに繰り返すよね。そろそろ早く起きるって事の学習したら?」
「ふげっ」
エミリーに何度も踏みつけられながら、俺はやっと目が覚めてくる。
これはもはや恒例の儀式を化している。
ただし宿に泊まった時だけだ。
「今日は朝から仕事探しに弾薬補充に装甲車の整備よ。それと買取の査定も聞きに行かなくちゃいけないでしょ。忙しいんだから早く起きてよね、もう」
「お、おはよう。エミリー……」
「おはよう、お兄ちゃん」
俺は眠い目を擦りながら床から起き上がるのだった。
こうして毎日“妹に踏みつけられて朝起きる”俺。
違った意味合いで重要なんで強調しました……
そして朝一番でエミリーは仕事探しの為ハンター協会へ。俺は買い取り所へと向かう。
買い取り所へ到着すると、朝も早いというのに駐車場には意外と多くの乗り物が止まっている。
夜遅くに返って来たハンターが朝一番に来るからだ。
この店は買い取りだけでなく、乗り物全般の修理もやってくれる。
実は前に乗っていたオンボロ自動車は、ここに持ち込まれたものを安く買い取った。
そのためこの店は買い取りだけでなく、オンボロ自動車の修理でもよく利用していた馴染みの店といってもいいかな。
モリ商会という店だ。
俺は早速、預けた品々の査定額を聞きにカンターへと向かう。
今回持ち込んだ中でも対戦車砲はそこそこの値段が付くはずだ。確かに需要が無いから高くは売れないだろうと予想はしている。
でもゴブリンの使っていた銃なんかよりは高く売れることは間違いない。
俺は若干の期待を胸に、カウンター越しに椅子に座っている店主に声を掛ける。
「おはよう、モリじい」
モリじいと呼ばれて振り向いた男は、いかにも胡散臭い風体の白髪の老人だ。
ぷかぷか吸うタバコが店内を曇らせている。
買い取った品のいくつかは店頭に商品として並ぶのだが、このおやじはセンスが無い。
並べ方が雑然としている上にタバコのヤニで酷いのだ。
これじゃあ売れる物も売れないじゃないかと思う。
「おうなんじゃ、ケン坊か」
「昨日の買取品の査定がどうなったか聞きに来たんだけど」
「おお、あの対戦車砲か。ありゃあ、大した査定にはならんぞ。砲弾込みで1万5千シルバがいいところだな」
ショック、俺の予想した金額を遙かに下回ってる。
「モリじい、それはないでしょう。もうちっと……」
「ダメじゃ、ダメ。対戦車砲など中々買い手がつかんわい。誰が好んでわざわざ重い大砲を引っ張って狩に出かけるんじゃい。それにじゃ、そんな身動きが取れんもの敵のいる中で見つかっちまったら終いじゃて」
モリじいが言うのももっともだ。
俺もそれは予想していたからな。
俺が悩んでいると、モリじいが質問してくる。
「なあ、ケン坊よ。外のあのガンキャリアーはお前のか?」
「え、あの装甲運搬車のこと? そうだけど。それがどうかしたの」
「あのガンキャリアーに今回持ち込んだ対戦車砲を装備したらどうじゃ」
「え、そんなことできるの?」
俺は驚きの表情でモリじいの顔を凝視するのだった。
有難うございました。
明日もまた投稿予定です。
しばらく毎日投稿できそうです。