45話 75㎜対戦車砲
手に入れた2型戦車も故障することなく、なんとか隊列に遅れることなくついて行くことができている。
そしてある時、何の変哲もない道路の真ん中で隊長が停止の合図を送った。
俺達も手に入れた無線を聞いて車両を止めた。
装甲兵員輸送車に乗っていた隊長が立ち上がり、無線を使わずに大声を張り上げた。
「近くの休憩所に無線がつながった。今からそこへ向かうぞ!」
それを聞いたハンター達からは歓声が上がる。
俺達3人もあらん限りの声を張り上げてうれしさを表現するのだった。
無線がつながったということは、これで休憩所から街の保安官事務所へ連絡がいき、事の一部始終が伝えられて応援が来るはずだ。
これでアベンジャーズもゴブリン達もしっぽを巻いて逃げていくな。
さて、無線が通じたということは休憩所まであと少し。
うまいもんが喰いてえ。
そしてついに休憩所が見えるところまで来た。
再び歓声が上がる。
しかし、休憩所手前100mほどのところでセメトン戦車がトラブルで動けなくなった。
さすがゴブリン製の戦車だな。
あと一歩のところで故障とは可哀そうだ。
そして、セメトン戦車以外は無事に休憩所へとゴールしたのだった。
その後、全員でセメトン戦車を休憩所内へと運び込むのに、1時間を要した。
食事も終わってベンチでくつろいでいると、隊長が全員集まるように言ってきた。
重要な話があるそうだ。
ハンター達全員が集まったところで隊長は皆を見回した後、ゆっくりとした口調で話し始める。
「ここまでみんなご苦労だった。さて、さっき街の保安官事務所に連絡が付いた。それで街から新たに護送部隊がここへ来る予定だ。そうだな、半日もあれば来るだろう」
それを聞いたハンターの一人が口を開く。
セメトン戦車の乗員だ。
「おいおい、待ってくれよ。それってもしかして俺達の護衛はもう必要ないってことか」
すると隊長が答える。
「まあ、そういう言い方はするな。ちゃんと護衛完了ということで料金は支払う。もちろん戦車がないハンターでも、今ここにいるハンターならは護衛任務完了とみなす。それなら文句はあるまい」
するとエミリーが口を挟む。
「あの、それって掛かった燃料代、弾薬代の支払い、それと当初の予定の3倍の料金で間違いないですよね?」
隊長が苦しそうに返事をする。
「あ、ああそうだな。覚えていたようだな。そういうことだ。約束だからな。ただし今回の依頼内容は秘密にすることが条件だ。ちゃんと書類にもサインしてもらうことになる。それでもいいならちゃんと支払おう。納得いかない者はいるか?」
隊長は全員をゆっくりと見回した後、再び口を開く。
「何も言わないってことは全員納得した上で新たな契約書にサインしてもらうぞ。街から保安官部隊が来たら書類を渡す。それまでは護衛は継続だから気を緩めるな。またゴブリンが穴掘って攻めてくるかもしれない。以上、解散!」
これで俺達の護送の仕事は終わった。
いや、街からの保安官部隊が来るまであるか。
しかしこの休憩所は街からそこまで離れているわけでもなく、ゴブリンの襲撃のあった休憩所より全然規模がでかい。
なんせトイレはキレイで臭いもきつくないからな。
なんと食事が思った以上にうまい。
といっても街で食べる料理にはかなわないけど。
俺達は暇な護衛依頼をぼんやりと過ごす。
なんせ動く乗り物は装甲兵員輸送車と俺達のただ走れるだけの2型戦車しかない。
外に偵察に行こうにもこれでは無理だ。
なのでもっぱら休憩所内での巡回しかやることがない。
それでみんなが思い思いの時間を過ごすのだった。
そろそろ日が沈むという時間になって突然正面門が開き、保安官マークの付いた車列が続々と入ってくるのが見える。
それと同時に俺達の護送任務も完了した。
保安官の護送部隊はそれから30分ほどしてから出発した。
街へと向かうのだろうな。
これはチャンスか?
戦車砲がない俺達はその車列の一番後ろに、コバンザメのようについて行く。
何かあっても守ってくれる訳ではないけど、少なくとも盗賊は襲ってこないと思う。
こうして俺達は夜の道を走って街へと無事に到着するのだった。
その日はすぐに宿に直行し、ゆっくりと疲れを癒したい。
それにはエミリーもミウも反対などしない。
2人ともシャワーを浴びれると大喜びで宿へと向かった。
翌朝一番でアシリアの街へと引き返す。
偶然にもアシリアへ向かう武装トラックがいて、一緒に行動することができたのはラッキーだった。
おかげで武装がない2型戦車でも帰ることができた。
街へ到着すると、エミリーとミウはいつも通りハンター協会へ依頼完了の種類を提出しに、俺は2型戦車を修理できないかモリじいの店へと向かう。
現在は壊れた砲塔が邪魔なので、修理できなくても取り払ってもらい、普通の乗り物として使おうかと考えているのだ。
そして砲塔があったとこに機関銃なんか取り付けられれば、りっぱな重装甲車として使えるんじゃないかと。
そして1時間後、気が付くと俺はモリじいの店で新たな購入契約書にサインしてた……
またやっちまった!
エミリーに怒られる!
いや、今回は殺されるかも!
でも自分でいうのもなんだがしょうがないと思う。
誘惑に勝てなかったんだもん。
何より良い買い物だったと思うぞ。
だって75㎜砲搭載の戦車だよ。
正確に言うと自走砲なんだけど。
実は俺が“モリ商会”に2型戦車を持ち込んだ時、初めにモリじいが新しく雇ったといって助手を紹介してくれた。
俺はその助手を見て驚いた。
新しく雇ったというのは18歳くらいのナイスバディーな女性だった。
ショートパンツに丈の短い白いTシャツで、きゅっとしまったウエストにすらりとした脚線美に目を奪われる。
シャツが小さいから細いウエストが余計に目を引く。
小麦色に日焼けした肌が眩しいポニーテールの金髪美人だ。
名前はサファイヤといって目の色からついたニックネームだそうだ。
どう考えてもこの小汚い店には似合わない人種だろ。
モリじいは俺が乗ってきた2型戦車を見ると、意味ありげな笑みをこぼしてサファイヤちゃんに目配せをする。
サファイヤちゃんは小さく頷いて、なぜか俺の手を引きながら倉庫へと手招く。
当然俺は鼻の下を伸ばして前かがみでついて行く。
倉庫へ入いるとサファイヤちゃんは倉庫の隅っこに置かれた“あるもの”を指さした。
それを見た瞬間すぐに俺はあれを連想した。
まさかまた『ちょんまげ』なのか!
そこに置かれていたのは対戦車砲だった。
それも有名メーカーであるメンタル社製の75㎜砲であった。
次話は明日投稿予定です。
ついに夢の75㎜砲が⁉
明日もどうぞよろしくお願いします。




