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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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71/282

71話 輸送部隊

またしてもちょっと長いです。





 現在、75㎜自走砲にはエミリーとミウに俺、そして装填手としてケイが乗っている。


 ハーフトラックの操縦手のソーヤの役割は動かせられない。操縦兼メカニックに関しては群を抜いているからだ。

 そうなると、そのハーフトラックの軽機関銃担当と偵察を任せられるのはタクしかいなくなる。射撃が苦手なケイにはとても務まらない。

 結局、消去法で残ったのはケイしかおらず、必然と75㎜砲の装填手をやらざるを得なくなった。

 あとは覚えるよりも慣れろだ。

 これで俺も戦車長としての役割に専念できる。

 ケイは嫌がるんではないかと思ったが、特に嫌がる様子もなく引き受けてくれた。

 装填手という仕事がよくわかってないんじゃないだろうか。


 

 俺達は慣れない自走砲に乗って、ジャングルの脇を通る道路を進んでいく。

 一応街道と呼ぶ道だがあまり大きくはない道路で、整備も行きわたってないから悪路でもある。

 さすがにここまで来ると道路は空いている。


 この辺りまで来ると、どこに敵の部隊がいるのかも全く分からない。だからといって闇雲に移動するのは危険だということくらいは理解している。

 しかし部隊配置図など持っているわけでもなく、ひたすら前を走るハンター達の車両の後をついて行く。

 徐々に最前線に近づいているのだろうか、砲撃音も近づいてくる。

 気が付くと俺達の後ろにもハンターの車両が列をなしている。

 どの車両も俺達よりもランクの高いハンターなんだろう。俺達のような自走砲ではなく、少なくても50㎜クラス以上の戦車砲を積んでいるか、重装甲偵察車両だ。

 モデル4シーマン戦車にヨルセーター戦車、履帯式の装甲運搬車までいて戦車博物館のようだ。

 その中でも1両、変わった戦車を発見した。

 車体は多分4型戦車なんだろうけど、その車体の上に乗っかているのは通常の砲塔ではなく、なんだか角ばった格好悪い砲塔で37㎜機関砲を積んでいるようだ。

 あんなもんを連射されたら肉片も残らないな。

 味方でよかったと胸をなでおろす。


 そんな光景を見ながらふと考えた。

 まてよ、この車列にいたら高ランクの敵車両と戦う羽目になるんじゃないのか?

 それは無理だ。

 防御力がなさすぎるし逃げるにも速度も遅すぎる。

 車高も高いから敵に見つかりやすい。

 やばい、欠点しか思い浮かばねえ。


 この自走砲にできることは居場所が特定できないように隠蔽(いんぺい)した状態で攻撃し、バレる前に移動してまた射撃を繰り返す方法しかない。

 特に後面を見せたらおしまいだ。

 戦闘室の装甲板はないからね。

 それに砲弾は後部に積まれているから、後ろから砲弾を喰らえば盛大な花火が上がって消し飛んでしまう。


 味方が沢山いるのは頼もしいのだが、その分敵には見つかり易くなるし。

 考えた末、この車列から離脱することにした。

 無線でタクに連絡して横道へとそれる。

 かなり細い道で、戦車がすれ違うにはかなり苦労するような道だ。ジャングルを縫うように続いている。

 地図にも載っていない道だった。

 30分ほど警戒しながら走ったが、徐々に前線から離れていくようで、砲声もだんだん遠のいていく。


 ちょっとまずいな。

 どんどん最前線から遠のいていく。

 でもUターンできるような場所がない。

 特にハーフトラックは前が車輪なため、その場での転回が厳しい。何度も切り返さないといけない。それだけの場所があるところに出ないと引き返すこともできない。

 完全に出遅れた。

 1時間以上走ってやっと少し広くなった場所に出た。

 一旦止まり現在位置を調べると、地図上ではジャングルの端の方にいることになる。

 ただし、このままいくとゴブリンの支配地域へ突入の位置だ。


 俺は地図を見ながらつぶやく。


「この直ぐ東方向に街道が走っているはずなんだけど、どこかに脇道とかないか。街道に出られればすぐにでも戻れるんだけど」


 戻るにはくねくねと蛇行したこの道を引返すよりも、街道に出た方が圧倒的に早い。

 ただしゴブリンの陣営がどこにあるかわからないが、遭遇する確率は非常に高い。


 すると俺の言葉に答える様にタクが指さす。


「ケン隊長、あそこ!」


 俺はタクの指さす方に視線を移すと、道ではないけど木々の間隔が広い地帯が広がっている。

 前にある木を何本か切り倒せば走れそうな雰囲気だ。

 早速戦車に積んである斧で切り倒していく。

 ついでに余計な枝を切り落として、防御力向上のために自走砲の正面装甲に縛り付けていく。

 少し休憩したのち、近くを通っている街道へとエスケープの道なき道を行く。


 思ったより地面はしっかりしていて走りやすい。近くに小さな沢も流れていてバーベキューでもしたら楽しそうだ。

 そんな余計なことも考えられるほどの余裕で先を急いでいると、ちょっとした斜面を登るような場所へ出る。


 斜面の向こう側はどうなってるのか分からないから一旦停車。俺は1人、斜面を徒歩で上っていく。

 斜面を登り切ったそのすぐ先は、高さ5mほどの崖が下に続いていた。

 

 しくじったぁ!

 行き止まりじゃねえかぁ。

 

 双眼鏡で確認すると1㎞ほど離れたところに街道を発見した。

 中規模の川と並行して通る道だ。

 本来ならばその街道の先には人間の作った中継所があるはずなのだが、今はゴブリンに占拠されてしまっているのだ。


 その街道に出ればストマックレイクの中継所までは最短距離で戻れる。

 しかしこの崖を下りないといけない。

 何か所か降りられそうな場所は確認だきたけど、実際にやってみないとわからないし、一旦降りたら2度と登れないような場所だ。


 そんな風に歩き回って調べていると、街道で動きがあるのに気が付いた。

 俺は急いで身を隠して双眼鏡で偵察すると、ゴブリンの輸送部隊の車列がつながっている。

 トラックや装甲車に戦車も数量交じっている。


 川沿いの一本道だ。この位置からだと恰好の標的だ。

 しかしこちらの戦力では太刀打ちできない。

 無線が繋がれば砲撃要請ができるな。

 俺は少ない脳みそで必死に考える。


 まずは無線を試そうと自走砲まで戻る。

 そして自分が見たものを伝えて、自走砲を崖の上まで移動させる。岩の陰に隠すように配置して、メンバー全員で近くの木の枝とかを使って偽装させる。


 俺が双眼鏡で観察を続ける間にエミリーが無線を試しているが全く繋がらない。

 ハーフトラックの無線も試すがやはり繋がらない。

 敵の車列が丸見えなのに味方に連絡が付かないというのは苛立たしい。

 

 俺が75㎜砲を撃ちたくてうずうずしているのが分かったのか、エミリーが意見を言ってくる。


「ねえ、お兄ちゃん。みんなに意見を聞いてみようよ。その後でこれからの行動を決めない?」


 さすがエミリー、真面まともなことを言ってくれる。

 それで1人ずつ意見を聞いた。


「僕たちは戦いの素人ですからどうしたらいいかなんて全然わかりません。だからエミリーさんとミウさんとケン隊長の決定に従います」


 そう言ったタクの意見にケイとソーヤも頷いている。


 ミウが困った様子でしゃべりだす。


「私もこういった戦いには素人なんで、すいません。私も皆さんの決定に従います」


 そうなると俺とエミリー次第になるか。

 エミリーが変なことを言い出さないかが怖い。


「それじゃあ、エミリーはどうしたいの?」


 俺が尋ねるとエミリーが平然と答えた。


「いつものようにお兄ちゃんが決めてよ」


 なんだ、話し合った意味がないじゃねえか。

 俺はため息をついて自分の意見を言う。


「俺はこの手に入れたばっかりの75㎜砲を撃ちたくてしょうがない。ここからなら敵は丸見えだし、いざとなったら元来た道を帰ればいいしな。それでもいいの?」


 俺が本音を漏らしたのだがそれに対してエミリーが言った。


「うん、いいと思うよ。相手はゴブリンだしね」


 でた、エミリーのゴブリン無双論。

 何度も怖い目に合ってるくせにゴブリン相手なら問題ないと言い張る。


 でも今回は逃げる道は確保してあるし、地の利も圧倒的に有利。数で負けてるだけだ。

 ここで待ち伏せして、比較的弱そうな車列を待てばいい。

 1㎞の距離があるんだけど、これだとライフル銃で狙える距離じゃないけど届く距離ではある。

 こちらからも軽機関銃で射撃ができる。

 残念ながらエミリーの魔法は届かないそうだ。


 これで待ち伏せ攻撃が決定したから準備を急ぐ。


 ハーフトラックの34型軽機関銃と26型軽機関銃も陣地を作って据える。

 射手はソーヤとタクだ。 

 岩や倒木で防備を固め、自走砲も偽装もしたしハーフトラックも安全な後方に下げた。


 こうして攻撃準備が整い、ゴブリンの車列が通るのを待つ俺達だった。








敵の輸送部隊を発見しました。

もちろん攻撃の選択をした主人公。


次回、遂に輸送部隊への攻撃が開始されるのだが……




絶好調状態が終わったようです。

書く速度が徐々に衰えてきました(T_T)

でも少し書き貯めができましたのでまだ大丈夫です。


次話投稿は明日の20時の予定です。


明日もどうぞよろしくお願いします。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 自走砲の活用としては、問題は見当たらないでしょう。 [気になる点] 「ゴブリン軍の残党」 ひと通り訓練が修了した百匹前後の集団が、『戦闘団』形式で威力偵察若しくは、後方撹乱等の意図を持って…
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