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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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28話 元エースの復讐






 その戦車はある日ホクブ兵器産業の本社ビル前に突然現れた。


 真っ黒に塗りつぶされた車体。車体側面には白くドクロの絵が描かれていた。

 ミカエが新しく乗り換えた6型戦車である。


 ビルを護衛していたモデル4シーマン中戦車5両は、あっというまにミカエの乗る戦車に撃破されてしまった。

 しかしミカエの戦車もただで済まなかった。

 ビルを護衛していた戦車搭乗員は、そこそこ精鋭の部隊だったからだ。

 相当数の砲弾を車体に受けており、ところどころの装甲に亀裂が走り、戦車はボロボロ状態だった。


 そして残った砲弾の全弾をビルに叩き込んだ。ミカエはビルが倒壊するのを確認すると、何処いずこにか消えて行った。


 まさに伝説の人物だ。


 それからというもの、あちこちのホクブ兵器産業の工場や輸送トラックが何者かに襲われ、それはすべてミカエ達の盗賊団と判断された。

 実際は便乗した盗賊も多数いたのだが。

 そしてミカエ達に多額の賞金がかけられる事となる。

 戦車エースと言われた人物が一気にお尋ね者となったのだ。


 そうなると名を売りたいハンター達がこぞって彼女を狙うようになる。

 しかし仮にも戦車エースとも言われた凄腕の元ハンターだ。


 そう簡単にはいかなかった。


 だが、そんな彼女にもとうとう年貢の納め時がきた。


 多数のベテランハンターが強力しての、大々的な捕獲作戦が実施されたのだ。

 もちろんホクブ兵器産業が莫大な金を投資しての作戦だった。

 その作戦は彼女が戦車から降りた時を狙ったものだった。


 そして遂にはミカエ・ビトマは捕まり、街の留置場へと一時預かりとなった。


 今回、そのミカエと協力者、つまり仲間である戦車搭乗員を王都の刑務所へと移送するという事だ。

 その護送任務の募集に、一目ミカエを見ようという目的のハンター達が詰めかけた。

 止むを得ず、抽選でその依頼を選別することになり、見事その依頼を我が妹がゲットせしめたのである。


 そして現在、俺達は隊列を組んで走行中である。

 先頭には偵察装甲車1両、その次に戦車3両、中央には護送車と装甲兵員輸送車が1両づつ、そして一番後ろの集団には俺達を含めた戦車が3両。

 ちょっとした軍隊並みだな。


 俺達の車両は後続の3両の中でも一番後ろだ。


 オープントップ式で周りがよく見えるからって事で、隊列の最後尾で偵察を担う事となったのだ。


 前回のゴブリン討伐の実績が認められたのかもしれない。

 俺の勝手な想像だけど。


「後方から大型魔獣接近中だ。ありゃあ、ジャイアントボアだな。ミウ、榴弾を装填するから頼むぞ」


「はい、任せてください」


 時折こういった魔獣が出現する。

 というのもこれだけの規模での隊列を組んでの走行だ。街道なんて走ろうもんなら、簡単に道筋を予想されて罠を仕掛けられる。

 ミカエ・ビトマの仲間や彼女を信奉するハンターが以外に多く、脱走を企てる可能性があったからだ。

 それを避けるためにも時折街道から外れて道なき道を進むこともある。

 そうなると罠は仕掛けられないけど魔獣に遭遇する。

 でもよほどの魔獣でない限りこれだけの戦車だ。

 追っ払うだけなら簡単な行為だった。


「おっし、榴弾装填完了。外しても追っ払えればいいよ」


 ミウが鼻息も荒く答える。


「何言ってんですか、当てますよ!」


 そして榴弾が飛ぶ。


 しかしミウの射撃は期待通り見事に外した。

 榴弾は迫りくるジャイアントボアの前方に着弾して破裂した。


 ミウが申し訳なさそうに言う。


「すいません。ビックマウスって言ってもいいです……」


 ただ、俺が言った“外しても追っ払えればいいよ”の言葉通り、ジャイアントボアは顔面に受けた爆風と破片に怯んだのか後を追ってこなくなった。


 こんな戦闘が何度となく繰り返される。


 そして暫らくして再び街道に戻り、まともな道路を走りだす。


 街道には武装された中継所や休憩所がところどころに構築されていて、そこで

街道を走るトラックやバスなどの運転手が、体を休めたり燃料を補給したりする。

 もちろんハンター達も大いにそれを利用した。


 ちょうどお昼の時間を過ぎた頃、俺達の護送部隊も中継所に到着した。

 その中継所はまるで要塞のような作りだった。


 出入口は2か所で検問が設置されていて、周りは外壁で覆われているうえに、鉄条網まだ張り巡らされている。

 ところどころには機関銃座や砲座が設置されていて、魔獣の群れにも対抗できるだけの防備だった。


 俺達はこの中継所で1時間ほど休んでからの出発となる。

 燃料補給に簡単な昼食を済ませることになった。


 売店で買ったオレンジジュースとミートサンドが今日の俺達の昼食だ。


「なんか値段の割に大したことないね、これ」


 エミリーが食べかけのミートサンドを見ながら不満そうにつぶやく。

 するとミウもそれに同意する。


「はい、私もそう思います。それにこの“俺ん家ジュース”もただの薄いみかん水ですし」


 いや、オレンジジュースだから。

 似てるけどな。

 こんな街から離れたところでの飲食物なんてこんなもんだろう。

 期待しちゃいけないね。


 携行食糧よりも格段にうまいと考えれば、このまずいはずのミートサンドもそこそこ美味しく感じてくる。

 俺はとっととそれを胃袋の中に収めると立ち上がる。


「ちょっとトイレ行ってくる。2人も食い終わったら済ませておけよ」


 おそらくここを出たらしばらく休憩はない。

 時間があるときに食事とトイレは終わらせるのがハンターの鉄則だ。


 俺は1人この要塞の隅っこにあるトイレへと向かう。

 簡易トイレとあって臭いが結構漂ってる。

 そのためか、建物から結構離れた場所に掘っ建て小屋のようにぽつんとあった。


 俺が近づいていくと、なぜか小屋のすぐ横の地面が動き出した。

 それはまるで地中にモグラでもいるかのような動きだった。



 


次話投稿は明日の予定です。


明日もどうぞよろしくお願い致します。






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