44話 戦場の拾い物
タイトルを少し付け足しました。
でも決定ではないです。
また変更するかも!
生き残ったハンター達は怪我人の治療や被害状況の把握に忙しそうに動いている。
そんな中、俺達3人だけは自分たちの戦車を茫然と見ていた。
エミリーがつぶやく。
「ねえ、お兄ちゃん。これどうするのよ」
これとは撃破されたホーンラビットだ。
結局、もくもくと立ち上っていた黒煙は収まったけど、どう見ても修理不能なほど破壊されている。
エンジンに直撃したんだから当然か。
弾薬や燃料に引火して爆発しなかっただけいい。
ミウが敵の3型戦車を指さして言った。
「ケンさん、あのキャタピラが破壊された敵戦車を修理すれば、乗って帰れるんじゃないですかね?」
「ミウ、あの戦車は俺達の獲物じゃないから無理だよ。見てみろよ。あの嬉しそうにはしゃぐハンター達。あいつらの戦利品だよ」
キャタピラを破壊された50㎜砲装備の3型戦車には、セメトン戦車の搭乗員が嬉しそうに取り囲んでいる。
彼らが仕留めた獲物だ。
するとミウがさらに違う方向を指さす。
「それじゃああっちの戦車はどうなんですか?」
ミウが指さす戦車は味方の2型戦車だ。
敵弾によって砲塔装甲を貫通されてしまった戦車。
生き残り搭乗員も機関銃掃射でなぎ倒された戦車だ。
そういえば敵戦車は基本撃破したハンターに所有権が発生するんだけど、味方戦車が撃破されて所有者がいない場合は……
俺は走り出した。
話の途中に走り出した俺に、ミウとエミリーがキョトンとした様子で俺を目で追う。
俺は2型戦車の上に飛び乗ると両手を上げて声を張り上げた。
「この戦車は俺が一番に手を付けたからな!」
それを見た他のハンター達の文句が聞こえてくる。
『死肉喰らいのハイエナめ』
『この状況でよくあんな行動とれるよな』
『うわっ、でた。空気読めないやつ』
荒野で放置された所有者がない車両や物品の場合、見つけた者に所有権が発生するというルールがある。
現在の2型戦車の搭乗員は全滅して誰もいない。つまり荒野で放置された所有者がいない車両という訳だ。
だから俺は所有権を主張したに過ぎない。
でも壊れて動けないなら意味がない。
牽引していく手段もないからね。
でもそこは俺の期待と予想に掛けた。
2型戦車は確か砲塔に1発喰らって搭乗員が逃げ出した。
車体本体への被害は少ない予想。特に動力系統と操縦機器は意外と無傷ではないかと。
この場で修理できれば乗って帰れる可能性もあるんじゃないかと。
所有権を主張して動けなかったとしてもそれはまた放置しておくだけだ。
特に俺に損はないよね。
ただし周りの目を気にしなければの話なんだが。
エミリーとミウにも周りのハンターの声が聞こえたらしく、非常に罰が悪そうな表情をしている。
所有権を主張したのち、俺は早速2型戦車内を調べるためにまずは機関銃で撃たれたハンターにどいてもらい、丁寧に地面に寝かす。
そして再び砲塔の上に上りハッチから砲塔内を覗く。
砲塔にはハンターが1人帰らぬ人となっていた。
被弾したときの破片が頭に突き刺さっている。
俺は小声で「すまん」と言いながらその死体を車外へと引っ張り出し、機関銃で撃たれたハンターの隣に寝かす。
そして近くまで来たエミリーとミウに埋葬するように言って、俺は戦車内へと入っていく。
車内は俺が予想した通りだった。
砲塔は砲弾が直撃したのだから使えるようなものなどほとんど残ってはいない。
しかし逆に車体には被害がほとんどなかった。
無線機が無傷なのがうれしい。
どうやらこの戦車は3人乗りらしいのだが乗員は2人しかいない。
3人目は無線手みたいだが、乗っていなかったようだ。
無線手はいなくてもなんとかなるからな。
現に俺達は無線すら持ってなかったし。
操縦装置に異常もないようだ。
エンジンルームを確認したが特に問題はない。
ということは、もしかしてエンジン掛かるんじゃねえか。
恐る恐るエンジンを掛けてみる俺。
「こいつ……動くぞ!」
なんとエンジンがかかったのだ。
俺はハッチから顔出し、エミリーとミウに声を掛ける。
「エミリー、ミウ。これ動くみたいだからこれに乗り換えるぞ」
簡単な埋葬を終えた2人が若干いやそうな表情で戦車に乗ってくる。
そりゃそうだ。味方のハンターの死体があった戦車だ。
でも文句は言ってられない。
乗り物がないのは商売に影響するからね。
エミリーは操縦席へ、ミウは無線席へと座る。
俺は死体があった壊れた砲塔ハッチに腰掛ける。
砲弾が貫徹した砲塔にはひびが入っていて旋回することもできないし、当然のことながら武器も使えない。
ホーンラビットよりは完全装甲されている分、安全性が増したけど武器がない。その代わりに今回は無線機がある。
それほど良い性能ではなさそうだが、これで味方戦車同士の連絡ができる。
少なくとも帰れる可能性が増えたということはでかいメリットだ。
あと武器さえ使えればなあ。
でも砲塔自体もそうだが、砲塔内にあった20㎜砲と同軸機関銃も結構な度合いで破壊されているし。
修理は無理そうだよな。
そんなことを考えているうちに生き残った護送部隊は出発するのだった。
次話投稿も明日の予定です。
書き貯めが底をつき始めてきました。
ちょっと頑張ってみます。
明日もどうぞよろしくお願い致します。




