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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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76話 遺跡急襲





 歩くこと40分で遺跡らしい石造りの建造物が見えてきた。


 遥か昔の古代建造物だというのに、全然朽ち果てた様子もない。俺も話には聞いていたけど見たのは初めてだった。


 タクが遺跡を眺めながら「すげえ」とか言ってるのが聞こえた。

 断崖絶壁の谷の間にその遺跡はあって、陽の光もあまり届かず不気味な雰囲気をかもし出している。


 豊富な水場があるんだけどなぜか弱い魔獣は近寄らず、その為それを獲物とする魔獣も寄り付かなくなる。

 その結果、ハンターもあまり寄り付かない場所で、水の補給や野営の為に立ち寄るくらいだ。


 俺は身を隠した状態で双眼鏡で遺跡を見渡す。


 いた、カービン銃を持ったゴブリン兵が高さ10mほどの遺跡の上に座っているのが見えた。

 他にはいないかと遺跡の周囲を観察すると、高さは違うがやはり遺跡の高くなったところに何匹か座っているのが確認できた。

 持っているのはやはりゴブリン製のカービン銃だ。

 統一されているから野良ゴブリンではなく兵士だろう。


 草木に身を隠しながら俺とタクは遺跡へと接近する。


 遺跡は縦長で広がっているようで、中央に回廊のような通路が伸びている。その回廊を抜けると谷の反対側へと行けるようだ。


 回廊にはゴブリンの装甲輸送車やトラックが何台か駐車されているのが見える。

 戦車らしき車両が2両見えるが、あれはソローリン戦車で機関銃装備のタイプで問題ない。

 それ以外の戦車は今のところ確認はできない。


 俺は頭の中で色々と妄想映像が浮かぶ。

 

 先制攻撃で車両を何台か破壊して、混乱している隙に一気に回廊走り抜けてそのまま逃走する。

 対戦車用の武器は見当たらないという事は、軽く蹴散けちらして逃げ切れるんじゃないだろうか。

 

 あ、行ける気がしてきたぞ。


「タク、戻ってみんなに報告するぞ」


 そのまま俺達は偵察を完了してハーフトラックまで戻り、ゴブリンには見つからずにみんなのいるところまで戻った。


 早速偵察の結果ゴブリンが駐留したいたこと、そして機関銃装備型のソローリン戦車しか見当たらなかったことを報告した。

 そして報告の後、自分の提案をみんなに聞いてもらった。


「俺の勝手な想像なんだけどさ、75㎜砲を何発か撃ち込んでゴブリンを混乱させておいて、中央の回廊を一気に走り抜ければ逃げ切れるんじゃないかと思うんだけど。みんなはどう思うかな」


 ミウがかなり驚いた顔で俺を見ている。

 実際に現場を見たタクも何を言い出すんだという表情で俺を見て固まっている。


 やっぱり無茶苦茶な提案か。

 どうも最近ゴブリン相手なら無双できるような気がしてしまう。

 う~ん、完全にエミリーの影響だな。


 ソーヤなんかは「いや~、いくら何でもそう簡単にいきませんよ」と半笑いで答えた。


 そうだよな、よく考えたらやっぱり無謀な作戦だな。

 みんな態度を見て考え直した俺だが、そこへエミリーがぼそりとつぶやく。


「ふぅん、私は賛成」


 全員の驚きの視線がエミリーに集まる。

 

 注目されたことにエミリーも驚く。


「なに、なによ。だって相手はゴブリンでしょ。何みんなしてビビってるのよ」


 それに対してソーヤが反論する。


「そうはいってもですよ。敵陣ど真ん中を突っ切るとか自殺行為ですって。集中砲火を浴びますって」


 ソーヤの発言で勇気づけられたケイも発言する。


「そう、きっとそうなる。あっという間に砲弾喰らっておしまいよ」


 するとエミリー。


「でも一番やっかいな敵でも機関銃装備のソローリン戦車だったんでしょ。機関銃じゃ装甲車両は破壊できないじゃないの」


 すると偵察に行ったタクが言葉を挟む。


「僕が発見できたのは確かにそうですけど、万が一他にも戦車が隠れているかもしれませんよ。それにゴブリンが対戦車火器を持っている可能性もありますし」


 しかしエミリーは一歩も引かない。


「別に全滅しようって訳じゃないんでしょ。ただ走り抜けるだけじゃない。わずか数分間のことでしょ。そんな急に対戦車火器の準備なんて間に合うはずないわよ。戦車がいたとしてもエンジンが掛かってなければ逃げ切れるでしょ?」


「確かにそうなんですけど……」


 そう言われてしまうとタクは何も言い返せなくなり黙ってしまった。


 決着ついたみたいだな。

 だけど珍しくエミリーが熱弁してたな。

 黙り込むみんなを見回して俺は話をまとめに入る。


「という訳でタク、ソーヤ、ケイ、それとミウ。遺跡を通り抜けるってことでいいかな」


 すると黙って4人とも頷くのだった。


 そして作戦は明日の夜明けとともに決行することに決まった。


 夜中の内に野営地を出て、陽が昇る前には遺跡が見える場所まで来ていた。


 まずは砲弾をぶち込んでソローリン戦車などの装甲車両を破壊する。

 ゴブリンが混乱している中を機関銃や手榴弾で攻撃しながら突破する。

 非常に単純な作戦だ。

 ケイにはカメラマンをやってもらい、破壊した車両の証拠写真を撮ってもらう予定だ。



 

 徐々に陽が昇り始め、辺りが薄っすらと明るく照らし出される。

 遺跡も暗闇から徐々に浮かび上がってくる。


 俺は幻想的な光景に一瞬見入ってしまうが、すぐに意識を照準器の中に映るソローリン戦車に集中する。

 回廊入り口に停車するのは2両のソローリン戦車だ。


 そして俺は発射レバーを引いた。


 75㎜砲の発射炎で俺達のいる場所がぱっと照らし出される。

 しかしそれも一瞬の事。

 75㎜徹甲弾がソロー戦車に吸い込まれるように消えていく。

 消えたと同時にソローリン戦車が砲弾命中の衝撃でガクンと揺れる。


 命中を確認するとエミリーが僅かに車体の向きを変える。

 故障で射界の狭まった75㎜砲の旋回をフォローしてくれているのだ。

 

 その間にもミウが次弾装填する。

 もう1両いるソローリン戦車を仕留めるため再び徹甲弾だ。


 何匹かのゴブリンが破壊されたソローリン戦車に集まってくる。

 遺跡の高い位置に座っていた歩哨のゴブリンが立ち上がり、キョロキョロとあたりを見回し始める。

 

 その間にもミウが「装填完了」と告げる。


 俺は2両目のソローリン戦車を照準器内へと収めると発射レバーを引いた。

 2発目の命中。

 ソローリン戦車から煙が噴き出した。


 止まっている標的なんて単なる的でしかない。

 もっと車両を破壊したい衝動に駆られるが、今回の目的は逃走経路を確保して逃げ切ることだ。

 

 ゴブリンの歩哨に発見されたようだ。

 こちらを指さして仲間に声を掛けている。

 おっと、ぐずぐずしてはいられない。

 

 俺は右手を肩の後ろから前へ振って叫んだ。


戦車前進(パンツァーフォー)!」


 やってみたかったんだよ……







ゴブリン駐屯地を襲撃です。

果たして主人公は無事に回廊を抜けられるのか?!





次話投稿は明日となりますが夕方近くになりそうです。



明日もどうぞよろしくお願いします。


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