52話 オーク出没
俺の視線の先には1両の戦車が木々の間を縫ってこちらに進んでくる姿があった。
しかしそれはハンターの乗る戦車ではない。ましてや俺達を追ってくるコボルトが乗る戦車でもない。
車体に描かれた識別マーク、それはオーク族のマークだった。
タイプ60と言われるオーク族の中でもメジャーな部類に入る軽戦車だ。
詰んだ。
後ろからは軽機関銃まで装備したコボルトが1個分隊。
前からはオークのタイプ60戦車。
完全に挟み撃ちじゃないですか!
いつの間にかにアルファのメンバー3人が俺の側まで来てじっと俺を見つめる。
やめてくれ、俺はお前らの指揮官じゃないから。
それに俺もお前らと同じ4等級だから。
ええい、やけくそだ。
「ったく、こうなったらお前らの面倒をまとめて見てやるからついてこい。できるだけ姿勢を低くしろ!」
俺が指示をしてやると大きく頷いて姿勢を低くした。
こいつら何で笑顔なの?
しかしちゃんと言うことは聞くんだな。
俺は左に逃げることにした。
しかし4人で動けば発見される可能性も高くなる。
すぐにコボルトから銃撃がくる。
軽機関銃が特に厄介だ。
重くかさ張るから追撃戦には向いてないのだが、体の小さなコボルトのくせに頑張って運んでは射撃を繰り返してやがる。
ちょっとした岩があったのでその後ろから一斉射撃をする。
といってもこっちの装備はライフル銃だから大した牽制射撃にもならないがそれでいい。
あ、でもアルファの3人の持つ銃は俺のボルトアクションとは違い自動小銃だ。
軽機関銃ほどではないが結構な威力となる。
くそ、うらやましいぜ。
この場所に手榴弾を使ったブービートラップ、つまり罠を仕掛ける。
罠に気が付かれたとしても、そういうものの存在が彼らの足止めになる。
追撃の手が緩みさえすればそれでいい。
俺達とコボルトの戦闘に気が付いたオークの戦車が射撃を始めた。
砲塔には主砲の20㎜機関砲と同軸に機関銃も装備している。
それで撃たれようもんなら生身の体にはすさまじいい威力となる。
普通の機関銃と違って榴弾を使えるから至近弾でもやられる。
1発でも命中すれば人間なんてバラバラだ。
しかし狙われたのは俺達ではなく、派手に射撃を繰り返すコボルトだった。
俺に引っ付いてくるアルファの3人は「え?」という顔をしている。
オークがコボルトを攻撃したからだ。
オークやコボルトは人間にしたらどちらも敵だけど、オークにしたらコボルトも人族も味方ではなく獲物だ。
オーク族は人間やコボルトを食うからだ。
だから敵ではなく完全に獲物という扱いとなる。
オークは討伐対象なんで俺らにしても獲物ではあるのだが。
しかしコボルトを攻撃してくれたのはラッキーだった。
コボルトも応戦射撃をするが戦車に小火器では通用しない。
命中するもすべて跳ね返されていく。
おかげでオークの戦車は完全にコボルトに攻撃の矛先を向けてくれた。
コボルトの軽機関銃チームの4匹が岩の後ろへと退避する。
しかしそこは俺が罠を仕掛けたところだ!
ブービートラップの手榴弾が炸裂してコボルト3匹をなぎ倒す。
ジャングルに「キャンキャン」とコボルトの悲鳴が響く。
残ったコボルト達は必死に逃げ惑う。
戦車は俺達を素通りしてコボルトへと向かっていく。
これは助かったよ。
この隙に俺達はこっそり撤退しよう、と思ったんだが。
俺に引っ付いてきてるアルファの1人のガキンチョが、しゃがんで何かしようとしている。
片膝をついて擲弾筒を地面に据えてやがる。
もしかして撃つ気か?
「あ、バカ!」
俺は思わず手を伸ばしてそれを制止しようとするが、時はすでに遅くガキンチョは擲弾筒を発射した後だった。
ジャングルの悪路で速度は遅いとはいえ、移動する乗り物に向かって擲弾筒を発射するとは素人にもほどがある。
そもそも擲弾筒の弾は装甲車両には効かないから。
手榴弾を遠くへ飛ばす為の道具だから、戦車に向かって撃ってもほとんど効果はないからな。
これは対人用に作られた武器だ。
しかし撃ってしまったので何を言っても後の祭り。
それでも俺は我慢しきれずに思わず声に出してしまう。
「なにしてるんだよ!」
放った擲弾は偶然にも戦車側面に砲塔に命中して炸裂した。
最悪だ。
これで俺達が側面にいることがばれたな。
命中したはいいが対人用の弾の威力では装甲された戦車には効果はない。
少しの間を置いた後、戦車が一旦停止してこっちに向きを変え始めた。
やばい!
やっぱりばれるよな!
「全力で走れ。固まるなよ。戦車が入ってこれないジャングルの奥へ逃げ込め!」
俺の指示に従いアルファの3人も走り始める。
俺は後についてくるアルファのメンバーに声を張り上げる。
「散れ、散るんだよ! 散開!!」
俺の言葉をやっと理解したアルファの3人は、3人ともがバラバラの方向に逃げ始める。
アルファ―の3人が10時方向、1時方向、2時方向の3方向に向かったのを確認した俺は、1人4時方向へと進路を向ける。
危険な掛けだがこのままだと誰かしら犠牲になってしまう。
そうなる前にイチかバチかの勝負に出る。
俺はライフル銃を捨てて背中に背負っていたモノを手に持つ。
携帯型の対戦車榴弾発射器、ER‐10通称『エッグランチャー』だ。
敵の隠れ家の廃屋で見つけた、武器屋のポスターにも乗っているあの武器だ。
俺は大きな草の密集している中へと飛び込んだ。
そしてエッグランチャーの折りたたみ式照準器をセットして発射準備を整えて、筒状になっている棒の部分をわきに抱えるようにして戦車を待つ。
幸いにも戦車は俺に気が付いてないようだ。
1時方向へ逃げたアルファーのメンバーを追いながら、時折射撃を繰り返す。
徐々に戦車が俺に近づいてくる。
湖の近くとあって地面が若干湿地状態なので速度は意外とゆっくりだ。
タイプ60戦車は車高が低く湿地走行に弱いと聞く。
俺は落ち着いて狙いを定める。
俺のすぐ横を通っていく。
距離にして10mもないんじゃないだろうか。
俺は落ち着いて発射スイッチを押すのだった。
次話投稿は明日の予定です。
明日もよろしくお願いします。




