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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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77話 遺跡侵入

遅くなりました!


<(_ _)>




 回廊へと機関銃で猛射撃しながら突き進む。

 真っ先に高いところにいるゴブリン兵は始末した。

 オープントップ式の自走砲とハーフトラックでは、上から攻撃されるのは非常に不利だからだ。


 ケイはハーフトラックに乗り換ええて、現在は写真撮影と無線担当をこなす。

 これでハーフトラックが走りながら攻撃していても、お互いに無線で連絡がとれるし撃破した車両の証拠写真も撮影できる。

 ただ働きではない、しっかり稼がせてもらおう。

 

 先頭のハーフトラックの34型機関銃がいい仕事をしてくれている。

 行く手に見えたゴブリン兵を次々に撃ち払っていく。

 タクもだいぶ34型機関銃に慣れてきたみたいだ。

 回廊の端に停まっているトラックを34型機関銃で誘爆させて、それをケイが写真に収めている姿が見えた。

 ケイも役立ってるし、良い連携だな。


 遺跡に入り込むと回廊に敷き詰められた石畳が、思ったより平らだったことに驚かされる。

 舗装された道路よりも滑らかじゃないだろうか。

 これなら射撃もそれほど乱れない。


 遺跡の中から時折ゴブリンが顔を出してカービン銃を撃ってくるのを、俺やミウが弾丸を叩き込んで黙らせる。

 

 朝早いこともあってか寝ているゴブリンが多数で応戦が予想よりも弱い。

 なんだ楽勝じゃねえか。


 そう思っていいると先頭を行くハーフトラックの速度が急に遅くなる。

 俺が不思議そうにしていると直ぐにケイから無線連絡が入った。


 ミウが無線を取り話の内容を伝えてくれる。


「前方に無人と思われるブレタン戦車が2両停車しているそうです。それと燃料輸送車があるみたいです」


 俺が慌てて体を乗り出して前方を見ると、回廊脇に戦車が2両寄せて停車してあった。

 その後ろには確かに燃料輸送車が1両と、数量のトラックも並んでいる。

 幸いにも乗員は不在のようだ。

 どこに隠していやがったんだよ。


「ミウ、危険だが一旦停車するように知らせてくれ。あれで追っかけてこられたらたまらんからな。撃破する」


 ミウが俺の言葉を無線で伝えると、ハーフトラックはわきに寄せる様にして停車した。

 俺は直ぐにエミリーとミウに指示を出す。


「エミリー、停車してくれ。前方に見えるブレタン戦車を仕留める。先頭のブレタン戦車から砲撃するんで車体の位置を修正してくれ。ミウは徹甲弾装填、装填したら周りの警戒頼む」


 エミリーは一旦停車した後、俺の細かい指示に合わせて車体の位置を微妙に変えてくれる。


 ミウの装填完了の合図と同時に俺も照準器の中央にブレタン戦車を捕らえた。

 ゴブリンはまだ乗り込んでいないようで、全く動く気配はない。

 距離にして15mくらいか。


 俺は発射レバーを引いた。


 ブレタン戦車の車体前面装甲をぶち抜いて徹甲弾が車内へと入り込んだ。

 しかし煙も上がらなければ爆発もない。

 それでもこれでは使い物にはならないだろう。


 ミウは俺の指示する前から次弾装填に取り掛かっている。

 ケイよりも全然早い。

 あっという間に装填が完了した。


 俺は2両目のブレタン戦車に狙いを定めて発射レバーを引く。

 もちろん外すことなく徹甲弾はブレタン戦車の全面装甲をぶち抜いた。

 今度は黒い煙をモクモクと上げ始めた。


 残るは燃料補給車両だ。


 俺は周囲のゴブリン兵の状況を見回す。

 幸いにも逃げるゴブリン兵がほとんどだ。

 指揮系統も完全に崩壊している。


 燃料補給のチャンスかも。


 俺は自走砲から飛び降りてミウに言う。


「ミウ、燃料を補給するんで掩護頼む!」


 言われたミウは物凄く驚いた表情をするのだが、すぐに「わかりました」と言って警戒を始める。

 エミリーからは調子に乗って無茶しないようにと釘を刺された。

 別に調子になってる訳じゃないんだけど。


 俺は直ぐに燃料缶に燃料を注ぎ込む。

 5リッターの燃料缶に3つ入れ終わったところでゴブリンの銃撃が始まった。

 するとエミリーから危ないからとストップの声が掛かった。


「くそっ、も少し欲しかったんだけど!」


 俺は急いで燃料缶を積み込んで、ついでに近くにあった木箱をいくつか戦利品として頂いて自走砲の後部に積み込んだ。

 木箱の名称から判断すると中身は人間が製造した食料品のようだ。

 ゴブリンが人間から奪った戦利品だな。

 俺は自分も急いで飛び乗って発進の合図を送った。


 燃料補給車から十分離れたところで俺は軽機関銃で狙いを定め、ぐっと引き金を絞った。

 燃料補給車はあっという間に火柱を上げて大爆発を巻き起こした。


 ビビりながらケイがカメラのシャッターを切っている。


 俺も周囲の警戒も忘れてそれに見入っていると、突然車体が激しいく揺れだして自走砲の前部が浮き上がる。


「ううっわっ、なんだミウ」


 俺の質問にミウは首を横に振るのが精一杯そうだ。


 自走砲が何かに乗り上げたような揺れだ。

 

 俺は車体に掴まりながら外を確認すると、端に停まっていたトラックを蹂躙じゅうりんしている最中だった。


 驚いた俺はエミリーに大声で叫ぶ。


「エミリー、何があった!?」


 するとエミリーから帰ってきた言葉は。


「何があったって、トラックがあったから蹂躙じゅうりんしたんだけど」


 トラックを蹂躙じゅうりんしながら当たり前のように言う。


 蹂躙じゅうりんが終わって車体がやっともとに戻って安定したところで、俺は再びエミリーに文句を言おうとしたのだが、自走砲は再び次のターゲットのトラックを蹂躙じゅうりんし始めた。


「エミリー、トラックを破壊しても金にはならないからよせって!」


 俺の怒鳴り声にも全然従うつもりはないらしい。

 それどころか子供のような言い訳をしてくる。


「だって私の出番が全然ないんだもん。つまんないんだもん!」


 このままではまずいと思った俺は、脳内でこの場を抑える方法を巡らした。

 ふと先ほど積み込んだ木箱が目に入る。

 木箱にはチョコレートの文字が。


 それを見た俺は咄嗟とっさに思ったことを口にする。


「エミリー、帰ったらチョコレートやるぞ」


「え、チョコ?」


「そうだ、喰いきれないほどのチョコレートだ」


 するとエミリーはいきなり自走砲を急停車し、キラキラを輝く目を俺に向けると、胸の前で両手を合せて言った。


「お兄ちゃん、約束だからね!」


「ああ、約束だ」


「お兄ちゃん大好きっ!!」


 ああ、俺の妹は世界一可愛いな。


 それを見ていたミウがぽろっとつぶやく。


「お馬鹿兄妹……」


 その言葉に俺とエミリーは沈黙で答える。


 3人が沈黙の中、34型機関銃の発射音とタクの「何やってるんですか!」と叫ぶ声が遺跡に木霊こだまするのだった。





次話投稿は明日の予定ですが、時間が未定です。



明日もどうぞよろしくお願いします。


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