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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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79話 因縁の対決




「ミウ、エミリーのスイッチが入ったぽい。もう止められん。自分を守れ」


 俺の言葉を理解したのかミウが覚悟を決めた表情で頷くと、接近してきたウルフライダーの顔面にショットガンを撃ち込んだ。

 ゴブリンの頭は一撃で消し飛ぶ。

 狼は頭をなくした主を乗せたまま走り続けていく。


 俺も必死にウルフライダーに弾丸を撃ち続ける。

 体の小さい俺にはやはりこいつは重すぎる。

 なんせこの軽機関銃は10㎏近くある。

 重すぎて取り回しがきかないから接近されると不利だ。

 早い話、当たりゃしない!


 前を走っていたハーフトラックもやっと異変に気が付いたのか、34型機関銃を撃ちまくりながら引き返してくる。


 さっきまで追い回されていたはずの俺達だが、何故か今は逆にウルフライダーを追い回している。

 エミリーは不気味な笑い声を響かせて、ウルフライダーを蹂躙じゅうりんしていくのだ。


 しかしそんな状況にもかかわらず、ウルフライダーは体制を立て直して戦闘態勢を整える。


 あの火傷顔のゴブリン、恐らくゴブリンシャーマンなんだろう。時々呪文を唱えている。

 あいつがゴブリンの士気を保っているようだ。


 エミリーがそのゴブリンシャーマンへとターゲットを定めたのか、車体の向きを強引に変えて急停車する。

 エミリーはエンジンを空吹かしさせる。

 6気筒の140馬力エンジンが唸りを上げて排気管から白い煙を激しく噴き上げる。

 

 ゴブリンシャーマンが俺を睨みつける。

 いや、実際はこの自走砲を見ただけかもしれないいけど、俺には目が合ったように見えた。


 エミリーはクラッチを一気に繋げると、キャタピラが激しく地面を削り、土を跳ね飛ばして一気に速度を上げていく。


 俺は急加速によってバランスを崩して倒れそうになるのを必死に耐える。


 本当に140馬力なのかよって突っ込みたくなるほどのパワーだ。


 ゴブリンシャーマンは逃げるかと思ったら、剣先をこちらに向けてそのまま突進してきた。


 まじかよっ!


 エミリーが言葉にならない咆哮ほうこうをあげる。


 おしっ、跳ね飛ばした――と思った瞬間、ゴブリンシャーマンが騎乗する狼が跳ねた。


 自走砲の真上を飛び越していくウルフライダーが俺の目に入った。

 それがゆっくりとスローモーションで俺の目に映る。


 狼の腹が頭上をゆっくりと越えていく。

 その狼に騎乗しているゴブリンシャーマンが下にいる俺を見てニヤリと笑う。

 そして手に持っていた剣を振り下ろした瞬間、剣先が急に光り輝き俺に何かを飛ばしてきた。


 咄嗟に持っていた軽機関銃で顔の前をガードするのだが、物凄い衝撃で軽機関銃もろとも弾き飛ばされた。


 俺は戦闘室の壁に背中を激しぶつけて激痛のあまりうめき声が漏れた。


「げふっ!」


 自走砲の後方に着地したゴブリンシャーマンに対して、ミウの水平2連ショットガンが2発連続で発射される。


 戦闘室の壁に寄りかかりながらそれを見ていた俺は、これは確実に仕留めたと拳を握って声を上げた。


「よしっ、ミウ、よくやっ……た?」


 俺もそうだが、ミウも驚きの表情をみせる。


 確実に命中してるはずのショットガンの散弾が当たっていない。

 それはまるで蜃気楼しんきろうに弾丸を撃っているかのように素通りして、地面の土を舞い上げただけだ。


 くそっ、防御魔法か!


 ゴブリンシャーマンが再び剣を振り上げると剣先が光る。


 またさっきの変な衝撃を放ってくるみたいだ。

 俺は背中の激痛に耐えて必死に軽機関銃を構えようとするが、痛みで体が思うように動かず間に合いそうもない。

 ミウも慌ててショットガンに新たな弾丸を込める。


 やばい、先にやられると覚悟を決めた時、車体がその場で180度急回転した。


 ゴブリンシャーマンは舌打ちをしながら剣を振り下ろすと、剣先から稲妻のような光が放たれる。

 寸でのところで戦闘室の側面装甲板が稲妻から俺とミウを防いでくれる。


 助かったと思いながら側面装甲板の上から顔を出すと、ゴブリンシャーマンが悔しそうな顔でこちらを睨みつけている。

 そこへハーフトラックの34型機関銃がゴブリンシャーマンを襲う。


 しかしまたしても蜃気楼しんきろうのように素通りして弾丸は命中しない。


 だが俺達の攻撃はそれだけでは終わらない。

 影の総番長が黙っているはずがなかった。


 操縦席のハッチが勢いよく跳ね上げられると、そこから巨大な火球が放たれた。


 ゴブリンシャーマンの表情が恐怖に染まっていくのが見える。


 避けようとしたゴブリンシャーマンだが、放たれた火球が急激に広がり、とても避けれるような範囲ではない。


 巨大化した火球はゴブリンシャーマンが騎乗している狼ごと丸々飲み込んだ。

 ゴブリンシャーマンの悲鳴が燃え盛る炎の中から聞こえる。

 蜃気楼しんきろうみたいな防御魔法はどうやら効かなかったようだな。


 指揮官が燃えるのを確認した生き残りウルフライダーは、逃げるよう森の中へ消えて行った。


 やばかった。

 ほんと、死ぬかと思った。

 俺はため息を吐きながらその場に座り込む。


 座り込むと、床の隅にチョコレートを見つけた。

 

「あ、生き残ったチョコがあったぞ」


 俺はチョコレートを拾い上げると、真っ先に操縦席に座るエミリーを見る。

 すると俺の声が聞こえたのかエミリーが振り向く。


「あれ? どうなったんだっけ、お兄ちゃん?」


 覚えてないんかい!

 

 ってことは、スイッチ入ってたんだな、やっぱし。

 

「えっと、チョコこれしかないんだけど……」


 言いかけて思い出した。

 そうだ、今回のスイッチの原因はチョコレートだった!

 再スイッチ誘発させてどうするよ、俺!!






6話くらいに登場したゴブリンシャーマンでした。





次話投稿は明日の予定ですが時間は未定です。



明日もどうぞよろしくお願いします。




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