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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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61話 色欲は死に勝る





 一瞬諦めかけた俺だが、そんな俺にも運が向いてきたようだ。

 ガキンチョ共のハーフトラックが、34型機関銃を撃ちまくりながらこちらに進んで来ていたのだ。

 ゴブリン達が必死でカービン銃を撃ち返すが、ハーフトラックの装甲にすべて弾き返される。


「ハーフトラックを直したのか。あいつら……」


 ハーフトラックが近づいてくると、ゴブリンは手榴弾を投げ始めた。

 しかしゴブリンが投げる手榴弾はどれもハーフトラックの装甲に当たって地面に落ちてから爆発していく。

 車内には1個も投げ込むことができない。

 その間にも次々にゴブリンは逃げていくか倒れていく。


 俺は嬉しさのあまり傷のことを忘れて立ち上がる。


 それでもゴブリンはハーフトラックに気を取られてこっちを見ない。

 何匹かがくるりと反転して走り出す。

 その背中を銃弾が襲う。

 あっという間に穴だらけとなったゴブリンは地面に無機物のように転がる。


 俺は立ち上がったのはいいけど左脚に激痛が走る。

 だけど今はそんなことを気にしている場合じゃない。

 

 残しておいた最後の1個の手榴弾を取り出すと、その小さな塊に『頼む』と小さくつぶやいてからゴブリンへと力いっぱい投げつけた。


 立ち上がった状態からの投てきだ。

 怪我をしてるとはいえ、十分な飛距離を出せたはずだ。

 あとは狙ったところへ投げられたかどうかだ。


 煙を吐きながら放物線を描いて手榴弾が飛んでいく。

 銃撃戦の最中だというのになぜか俺1人だけ別世界にいる様に感じる。

 いつ撃たれてもおかしくない状況なのに全く恐怖心もない。

 なぜか気持ちが落ち着いている。

 手榴弾が地面に落ちるまでの時間が非常に長く感じた。


 手榴弾は一度地面に落ちると、その勢いのままコロコロと転がって、建物の窓の中へとポトリと落ちた。

 ゴブリンの指揮官が大きく目を見開いて俺に拳銃を向けている。


 次の瞬間、手榴弾は盛大に破裂してゴブリンの指揮官は爆風で見えなくなった。


 やった!

 

 狙ったところに投げ込めた。

 しかしなんか急に腹が熱くなった。

 俺は耐え切れなくなってその場に倒れこむ。

 自分の腹を見ると、わき腹に銃弾を受けたらしい。

 出血が凄い。


 俺は横になった体制のまま、手榴弾の爆発の辺りへ擲弾筒の榴弾がいくつもぶち込まれていくのを横目で見る。

 その爆発で次々にゴブリンが吹き飛ばされていく。


 指揮官をやられたと知った他のゴブリンは、もはや戦闘集団とは言えない有様となった。

 次々に逃走を始めたのだ。

 それをハーフトラックの機関銃が容赦なくなぎ倒す。


 よかった。

 俺、勝ったんだな。

 

 俺の横にハーフトラックが止まる。

 真っ先に出てきたのはケイだ。

 すぐに俺を抱えて何やら声を掛けてくれている。

 でも意識が朦朧もうろうとしている俺にその声は聞き取れない。

 ただ、涙を流していることだけは理解できた。

 俺の頬にぽたぽたと涙が落ちてきたからだ。


 ケイは俺の腹を何度も何度も撫でまわす。

 腹の傷は相当深いんだろう。

 そしてしまいには俺の顔はケイの胸の中に埋められた。


 やった、死ぬ前に女の子とイチャイチャできたよ。

 ああ、でも巨乳がよかったな。


 意識が段々遠くなっていく。

 体の力が抜けていくようだ。


 そこでケイが何かをタクから手渡された。

 小瓶のようだ。

 ケイはそれを俺に飲まそうと必死だが、俺は苦しくてそれをすぐ吐き出してしまう。

 するとケイはそれを自分の口に含んで俺の顔に近づいてくる。


 俺はここでなぜか必死に意識を取り戻そうと努力する。

 だめだ、ここで死んでしまっては悔いが残る。

 意識を保て。

 俺の本能がそう言っているのだ。


 『全力で意識を唇に持って行くんだ!』


 俺は必死だった。

 本能が俺が今死ぬことを許してくれなかった。

 

 視界がぼやけてしまって、もはやほとんど見えない状態なのだが、なぜか意識は保っている。

 それに唇の感覚だけは異常なほどに敏感になっているのがわかる。

 

 次の瞬間、柔らかい何かが俺の唇に押し付けられ、口の中に甘いトロっとしたものが流れてきた。

 俺はそれを必死で飲み込んだ。

 飲み込むと苦痛が和らいでいく。

 俺はそのトロっとした何かを飲み込もうと必死になった。

 いや、むさぼるようにと言った表現が一番当てはまるんじゃないかと思う。

 すると徐々にぼやけていた視界と薄れていた意識も戻ってくる。


 そこで俺はケイに口移しでポーションを飲まされたんだと理解した。


 そういえば、お金を払わないでキスしたの初めてだな。

 そう思った瞬間、俺はケイに張っ倒された。


「ど、どこさわってんのよっ。このエロガキがっ!」


 どうやら俺は無意識の内にケイの胸を触っていたようだ。


 神様ありがとう。

 これで心置きなく死ねると思い、俺は暗闇の中へと意識を追いやるのだった。





なんとか色欲が死を乗り越えて命拾いした主人公。

次回は戦利品の中の一つを主人公は貰うのだが、その品とは。


次話投稿は明日の予定です。


どうぞ明日もよろしくお願いします。



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