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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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59話 鐘楼

またしてもちょっと長いです。





 俺はガキンチョ3人に改めて尋ねる。


「そんなにこのハーフトラックが大切なのか」


 するとケイが返答する。


「私達だけで守るから逃げてもいいよ。チキン野郎は足手まといよ」


「チ、チキン……」


 続いてタクが軽機関銃を構えたままで言う。


「このハーフトラックは僕達の友情の証なんです。むざむざゴブリンなんかに渡せません。今までありがとうございました。あとは僕達3人で大丈夫です。行ってください」


 そこまで言われた俺は返す言葉に詰まる。


「そうか、わかったよ。お前えら――死ぬなよ」


 俺はそう言い残してハーフトラックを後にした。


 そして中央広場を横断して反対側の建物に身を隠す。


「くそ、あいつら恰好付けやがって。映画の主人公みたいに敵を蹴散らして生き残れると思ってんのかよ」


 誰に聞かせるわけでもなく、俺は1人地面に向かってつぶやいた。


 しばらくすると34型軽機関銃の発射音が廃墟の街に響き渡る。


「はじまったか……」


 俺は気になって双眼鏡でハーフトラックを見る。


 ソーヤが34型機関銃を撃っているらしい。

 時折タクが擲弾筒を発射している。

 ケイも必死で明後日の方向へ向けて自動小銃を撃っている。

 俺はそれを見て薄っすら笑みを浮かべる。


「下手くそのくせに必死に頑張ってやがる……」


 最初は戦闘が始まったらすぐに逃げるつもりだったんだが、戦闘の様子が気になってしょうがない。

 でも今いるこの位置からだとハーフトラックの動向しか観察できず、敵であるゴブリンの部隊の動きがあまり見えない。


 もうちょっと見える位置はないかと周りを見回してみると、それほど高くはないのだが、教会の鐘楼しょうろうが見えた。

 しかしそれが建っている場所というのは敵ゴブリンが進行している道路沿いだ。

 今いる場所よりも危険な場所である。


 少し考えたのだが、俺の『気になる』という好奇心の方が勝った。


 気が付いたら俺は足早に教会に向かっていた。


 教会の裏口にたどり着く。

 拳銃を構えながらそっと教会内部へと侵入する。

 誰もいない。

 そのまま鐘楼しょうろうへと階段を登っていく。

 階段を登り詰めるとさらに上へといく木製の梯子はしごが目に入る。

 鐘楼しょうろうの一番上へ行くにはこの梯子はしごを上らないとダメみたいだ。

 俺は重い軽機関銃を背負ったまま梯子はしごを上る。

 かなり古い作りでギシギシと音がする。

 途中で壊れないかハラハラしながら上っていく。


 梯子はしごを上り詰めると木製の蓋があって、それを開けると屋根がなくなった塔の頂上に着いた。


 ちょうどゴブリンとハーフトラックの中間地点くらいだろうか。

 戦闘の様子がまるわかりだ。


 これは良い位置に来たと双眼鏡で下を観察する。


 ガキンチョ側はゴブリンの位置をすべて把握していないようで、道路の右側に陣取っているゴブリンばかりに攻撃を加えている。


 双眼鏡で辺りを見回すと、ゴブリン5匹くらいが建物の間を通って、俺達が射撃訓練した建物のほうへ回り込もうとしているのが見えた。


 ああ、回り込まれるぞ。

 あっちの建物側から回り込まれると、きっとガキンチョ共は気が付かないだろう。

 それでゴブリンに手榴弾を投げ込まれて終了だ。


 俺はイライラしながら双眼鏡を握りしめる。


 ゴブリンがついに建物へと入り、瓦礫がれきに隠れながらハーフトラックに接近する。


 おいおい、本当に気が付かないのかよ!


 ゴブリンの1匹がライフル銃を置いて柄付き手榴弾を握りしめる。そして姿勢を低くしてハーフトラックに近づいて行く。


「ああ、もう見ちゃいられないよ」


 我慢しきれなくなった俺はとうとう軽機関銃を塔の壁に据えて狙いを定める。


 丁度ゴブリンが右手を振り上げようとした時に俺は引き金を引いた。


 ゴブリンの胸と顔面が赤く染まる。

 すると腕を振り上げた勢いのまま、手からすっぽ抜けた柄付き手榴弾はクルクルと回転しながら宙を舞う。

 それは後ろにいたゴブリンへと向かって飛んでいく。


 仲間のゴブリンはお互いを踏み台にして逃げ惑う。

 そして地面に落ちた瞬間に手榴弾は炸裂した。

 その爆発で逃げ遅れた1匹が犠牲になったようだ。

 残った3匹は物陰に隠れてキョロキョロと周りを伺っている。

 どこから撃たれたのか分からないようだ。


 ガキンチョ3人もゴブリンには気が付いたが、誰がどこから撃ったのかは解っていないようでキョロキョロしている。


「ったく、世話が焼けるよな」


 俺は1人つぶやきながらさらにゴブリンの本隊のいる方向へと銃口を向ける。


 横目でハーフトラックの方を見ると、タクが生き残りのゴブリンの潜む場所へ擲弾筒で榴弾をぶち込んでいた。


 よし、大丈夫そうだな。


 俺は銃口を今度は指揮官らしきゴブリンが隠れている場所へと向けて、弾倉に残った弾丸すべてを叩きこむ。

 指揮官には命中しなかったが、近くにいたゴブリンの頭を吹っ飛ばし、さらに1匹に命中弾を喰らわせた。


 弾を喰ったゴブリン1匹がその場でうずくまっていてかなりの重症のようだ。もう1匹のゴブリンは足に命中したのか、足を引きずりながら建物へと入って行く。

 俺は急いで弾倉交換をする。

 20発の箱型弾倉なんであっという間に撃ち尽くす。いちいち弾倉交換が面倒臭い。

 

 

 ゴブリンもやっと俺の位置に気が付いたらしく、激しい銃弾が鐘楼しょうろうに撃ち込まれる。

 ヒュンヒュンと弾丸が風を切る音が耳元で聞こえ、壁に当たった弾丸が細かい破片を辺りに散らせ、それが何度もあたり俺の中の恐怖心をくすぐってくる。

 俺はその恐怖心を払拭ふっしょくするようにワザと独り言を声に出す。

 

「うわっ、凄いお返しだなこりゃ」


 さすがに1個小隊ほどの数がいる。

 それだけ銃撃も凄い。


 銃撃の切れ目をついて俺も1連射ほど撃ち返すのだが、それに対しての反撃が物凄い。

 たまらずに直ぐに銃を引っ込める。

 俺からは敵の位置が丸見えなように、敵からも俺の位置は丸見えだもんな。集中射撃を喰らって当たり前だ。


 そのうち下の方でギシギシと木のきしむ音が聞こえる。


 ゴブリンめ、上ってきやがったな。

 木製の梯子はしごを上る音だ。


 俺は拳銃を用意すると梯子はしごにつながる出入り口の木のふたに、そっと手を掛ける。

 そして勢いよくふたを開けて弾丸を連続発射する。


 目の前まで上ってきていたゴブリンの顔面に次々に弾丸がめり込み、そのまま下へと落ちていく。

 すぐ下にはゴブリン数匹がライフル銃を構えていたが、まさか先制攻撃されるとは思っていなかったのだろう。放った弾丸はすべてコンクリートの天井に突き刺さる。

 俺はすぐに木のふたから離れて手榴弾を用意する。


 そしてピンを引き抜いた手榴弾をそこへ投げ落とす。


 下でドタバタと慌てて逃げる足音がして、そのすぐあとに爆発とともに煙が噴き出す。


 俺はその煙の中へと拳銃を持ったまま飛び降りる。

 意外と高さのある着地だったので、ちょっと足がじんじんするがそこは我慢のしどころだ。若干足を引きずりながら倒れたゴブリンに止めを刺しながら、下へ降りる螺旋階段らせんかいだんを確認する。

 すると生き残ったゴブリンが階段の途中にまだいた。

 2メートルくらいの距離でお互いを確認するとほぼ同時に撃ち合った。

 お互いに弾は外れる。

 ゴブリンはすぐに姿が見えななるまで階段の奥へと下がる。


 次弾を装填するカシャンという音が階段の奥で聞こえる。


 あの音だとやっぱりレバーアクションの5連発式カービン銃だな。

 ボルトアクションよりは連射が効く、昔のゴブリン軍が使っていたというカービン弾を使うカービン銃だ。

 俺は拳銃、敵はカービン銃。

 取り回しなら俺の方が有利。

 それに俺は接近戦闘が得意だしな。

 俺は猛ダッシュで走り出し見えたカービン銃の先を手でつかんで上へ向ける。

 焦ったゴブリンが咄嗟とっさにカービン銃の引き金を引く。

 カービン銃の銃口から放たれた弾丸は天井に突き刺さる。

 

 ゴブリンが再びレバーアクションで次弾装填を試みるのだが、時すでに遅し。

 

 ゴブリンの目の前には俺のラムド35型拳銃の銃口が向けられていた。


「はい、残念でした」


 俺はひと言添えて眉間みけんへと弾丸を放った。

 

 眉間みけんに穴の空いたゴブリンが螺旋階段らせんかいだんを転がり落ちていく。


 すぐに他に生き残りがいないか確認するが、他はまだ登ってきていないようだ。

 この鐘楼しょうろうにいちゃまずそうだな。


 俺は軽機関銃を回収してゆっくりと階段を下りていく。


 すると1階にゴブリンが待ち伏せしてやがった。

 銃弾が俺のほほをかすめ俺の歩が止まる。

 そこへ『ゴトン』と柄付き手榴弾が投げ込まれた。

 咄嗟とっさに俺はそれを蹴り返すが、俺が狙った方向とは違い壁に1度跳ね返ったところでそれは爆発した。

 丸い形の手榴弾と違って柄付き手榴弾は蹴る箇所が難しい。

 右肩に衝撃を受ける。

 耳がキーンとする。

 壁に背中を付けて倒れそうになるのを必死に耐えるのだが、尻を階段に付けたまま立ち上がることができない。

 視界がぼやけていてよく見えない。

 くそ、しくじった。


 胸の鼓動の音が敵に聞こえるんじゃないかと心配になるくらい激しい。

 俺は左手を胸に当てて右手で握りしめた拳銃を必死で構えるのだった。





次回もまだ市街戦が続きます。

主人公は絶体絶命のピンチに。


果たして主人公は敵の本陣を叩けるのか?!



次話投稿は明日の予定です。



明日もどうぞよろしくお願いします。



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