39話 潜伏
短めです。
台風が凄いです。
皆様もご注意ください。
俺はエミリーがいう「なんか変」の意味を考えた。
ゴブリン製の地雷が埋められているのにゴブリンの待ち伏せがいない。
これは普通に考えたらおかしい。
ゴブリン製の地雷が仕掛けられているということは、ゴブリンの待ち伏せがあることにほぼ間違いはないはず。
地雷で停止した輸送部隊を襲うのは典型的なゴブリンの襲撃方法だからだ。
ここのところ、それ以外での話を耳にしたことはない。
ここは街道だ。
車両の行き来はそれなりにある。
にもかかわらず生きたゴブリン製地雷があるということは、仕掛けられて間もないことを意味する。
ということはゴブリンがいないのはやはりおかしい。
もしかして何らかの理由があってどこかに隠れているとか。
俺は周りを見渡す。
背の低い草が生い茂る野原である。
ん?
あれなんだ。
俺はホーンラビットを降りて歩き出す。
「お兄ちゃん、どこ行くの」
エミリーが声を掛けてくるが「ああ、ちょっとな」と言って街道から離れて草原の方へ進む。
なんか周りの景色との違和感を感じたんだよね。
ある一角になんだけど。
俺はその違和感の前で立ち止まる。
丁度、路肩部分から草原に変わる辺り。
でもこの部分だけ地面の色が変わっている。
何か上から土を被せた後のような。
俺は足を使って地面の土を削ってみた。
何かを埋めた跡なのか土がまだ柔らかいままだ。
ってことはまだ時間が余りたっていないってことだ。
するとそれはすぐに現れる。
それを見た途端、俺は咄嗟に大声で叫びながらしゃがみこんだ。
「全周警戒!」
すると俺の叫ぶのとほぼ同時に草原の奥の方から銃撃が始まった。
俺が見つけたもの、それは緑色の肌をした手だった。
そう、そこにはゴブリンの死骸が埋められていたのだ。
しかし思った以上に銃撃は弱い。
敵は2~3人か。
初めは俺めがけて撃っていたのだが、味方ハンターからの援護射撃が始まると、俺への射撃はなくなった。
それをいいことに俺は少しだけ敵を確認しようと中腰で覗いてみる。
人間だ!
ゴブリンかと思ったら敵は人間だった。
人数は2人ほどか。
その内の1人が撃たれたのか、もう一人が引きずって後退しようとしている。
でも逃げるところなんてない。
周りは草原で隠れるところは所々に岩があるくらいだ。
敵兵は近くにあったかろうじて2人が隠れられるほど岩の後ろに身を隠す。
しかし戦車からしてみれば標的が大きくなったに過ぎない。
その岩めがけて味方が戦車砲を撃ち放った。
するとその爆風で岩もろとも敵の2人も吹っ飛ばされる。
俺達の37㎜砲のような豆鉄砲ではない。
味方戦車の75㎜砲だ。
勝負あったな。
俺は拳銃を構えながらゆっくりと倒れた敵に近づく。
砕けた岩の側に来ると敵2人が血だらけで倒れている。
周囲を警戒するがやはり敵は2人だけのようだ。
残念ながら敵2人に息はない。
俺が味方に手を振って終了したことを伝えると、死体を調べに隊長達が数人で近づいて来る。
そして、人間の死体を見るなりこう言った。
「アベンジャーズのメンバーだな」
それはミカエ達の率いるメンバーの内のひとり、つまり賞金首の10人のうちの2人ということだ。
そういえばハンターのような格好をしている。それも戦車乗りっぽい。
戦車に乗っていればもっと強かったんだろうね。
戦車から離れたお前たちの判断ミスだな。
俺はそのあとゴブリンの死体の場所を隊長に見せる。
すると隊長。
「潜伏していたアベンジャーズに、ゴブリン製地雷と埋められたゴブリンの死体。どうなってんだよこれは」
隊長の言う通りで、俺にも全くわからないこの状況。
これは怪傑エミリーたんを呼んでこよう。
俺はエミリーにゴブリンの埋まった場所、アベンジャーズが隠れていたことなどを説明した。
エミリーは状況を把握して考え込む。
頭の良いエミリーならなんとか答えを導き出してくれるだろう。
胸を強調するかのように腕を組んで、人差し指を顎に当てて考えている。
その姿、くっそ可愛いじゃねえか。
やっぱ俺の妹は世界一だな。
そして名探偵エミリーたんが出した答え。
「お兄ちゃん、わかったわよ」
「そうか、それでどうなんだ?」
「隊長に賃上げ交渉しましょう」
そこかよ!
次話は明日投稿予定です。
明日もよろしくお願いします。
 




