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66話 魔法屋





 魔法屋の店内で商品を眺めながら鑑定結果を待っていると、新しい客が店内へと入って来た。

 俺は邪魔にならない様にすっと壁側に寄って通路を開ける。

 すると急に声を掛けられた。


「お兄ちゃん、こんなとこで何やってるの?」


 その声に振り向いた俺の目にはエミリーとミウの姿が映った。


「へ? なんでここにいるの」


 不思議そうな顔でお互いを見つめ合う。


「ケンさんも魔法に興味あったんですか?」


 続いて声を発したのはミウだ。

 魔法が使えない俺が魔道具の店にいるのはやはり不思議なのだろう。

 俺はどこから話そうか迷っていると、カウンターの後ろの部屋からお姉様が出て来た。


「お待たせしました。こちらのネックレスの鑑定が終わりました――あらエミリーたん、いらっしゃい」


 むむ、お姉様とエミリーは知り合いか。

 それよりエミリー“たん”って言ったよな。俺の聞き間違えじゃないよね。


「お久しぶりです、カレンたん。こっちがちょっと前に新しく仲間になったミウたんです」


 えええ、エミリーまで今、カレン“たん”って言ったよね。

 次にミウがしゃべりだしたので俺はミウをじっと見つめる。


「あ、あの初めまして、ミウと言います。射出武器系の魔法が使えます。よろしくお願いします……カレン、たん……」


 ぶへええええ!

 言った!

 言った!

 今、カレン“たん”って!!

 恥ずかしそうに言ったぞ。

 いや、言わされたんだなあれは。


「はい、こちらこそよろしくね、ミウたん。こちらはお兄さんなんですね」


「はい、こいつが兄のケンです」


こいつかーい!

しかも俺には“たん”をつけないんかーい!


「あ、どうもケンと言います」


 俺はお姉様、いや、お姉たんを凝視しながらいけない店に来てしまったと冷や汗を垂らす。

 そんな様子など無視するようにお姉たんはネックレスの鑑定結果を淡々(たんたん)と説明しだす。


「このネックレスは思った通り魔力を貯めることができるアイテムよ。どのくらいの魔力量が入るかはもう一段上の調査をしないとわからないけど、この魔石の色だとレベル3ってとこかしら。保証はできないけど。それでこれは売ってくれるのかしら?」


 その説明を聞いていたエミリーが俺の返事をするより先に返答してしまう。

 俺は呆気にとられてオロオロするだけだ。


「カレンたん、それは売りません。えっと鑑定料金は500シルバですよね。はい、これ」


 唖然とする俺を無視してエミリーは勝手に鑑定料金まで支払ってしまう。

 まだ買取価格も聞いてないのにだ。

 物凄い金額で買い取ってもらえたかもしれないのに、それはあまりにひどい。

 だいたい、エミリーは俺がまだ75㎜砲の代金を支払ったことを知らないはず。ってことはお金集めに必死になっている事を知っているはずなのにだ。

 それなのに買取価格も聞かずに『それは売りません』って勝手に言っちゃってるし。さすがに俺も口を出す。


「エミリー、俺の持ち込んだ物だぞ。なに勝手に決めてんだよ」


 すると思わぬとところから掩護が入った。

 なんとカレンたんからの援護射撃だ。


「そうよ。まだ買取金額を言ってないわよ。買取金額を聞いてからにしたらどうかしら、エミリーたん?」


「はい、そうですね。それでは一応ですけど聞いておきますね。お幾らでしょうか?」


「ずばり、50,000シルバでどうでしょうか?」


「は?」


 俺は驚きすぎて言葉が出てこない。

 60型軽戦車の買取価格よりも高いじゃねえか。

 言葉に困っている俺を通り越してカレンたんとエミリーたんの言葉の応酬が続く。


「無理ですね、売りませんから」


「それじゃあ55,000シルバで、いや60,000シルバ出しましょう」


「本当にごめんなさい。ミウたんも私も魔法行使者ですから売る気はないんです」


 どういうことだろう?

 でもエミリーの様子を見るとよほどの金額でない限り折れない事は理解した。

 意外と強情なところがあるんだよな、エミリーたんは。

  

「そう、残念だわ。でも気が変わったらいつでも売りに来てね。他の店よりも高く買い取るわよ」


 エミリーの様子から諦めたようでお姉たんは引き下がったようだ。

 すると今度はエミリーがカウンターに近づいて、バックからなにやら取り出した。


「有難うございます。そうそう、今日はこれを売りに来ました」


 エミリーがカウンターの上に置いたのは小さな小瓶に入ったいくつかのポーションだ。

 お姉たんはポーションの入った小瓶を全部持って、カウンターの後ろの部屋へと入って行く。鑑定をしにいったんだろう。


 俺はもしやと思い、エミリーに聞いてみる。


「エミリー、それってもしかしてミウが作ったのか?」


「さすがお兄ちゃん、ばれちゃったね」


 エミリーはミウを顔を見合わせて笑っている。


 しばらくして結果がでたのかカウンターに立つお姉たん。


「全部で35,000シルバで買い取りましょう」


 ふあ?

 なにこの人たちは!

 魔法が使える上にポーション作って高収入なこの人たち。

 それに比べて俺は……

 ちょっと落ち込む。


「うん、ありがとうございます。その金額で構いませんので買い取ってください」


 ポーションの代金を受け取ったエミリーは店で何やら買い物をした後、俺の袖を引っ張るようにして落ち込む俺を店から連れ出すのだった。


 




久しぶりに妹登場です。


次回はネックレスの鑑定結果とガキンチョ3人組の面接です。




次話投稿は明日の予定です。

明日もどうぞよろしくお願いします。




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― 新着の感想 ―
[良い点] エミリー&ミウにとって、必要な便利道具だったのでしょう。 例えて言えば、とっておきの徹甲弾や煙幕弾の類と言えるでしょう。 [気になる点] 「ちょんまげ戦車2号」 野営用の幌や偽装用の網、…
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