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4話 装甲車収得






 俺達が乗って来た車は道の脇ですでに廃車状態。

 それに金がない俺の車には無線機などという高級品は積んでない。

 護衛の装甲車と軽戦車はすでに鉄くずと化している。

 護衛するはずの輸送トラックは俺達を置いてすでに逃走。


 つまり俺達は助けを求める連絡もできないから、歩いて帰るしかないってことかよ。


 せっかく対戦車砲を手にしても、持って帰れないなんて悔やみきれない。


「これどうすんのよぉ」


 エミリーが腕を組みながらあごで対戦車砲を指し示すのだが、その前にどうやって休憩所か街まで帰るかの方が重要だ。

 若い女を連れて街道上を歩いてなんかいたら、魔獣の餌になるか盗賊集団の恰好かっこうの的となる。

 俺が言うのもなんだが、妹のエミリーは年齢よりも上に見らて美人さんだ。

 そんな可愛い妹に街道を歩かせるなんて絶対に駄目だ。


 運よく他の輸送トラックが通りかかっても、高い料金を吹っ掛けられる。

 それだけで有り金が全部吹っ飛ぶ。

 下手すりゃエミリーに色目を使われて、それまた厄介な事件に発展する可能性もある。

 仮に軽戦車や輸送トラックが無線で救援の連絡を送ることが出来たとして、すでにトラックは強奪されている状況だ。

 恐らく護衛失敗の俺達は救出されずに放っておかれるか、やはり救援に高い金額を吹っ掛けられるのが落ちだ。


 非常に困った状況だ。


 溜息をつきながらふと対戦車砲を見ていて疑問が湧いた。

 その疑問を素直にエミリーにぶつけてみた。


「なあ、この対戦車砲ってどうやってここへ持ってきたと思う?」


 エミリーは首を傾げて一言。


「さぁ?」


 牽引用の車輪はついているから車か馬車で引いて来たに違いない。


「エミリー、この辺の茂みを探そう。どっかに乗り物が隠されてるかもしれない!」


 エミリーは「はっ」とした様子で直ぐに行動に移った。


 小さなものじゃないから探せばすぐに見つかるはず。


 案の定、10mほど離れた場所からそれは見つかった。

 対戦車砲の車輪痕をたどったのだ。


 意外と丁寧に偽装されたそれは、まだ真新しいキャタピラ式の装甲車だった。

 装甲車と言っても小型の野砲や弾薬を運搬するトラクターであって、決して最前線での戦闘用に作られた訳ではない。


 しかし対戦車砲を牽引して街まで帰れる乗り物には変わりはない。


「よっし! これで帰れる上に前乗っていたのより全然良いものが手に入ったぜ。ラッキー!!」


「それじゃあお兄ちゃん、ゴブリンの持ち物を物色するわよ。積めるだけそれに積むよ」


 俺達は掩蔽壕えんぺいごうの中から金になりそうな物を物色しだす。ワインか何かの木箱がいくつかと、数丁の拳銃と弾薬と砲弾各種。

 食料や盗んだであろう装飾品の数々を手に入れた。


 そしてそれらを装甲車に積み込むと、37㎜対戦車砲を牽引しながら街道を走り出した。


 全長4m弱、幅2mほどのキャタピラ式の装甲トラクターといったところか。

 オープントップ式で上面装甲はなく、天井さえない。雨が降ったら悲惨だな。

 でもこの車体なら小銃くらいなら耐えられるし、キャタピラなので不整地にも強い。


「ねえ、ねえ、お兄ちゃん。あの対戦車砲を売ったら幾らになるかな」


「たぶん大して金にならないと思うよ」


「ええ~、なんでぇ~」


「対戦車砲なんてな、待ち伏せや防御用の大型武器だろ。そんなのを欲しがる奴らは軍隊か街の防衛隊くらいだよ」


「ええ~、ハンターとかに売れないかなあ」


「魔獣を待ち伏せか? これで? 動き回る魔獣にこれじゃあ弾を当てられないだろ。それに居場所がバレても移動できないんだぞ。こういう待ち伏せ兵器は複数で待ち伏せるもんだからな」


「そっか~、残念。さすがお兄ちゃん詳しいね。それじゃあこの装甲車はどうするの」


「これは売らないで俺達で使おうぜ。ちょうど車が廃車になったばかりだし都合がいいってもんだよ。これでも一応装甲車だしな」


 この手に入れた装甲トラクターというか牽引車というか運搬車なんだが、俺達みたいな低ランク護衛が乗るものではない。

 もうちょっと高ランクの護衛が乗るものだ。

 実は俺達の今の収入では維持費も辛いかもしれない。

 バリバリの戦闘用装甲車じゃないからギリギリいけるんじゃないの的な考えだ。いざとなったら売ればいい。


 ちなみに護衛要員には5段階のランクがある。

 護衛といってもランク呼称は『ハンター』となる。


 一番低いのが5等級となる。

 ハンターランク5等級、エミリーがそうだ。


 そして4等級、3等級と上がっていく。


 俺は4等級だが、この等級だと良くて車が所持できるか大抵はバイクを所持している。サイドカー付きのバイクなんかもかなり出回っているかな。

 3等級くらいになってくると装甲車や軽戦車に手を出し始め、2等級では中戦車や重戦車に乗り始める。


 まあ、中には初めから装甲車や戦車に乗ってる奴らもいるが、それは金持ちや貴族出身で、なんかしらの問題を抱えて護衛に落ちぶれた連中だ。


 4等級以上なると護衛だけではなくて、魔獣ハンターとしての仕事にも手を出す者がほとんどだ。

 といっても個人行動じゃなくてチームを作っての行動だけどね。


 魔獣から獲れる素材は金になる部位もある為だ。

 ま、ゴブリンも角を持って行けば討伐部位として金を貰えるんだが、非常に安い。

 稼ぎの良いハンターなんかはゴブリンの角は見向きもせずに放置する。

 その放置された部位は低ランクの奴らがこぞって奪い合う。

 俺もガキの頃はそれをやった1人だ。でも今はやらないよ。だってエミリーに「はずかしい真似しないの!」って怒られちゃうからね。


 そして1等級ともなると魔獣狩や盗賊狩に賞金首狩が主な仕事となり、護衛の仕事が少なくなってくる。手に入れた戦車の性能や腕によっても変わってくるが、護衛の仕事の収入よりは実入りは格段に良い。 

 有名なハンターになってくると、戦車隊を率いてゴブリンの砦を襲撃したり、オークのコロニーを襲ったりするらしい。


 そうなると収入も莫大だ。

 特にオークは重武装な場合もあり、強敵だが倒せればその重武装が手に入る。

 つまり金になるってことだ。


 1等級のハンターは俺達兄妹の憧れでもある。


 いつの日に1等級となって有名なハンターになるのが俺達の夢でもある。







5話は明日投稿します。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
鹵獲した37㍉PAKを牽引したのは、カーデンロイド豆タンクではなく、ユニバーサルキャリアーだと思われます。 ケン氏が突撃兵からタンク乗りにジョブチェンヂする、節目のエピソードでしょうかね。
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