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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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32話 橋






 川の上流から10数隻の小舟が向かってくる。


 船には武装したゴブリンが多数乗り込んでいた。

 それに半数ほどの舟には小口径ながら37㎜砲や47㎜砲といった速射砲を搭載している。

 見た感じ古ぼけた漁船っていう感じなんだが、あれであの砲を撃てるのか?


 部隊はすぐに護送車両の防御隊列を組む。

 隊長車両から無線で指示が送られるのだが、俺達の戦車には無線が積んでいない。

 それで信号用の旗が隊長車両におっ立つのを確認してから俺達は行動する。

 そのためかなり行動が遅れちまう。


 2車線道路の大きな橋なので、右側車線を護送車と装甲兵員輸送車が走行し、それを防御するように左側の車線を装甲車や戦車が走る。

 要は戦車と装甲車が盾になる隊列だ。


 ただ、俺達は常に側面を敵に向けながらの走行。

 若干弱い側面装甲をさらしながら戦闘をしなくちゃいけないってわけだ。


 でもかなり速い速度を出している横移動の標的に、川の流れの揺れの中から弾を当てるのはかなり難しいはずだ。

 いや、狙って当たるもんじゃないと思うぞ。


 橋のトーチカから川へは速射砲で攻撃できないようだ。

 構造上の問題なのか、川へは砲身が向けないみたいだ。

 代わりに機関銃で掃射している。


 ゴブリンの舟からはかなり激しい攻撃がくるのだが、ゴブリンの速射砲は全然当てられる気がしない。

 ほとんどが明後日の方向へと飛んでいく。


 かといってこちらの攻撃もなかなか当たらない。

 やはり走行しながらの射撃で標的も動くとなると、命中させるには相当の腕が必要なのだ。

 それでも戦車砲の至近弾により、時々安定を失ったゴブリンの舟が転覆したりしている。


 ミウが変なことを口走る。


「あの、またおまじない掛けてもいいですか?」


 ミウはまだ命中の魔法がこの37㎜砲に掛かると思っているのかな。

 でも魔法じゃなく、おまじないっていうならそこんとこ本人も理解してるのかな。

 

「ああ、ジンクスみたいなもんだろ。好きにしていいよ」


 俺は榴弾を装填しながら答えた。

 すると嬉しそうにミウは命中の魔法を行使した。


「撃ちます!」


 魔法をかけてのミウの1射目だ。


 もうだいぶ聞きなれた発射音を残して砲弾が飛んでいく。


「え、まじかよ!!」


 俺の声に戦車操縦するエミリーが反応する。


「何? どうしたのお兄ちゃん」


「ミウが当てやがった……」


 47㎜砲を装備している小舟に37㎜砲弾が直撃して川の中へと沈んでいく。

 乗っていたゴブリン達は泳げないのか、船と一緒に沈んでいく。


「め、命中しましたね。ケンさん、次発装填お願いします!」


 ミウの言葉に我に返り、慌てて砲弾ラックから榴弾を取り出す。


「ミウ、もしかしてさ、命中の魔法がやっぱ効いてるんじゃないかな」


「はい、私もそんな気がしてきました」


 敵からの銃弾が時折ホーンラビットの側面装甲を叩く。

 そのたびにオープントップ式のこの戦車は乗員に恐怖心を仰ぐ。


「くそ、いいぞ、装填完了。吹き飛ばせ!」


「はい、ぶち込みます!」


 ミウが37㎜砲の引き金を引くと、発射された砲弾は一番先頭を進むゴブリンの舟に命中した。


「すっげえ、また当てやがった。でもさ、砲弾の軌道が少し曲がったような気がするんだけど俺の勘違いか?」


「えっと、私は気が付きませんでしたけど」


「それならいいよ。でもこれは凄いぞ。大型兵器にも効く命中魔法なんて聞いたことないからな。よし、どんどん命中させていくぞ」


「はい!」


 しかし3射目は大きく外した。

 俺が見た感じでも砲弾の軌道は曲がらなかった気がする。

 魔法の持続時間が短いのかもしれないな。


 至近弾でも相手が船なら転覆もあり得る。

 それを期待して俺は次弾装填を急ぐのだが、そこへゴブリンから放たれた弾丸が37㎜砲の防楯を当たり嫌な音を立てる。

 小銃弾だったようで防盾にへこみを残して跳弾していった。


 あっぶねえ!

 防盾なかった俺に命中してたじゃねえか!


 ちょっとだけビビってしまった俺は、そこから常に中腰姿勢になったのは内緒だ。

 ただ、エミリーに「またエッチな事考えてるんでしょ」って言われて笑い返すしかできなかった。

 そっちの意味で腰が引けてると妹に思われるのもどうなのかとも思ったけど、沈黙を貫いた俺はかっこいいと思う。


 結局俺達護送部隊は全く被害を出すことなく、橋を渡りきることができたのだった。


 橋を渡り切ってすぐ、俺は疑問に思ったことを口にする。


「もしかして撃沈したゴブリンの舟の戦利品なんか回収できないよね」


 エミリーが答える。


「当り前じゃないのよ。だから他の戦車はせいぜい機関銃を撃つだけで、むやみに戦車砲の無駄弾を撃ってないでしょ。私たちもライフル銃か機関銃でよかったのよ。この戦いだけを考えたら赤字よ、赤字」


 調子に乗りすぎたか。

 でもミウの魔法の検証の先行投資と考えよう。


「あとさ、人族ミカエの護送になんでゴブリンばっかが襲ってくるのかね。ミカエの仲間が救出目的で襲ってくるんだったら人族のはずだろ。でもゴブリンばっかだよね」


 ミウが答える。


「私もそれ疑問に思ってました。もしかしてミカエさんに倒されたゴブリン達の仲間が、復讐として襲ってきたんじゃないでしょうか」


「そうか、それも考えられるな」


 続いてエミリーが言葉を挟む。


「それとゴブリンを雇って襲撃をさせたか。それともその両方ってこともありうるわよね」


 ゴブリンの復讐とミカエの仲間の救出か。

 ああ、面倒くせえ。


 どっちにしろ襲撃はまだ続きそうだった。





次話は明日投稿予定です。


明日もどうぞよろしくお願い致します。

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