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6話 火炎瓶攻撃






 左側の林からウルフライダーが躍り出る。

 騎乗しているゴブリンの右手には火炎瓶が握られている。


 その火炎瓶を握るゴブリンと俺の目が合った。

 するとゴブリンの野郎がニタリと笑いやがった!

 

 なぜかカチンときた俺は、すぐさまそいつに短機関銃の銃口を向けて引き金を引く。


 しかし荒れた路面のせいで揺れ動く装甲車、しかも標的は動き回るときたら中々当たるもんじゃない。

 

 やばい、やばい、近づいて来る。

 くっそお、ゴブリンのくせに!


 ゴブリンが火炎瓶を振り上げた時、やっと俺の放った銃弾が命中した。

 ゴブリンの手にしていた火炎瓶に。


 割れた瓶の中の可燃性の液体がパット空中に舞う。

 そして次の瞬間、空中で散った液体が発火。

 たちまち炎の雨がゴブリンを襲う。


 火だるまとなったゴブリンは狼から転げ落ち、装甲車の後方へと消えていく。


 主を失った狼は背中で燃える炎を消そうと地面に背中をこすりつけるのだが、炎は地面の草に燃え広がり、次第に狼も火だるまと化していった。


 俺はどうたとばかりに左手の拳を振り上げるのだが、すぐにエミリーが警告を発する。


「お兄ちゃん、後ろから2匹来るよ!」


 俺は直ぐに体の向きを後ろに変えて銃を構える。


「やだ、右からもだよぉ!」


 エミリーの悲痛の叫び声に横目で確認すると、右から残りの1匹が接近している。

 もしかしてと思い、反対側も確認するとやはりウルフライダーが左から接近を始めていた。


 やばい、3方向から一気に攻める気だ!


 ゴブリンのくせに生意気だぞ~~!


 俺はマガジンに残っている全弾を後方の2匹に向かって叩き込む。

 命中は期待してない。

 少しでも前に出るのを躊躇ちゅうちょしてくれればそれでいい。


 素早くマガジンチェンジして左側のウルフライダーに牽制射撃を加える。


 もはや狙いを定める余裕もない。


 奴らは信じられないような軌道で、木や岩の間をすり抜けて射線を掻い潜る。


 ついにはエミリーにも運転しながら魔法を放ってもらうしかなくなった。

 すまんな、エミリー。俺1人じゃ手に負えないみたいだ。


「エミリー、俺一人じゃ無理。ヘルプ!」


 普通は運転しながらの魔法行使は無理があるんだが、エミリーはそれをやってのける。

 魔法を使えない俺とは出来が違う。

 俺の自慢の妹だ。


「しょうがないわね。それじゃあ手伝ってあげる」


 エミリーは片手を掲げると横目でウルフライダーを見据えて魔法を放つ。

 エミリーの風刃の魔法は、一発で右側から迫るウルフライダーを切り刻む。

 死んではいないようだが、徐々に速度を落として後方へと消えていった。

 よし、これであと3匹だ。


 俺は弾倉の交換をしながらある事に気が付き思わず声に出す。


「やば、弾が後これだけしかない!」


 とうとう最後のマガジンチェンジとなったのだ。


 1マガジン32発が最後の弾だ。


 それが終ればあとは護身用の拳銃とナイフ、そして手榴弾が2個しかない。


 すがる思いでエミリーに視線を移すが、エミリーは渋い表情で手の平を上に向けた。

 『魔力があまり残ってないから魔法は無理だよっ。でもお兄ちゃんなら出来るよ。お兄ちゃんならあんなゴブリンくらい軽く蹴散らせるよ』というアピール、いや完全に俺の妄想だが。


 突如ゴブリンが火炎瓶を投げた。


 しまった、油断していた!

(妄想に浸りすぎた!)


 火炎瓶は車体側面の装甲板に命中して火炎を上げる。

 セーフ!

 車内には入ってないよ!!


 側面からキャタピラにかけて炎が上がる。

 炎は次第に回り続けるキャタピラ全体に広がる。

 でも今は消化する余裕もないし放って置く。

 なんか炎のキャタピラっていう絵ずらが怖いです。


 ん?


 ふと見覚えがある映像が思い浮かぶ。


 ゴブリンが投げた火炎瓶だ。


「エミリー! 掩蔽壕えんぺいごうで積み込んだ木箱!」


 俺の慌てようにエミリーが心配する。


「ど、どうしたの。こんな時に」


「中身がワインの瓶だと思ってた木箱、あれは火炎瓶なんだよ」


「へ?」


「ゴブリンが投げてる火炎瓶と確か一緒の銘柄だったと思うんだよ――あった、この木箱」


 俺は見つけた木箱蓋を開けてその“火炎瓶”を取り出す。


 ご丁寧に木箱の中に火種の布切れとライターまで入っていやがる。


 早速俺は火炎瓶を利用する。


 一投目。

 投げた火炎瓶は接近しようとするウルフライダーの手前の地面で炸裂。

 火炎の中に突っ込むかと期待したんだが、うまい具合に避けやがった。

 残念!


 2投目、3投目。

 後方から来る2匹に向かって火炎瓶2本を投げつける。

 やはり外れるが、地面に炸裂した時に火の粉が飛んだらしく、赤い骨のイヤリング?を付けたゴブリンの顔にを火傷を負わせたみたいだ。

 熱がってやがる、ざまあみろだな。

 これでまた少しは牽制になっただろう。


 4投目、5投目。

 右側から再び接近したので火炎瓶2本を続けて投げつけてやった。

 ゴブリンより力のある俺の方が遠投距離は上なんだよ。

 ゴブリンは持っていた火炎瓶を投げることなく、地面に出来た火炎だまりを避けて遠ざかる。

 命中せずか。

 残念。

 でもね……


「ば~か。こいつを忘れてるよ!」


 俺は即座に短機関銃を構えて引き金を引いた。

 火炎瓶を投げられる距離なんて、おもいっきり短機関銃の射程内だからな。

 火炎瓶に気を取られすぎなんだよ。


 狼の胴体からゴブリンの胴体へ、下から上へと駆け上がる様に弾着した。


 狼とゴブリンから血飛沫ちしぶきが上がる。


 そのまま狼は前足を折り曲げるようにして地面に顔面から激突。

 騎乗していたゴブリンは空中に投げ出されて、くるりと一回転して背中から地面に衝突して動かなくなった。

 

「ひゃっほ~。あと2匹!」


 残るは後方から迫る2匹だけだが、どうやら攻めてくる様子が無い。

 逆に徐々に距離を開けて遠ざかる。


 諦めたっぽいな。


 ウルフライダー2匹は十分距離が空いたところで追いかけるの止めて停止した。

 停止したウルフライダーの内の1匹、赤い大きな骨のイヤリングをしたゴブリンが空に向けて剣を掲げる。そしてその剣を今度は俺達に切先を向けて止めた。


 何か魔法を放つのかとビビったけど、特に何もなくウルフライダーは来た道を引き返していった。


「なあエミリー。今さ、ゴブリンが剣の切先を俺達に向けてきたんだけどなんか意味あるのかな」


 操縦しながらエミリーが答える。


「う~ん、そうね。“覚えてやがれっ”って言うチンピラの名セリフ、お兄ちゃんのいつもの言葉と一緒だと思うよ」


「おい!」


 それから10分ほど走っただろうか、森を抜けた荒野でガス欠となった。



 






次話は明日投稿します。


よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
オープントップで右ハンドルのユニバーサルキャリアで、運転片手に魔法をぶっ放すのに違和感はないが、火炎瓶を投げつけながら短機関銃を無駄撃ちしなかったのは、後のエピソードに連なる伏線になっているのでしょう…
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