54話 上流階級の面々
彼らの中の1番年上らしい1人が自分たちについて説明を始める。
彼が言うには自分たちは3か月で4等級になったずぶの素人だという。
4等級ではあるが実際は5等級成り立て程度の実力しかないと説明したのだ。
自分たちは金の力でハンターランクを上げた金持ちの息子だと言った。
どういうこと事かと言うと、ランクを上げたいハンターのいるチームに腕の立つハンターを加入させる。
そのチームで狩りをすれば、5等級ハンターだったらあっという間に4等級に昇格できる。チームで行動した場合、得たポイントはチーム内で割り振られるシステムだからだ。
その後も装備さえよければ3等級までなら一気に駆け上がれる。
ただし2等級以上となると試験があるため、ちゃんとした基礎ができたうえで腕がないと昇格は無理だ。
つまり彼ら3人は金の力で2等級や3等級ハンターを雇ってレベルアップさせたというわけだ。もちろんそうするには金が必要だ。
しかし彼ら3人とも金持ち出のガキンチョだ。
金はあるから腕の立つハンターも装備も問題なく揃えられたというわけだ。
 
そこまで話を聞いて俺はある疑問を抱く。
「そこまでの話は解ったんだけどさ、金持ちの息子がなんでハンター目指すのさ。ハンターやる奴なんか金に困ってる奴か、バトルジャンキーしかいないだろうに」
すると先ほどと同じガキンチョの一番年上らしい少年が答える。
「僕たち3人はある有名武器メーカーの息子です。僕は一番年上でタク・ナンブ14歳です。そしてこいつが――」
俺は慌てて言葉を遮る。
「まてまて、有名武器メーカーでナンブっていうとあの“ナンブ・ファイヤー・アームズ”のナンブなのか?!」
タク・ナンブと名乗る少年は「はい」と短く返事して、背中に背負ったナンブ製の擲弾筒を指さした。
「まじかよ。良いとこのボンボンどころじゃないよな」
タク・ナンブはさらに話を続ける。
「それからこいつがソーヤ・ラムド14歳です。お察しの通りラムド重工の御曹司です」
「俺、ラムド9㎜拳銃持ってるぜ!」
思わずホルスターの拳銃を叩いてアピールしてしまった。
タク・ナンブは一番背の低く華奢な体格の少年を指差して説明するのだが、前の2人の紹介と違ってなんだかためらっている雰囲気がある。
「それからこいつが一番年下で13歳の……ケイ・ホクブです。あの色々と有名になりましたホクブ兵器産業の……ご令嬢です」
「は?」
俺は思考が追いつけなくなり変な声を上げてしまった。
今、ご令嬢って言ったよね?
えっと名前も“ケイ”って男でも女でも通用しそうだけどさ。
俺はケイと紹介された人物を凝視する。
するとケイ・ホクブは両腕を胸の前に交差させる。
やばい!
つい、胸をじっと見てしまった!
それを知ってかタク・ナンブがケイ・ホクブが被っていたいたベレー帽を取る。
するとパラりと美しい金色の髪の毛がほどけて肩にかかる。
そして俺をキッと睨みつけて一言。
「ど、どこ見てんのよ!」
俺はしれっと視線を泳がせる。
うん、エミリーの方があるな。
しかしダボダボの戦闘服着てるから女の子だったなんて全く気が付かなかったよ。ただの子供なのかと。
気まずくなった空気を繕うようにタク・ナンブが話を続ける。
「僕たち3人はこういった有名メーカーの社長を親に持つ何不自由しいない境遇です。他の人たちから見れば羨ましいと思われてもしょうがないです。ですけど、僕たちには僕たちなりの苦労があるんです。どこへ行くにも監視付き。将来も親に決められていて、その決められた線路の上を進むだけです」
そこまで聞いてさすがに俺も思ったことを口にする。
「それの何がいやなんだか俺には解からんけどな」
少し嫌な表情を見せるが話を続けるタク・ナンブ。
「僕たちには全く自由がないんです。夢も希望もないんです。初めはそう考えているのは自分だけかと思ってました。そしてある時、パーティー会場で知り合ったこいつら2人と話しているうちに、それが自分だけでないことが解ったんです。3人とも同じ考えだったんです。初めはその話で盛り上がってるだけだったんですが、そのうち行動に移さないかと話は発展して……」
ここまで聞いて俺は話を理解した。
武器産業界にいる彼らの手っ取り早く、そして自由に行動できる職業といえば、『ハンター』だったというわけか。
ハンターランクも5等級だと仕事を見つけるのも大変だからな。
手っ取り早くそこそこ稼げる3等級を目指したということか。
「それでハンター業界に足を突っ込んだわけだね」
俺の言葉に3人は黙って頷く。
俺はさらに疑問を投げかける。
「あのさ、君たち3人はやっぱ親には無断で家を出てきたりしてるの」
俺の質問に気まずそうに頷く3人。
まじか。
こいつらと一緒にいちゃまずいパターンだろ。
それにホクブ兵器産業といったらアベンジャーズに狙われてるし。そのご令嬢とかいったらやっぱ狙ってくる可能性もあるだろうしね。
そもそも誘拐犯に間違われたりしないか?
ガキンチョ達の家出なんかに付き合ってられん。
まあガキと言っても、俺と年齢はあんまり変わらないんだけどね。
しかしド素人レベルなら確かに俺とかでも十分凄いハンターに見えるんだろうな。それで俺について来たってわけか。
こっちとしてはいい迷惑だ。
ここは中継所についたらさっさと別れよう。
驚いたことにガキンチョ共が修理した戦車は応急処置ではあるが、なんとか走れるまでにもっていきやがった。
といっても転輪が1か所ない状態なため、キャタピラが外れてしまう危険性がある。そのため速度は上げられず、ゆっくりと走行するという制約がある。
一番年上のタク・ナンブに俺の壊れたサイドカー付きのバイクを押してもらい、俺はタイプ60を操縦する。
こうしてガキンチョ3人にはこの戦利品とバイクを運ぶのを手伝ってもらう事として、俺は一緒に行動を共にすることにした。
中継所にでも着いたら適当な事を言ってとっとと別れよう。
こうして俺達は歩く速度で近くの中継所を目指すのだった。
次話投稿は明後日の予定です。
すいませんが明日の投稿はお休みさせていただきます。
どうぞよろしくお願いします。
 




