62話 魔道具
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俺が意識を取り戻した時にはガタゴトと揺れるハーフトラックの座席の上で横になっていた。
中継所へ向かっているらしい。
上を見ると夜空にたくさんの星々が輝いている。
そうか、もう夜なのか。
ん?
陽が沈んだ後に走っているのか?
そう思った途端、俺は飛び起きて叫んだ。
「おい、もしかして街道走ってるのか!」
夜の街道を護衛なしでトラック1台で走るバカはいない。
せめて重武装のトラックが数台でお互いをカバーしながら走るのが普通だ。
単騎で走るトラックなんて夜行性の魔獣や盗賊の恰好の的だ。
装甲されているとはいえ、機関銃程度の武装で暗闇の中を堂々とライトをつけて走る車両が1台。
必然と魔獣が集まってくる事は覚悟しないといけない。
俺が飛び起きたのを見て近くにいたケイが嬉しそうに声を掛けてきた。
「意識が戻ったんだ、良かった!」
「いや、それよりもだ。今どの辺を走ってるんだよ」
聞くと廃墟の街と中継所の中間のところだという。
これじゃあ退き帰しても一緒か。
こうなったら中継所まで行くしかない。
「みんな、夜行性の魔獣と盗賊に警戒しろよ。夜は襲われる率がぐんと上がるから」
俺の言った警告よりも俺がさっきまで意識を失っていたことの方が心配なようで、ガキンチョ共はしきりに『大丈夫なんですか』と聞いてくる。
少し落ち着いたところで俺は改めて例を言う。
「そういえばヒールポーションを使ってくれたんだろ? ありがとう、良い思い――命拾いしたよ」
するとタクが答える。
「いや、こっちこそお礼を言わなくちゃいけませんから。塔の上からの掩護射撃。それとゴブリンの本隊への攻撃と、おかげでゴブリン1個小隊を撃退できたんですから。これ見てくださいよ」
そう言ってタクが山と積まれた戦利品を指さす。
そこには討伐証明になるゴブリンの角やカービン銃に手榴弾、そして多数の装備品などが積まれていた。
まあ、大したお金にはならなそうだけどな。
ゴブリン製の武器や装備は不人気で買取価格も安いのだ。
しかしガキンチョ共はかなりの自信がついたようで大喜びだ。
たった数人で1個小隊を撃退したという自信だ。
でもゴブリン相手ならその程度の話はよく聞くのだけれど、今それは黙っていた方がよさそうだ。
ただ、俺が彼らに今言えることは「よくがんばったな」と言う言葉しかなかった。
嬉しそうな3人を見ると俺まで嬉しくなってくる。
タクが何かを俺に差しだしてくる。
「あの、これゴブリンの指揮官からの戦利品です。ケン隊長が受け取ってください」
隊長って、と思ったけど悪い気はしないからそこはスルーした。
タクが俺に渡してきたのはネックレスだ。
魔獣か何かの骨で赤い石を挟み込んで紐を通したものだ。
「ネックレス?」
俺が不思議そうに見ていると、タクが説明を口にする。
「確かにネックレスなんですけど、ただのネックレスではなくて魔的なものです」
そう言われてみると確かにうっすらとだけど魔道具独特のオーラを発している。
「魔法のネックレスってことかよ。それなら高く売れるぞ。そんなもん俺が1人締めしちゃまずいだろ」
俺がネックレスを返そうとすると、タクが俺の手を押し返す。
「いやいや」と言いながら強引に返そうとするのだが、ケイが横に首を振り、ソーヤが運転席から「もらってください」と声を掛けてくる。
さらにタクが俺を納得させるようなことを言う。
「これは3人で決めたことです。今回一番活躍してくれたケン隊長に受け取ってもらおうって。でも魔的な道具と言うことは見てわかりますけど、その内容までは街へ行って調べてもらわないとわかりません。もしかしたら糞魔道具かもしれませんよ」
確かに調べてみて使えない魔道具の可能性もある。
今の段階ではどのくらいの価値があるかもわからない。
でもゴブリンが持っていた物だ。
恐らく糞魔道具の可能性が高いな。
呪いのネックレスの場合もあるし街まで仕舞っておこう。
俺はネックレスをありがたく受け取ることにした。
その後、中継所に到着するまでにはグレーウルフの集団に襲われたり、ジャイアントバットに襲われたりもしたが、幸いにも低ランク魔獣だったので、逆に素材をゲットできてしまった。
そしてなんとか中継所の光が見えてきた。
こうして無事に中継所へと到着すると、俺は真っ先に武装の統一されたゴブリン小隊が出現したことを守備隊に連絡した。
しかし最近は戦車に乗ったゴブリンまで出没するので、武装の整ったゴブリン集団などは珍しくなくなったとの事だ。
一応街には連絡を入れておくと言っていた。
この感じだとゴブリン小隊くらいじゃもう驚かないのか。
現に4等級ハンター4人で撃退しちゃったんだからな。
でも最近のこの状況に上層部の人たちは何も行動を起こさないんだろうか。
明らかにゴブリンに変化があるんだけど。
ただ俺達には現状、何もできないのだ。
夜も遅いのでこの日は直ぐに就寝することに。
俺はまたハーフトラックの中で寝ましたよ。
翌日、早速俺は60型軽戦車とバイクを受け取りに行く。
バイクは完全ではないけど修理はできている。
でもレンタル屋にはいくらか賠償金を払うようになりそうだ。
60型軽戦車は違う形の転輪をはめ込まれてはいるけど、普通に走行はできるようで安心した。
でもパーツ込みの修理代で合わせて10,000シルバが吹っ飛んだ。
修理代の相場が高いから仕方ないけど、これで魔法を使った強盗を倒して貰った賞金のほとんどが消えた。
60型軽戦車の買取金額によっては、75㎜砲の代金の50,000シルバに届かないかもしれない。
ちなみに俺の予想買取金額は50,000シルバ。
ギリギリの金額だ。
大丈夫、まだ日にちはある。
俺は自分に言い聞かせるのだった。
廃墟の街での戦闘はこれで終わりです。
魔道具らしき物を手に入れた主人公ですが、次回は妹のエミリーの秘密に迫ります。
次話投稿は明日の20時の予定です。
明日もどうぞよろしくお願いします。