表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/282

72話 75㎜砲の威力






 俺が双眼鏡を覗いていると早速新しい車列が進んできた。


 先頭は6輪の装甲偵察車のようだが俺は見たことがない。

 古いタイプの装甲車みたいで、この距離からみると普通の車を改造したかのように見える。

 その後ろに戦車や兵員輸送車に輸送トラックがつづく。

 最後尾にも装甲車と戦車が控えていた。


 俺が双眼鏡を覗きながら指示を出す。

 

「ケイ、榴弾を装填」


 ぼーっとしていたケイが慌てて榴弾の装填を始める。

 まだ慣れていない上に重い砲弾にあたふたしている。

 

「ミウ、先頭の装甲車だ。魔法を頼む」


 ミウは頷いて命中の魔法を掛ける。


「エミリー、右に旋回してくれ。二股に分かれた大きな木が見えるだろ。あの木が正面になるように車体を向けてもらえる」


 エミリーは小さく返事をすると、車体を少しずつ動かしてピタリと車体を言われた方向へ向ける。

 魔法を掛け終わったことを確認した俺は再びミウに指示を出す。


「ミウ、いいか、あの2股に分かれた木の所に戦闘の装甲車が来たら撃つぞ。距離1000でよろしく」


「装填完了」


 ケイからの発射準備完了の合図だ。


 俺は焦る気持ちを押せえてひたすら待つ。

 誰もが緊張しているのか、余計なことは一言も口にしない。

 沈黙が続く。


「よし、撃て」


 俺の指示でミウが発射レバーを引いた。


 砲弾の初速がかなり遅いらしく、この距離だと結構な曲線を描いて飛んでいく。

 発射して数秒後には砲弾は装甲車の中央に直撃。

 派手に火花を上げて爆発した。

 誰の目にも命中はわかるから命中報告は敢えてしない。


 防御の低い装甲車なので榴弾でも簡単に装甲を撃ち破って破壊。

 装甲車は横転して炎を上げながら道路の中央で鎮座した。

 さすが75㎜砲である。37㎜砲とは威力が格段に違う。


 突然の攻撃にゴブリンの車列は大混乱だ。

 先頭車両が撃破されたので前へ進むこともできず立ち往生となる。


「次は徹甲弾装填。目標は2両目の戦車」


 こっちに十分な戦力があれば、最後尾を撃破して身動きできなくするんだけど、今一番怖いのは敵戦車の戦車砲。

 だから早いうちに強敵は潰すことにした。


 俺の指示にフラフラしながらも徹甲弾を装填するケイ。

 砲弾を落とすんじゃないかと不安でしかない。


「ふぅ、装填完了」


 ケイの完了の合図と同時にミウに発射の合図を送る。


 今度は先ほどとは違い徹甲弾の発射だ。

 さっきよりは早い速度で砲弾は飛んでいく。

 そして敵戦車の車体に命中……はしなかった。

 奥の森の中で着弾した。


 思わず俺は声を出した。


「外した!? ミウ、もう一回魔法! ケイ、徹甲弾装填」


 う~ん、37㎜砲で2発まで有効だった命中魔法だけど、75㎜砲だと1発までしか効力がないみたいだ。

 今の攻撃で自走砲の位置がバレたみたいだ。後尾にいる戦車がこちらに向かって主砲を撃ってきた。

 ブレタン戦車だ。

 主砲は47㎜砲、当たれば終わりだ。


 しかし47㎜砲弾は崖に命中して爆発するが、崖を削っただけで被害はない。

 恐らくだけどこっちが偽装しているから姿までは確認できていないはずだ。

 発砲炎が見えたあたりに適当に撃ち込んでいるに違いない。

 ゴブリンの機関銃の射撃も始まったようで、広範囲にわたって多数の銃弾が叩き込まれる。

 ゴブリンの兵士が持っている銃は廃墟の街で使っていたレバーアクションのカービン銃だろう。それだとこの距離では辛いと思う。

 軽機関銃だけ気を付けていれば大丈夫か。

 

 トラックに乗っていたゴブリン兵がバラバラと下車して散らばり出す。

 それめがけソーヤとタクの軽機関銃が火花を飛ばす。

 しかしこの距離からだとなかなか命中しない。

 そもそも距離がありすぎて山なりに弾が飛んでいくほどだ。

 それでも敵の数が多いので、トラックから降り立つ前に連射すると、バラバラとゴブリンがなぎ倒されていく。


 だが、一方的に攻撃できたのも最初だけだ。

 徐々にゴブリン達も機関銃で激しく撃ち返してくるようになってきた。


「撃て!」


 ケイの徹甲弾装填を確認して俺はミウに射撃命令を出した。そして発射したあと直ぐにエミリーに場所の移動を指示する。


「エミリー、第4地点へ移動して」


 エミリーは一旦自走砲を後進させたのち、4か所あるうちの一番端の陣地へと移動させる。

 敵戦車が47㎜砲で応戦してくる。

 自走砲が隠れている岩に命中して岩を砕く。


 その間にも俺は敵戦車への徹甲弾命中を確認する。

 ハッチを開けて逃げ出していくゴブリン戦車兵が見えた。


「よし、命中……逃げていく、敵戦車撃破」


 場所を移動しても敵弾は最初に隠れていた場所に撃ち込まれている。

 やっぱり自走砲の姿は見えてないんだな。

 移動中に戦闘室を囲う装甲板に機関銃の着弾衝撃が連続して響く。

 機関銃で撃ち抜けるほど軟ではない事くらいはわかっちゃいるけど、あまり良い気持ちはしない。


 場所を移動して再び自走砲の車体の位置を整える。


 すると敵に動きが見える。

 俺は双眼鏡で敵の動きを観察する。


「やばい、すべての戦車がこっちに向かって走ってくるぞ。徹甲弾装填急げ」


 車列には4両の戦車がいたんだけど1両は撃破した。それで残りの3両の戦車が街道を外れて沢に降り、こちらに向かって来ようとしている。


「ミウ、一番左の戦車を狙ってくれ、距離1000」


 ミウが砲身の向きを変えようと旋回ハンドルをクルクルと回す。


 ケイから装填完了の報告が来る。


 続いてミウが魔道具のネックレスを握りながら魔法完了の合図をする。


「撃て!」


 俺の発射の合図で75㎜徹甲弾が発射された。

 75㎜砲弾は沢を渡河中の一番左側にいた戦車の車体正面に命中した。

 その瞬間、戦車の砲塔が吹っ飛び大爆発を起こした。

 弾薬が誘爆したんだろう。

 75㎜野砲を改造したこの砲でも、この距離のブレタン戦車の正面装甲を貫通だ。十分な威力ということだ。


 次の標的を決めようと他の戦車を確認するが、木々が邪魔をして姿がはっきり見えない。

 俺は敵戦車を双眼鏡で必死に追いながらつぶやく。


「くそ、近づかれるぞ……」


 このままだと接近戦に持ち込まれる。

 そうなるとこの自走砲では不利だ。


 俺はここで決断を迫られることになる。











75㎜砲がついに発射されました。

今のところ満足のいく威力のようです。


次回、敵戦車が迫りくる中、とんだアクシデントが……




次話投稿は一応明日の予定です。

しかしストックがなくなってきましたので推敲しながらの投稿となります。

そのため投稿時間は未定とします。


明日もどうぞよろしくお願い致します。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ