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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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24話 勝利



 



 車体を揺さぶる衝撃を残して37㎜砲弾は放たれた。


 それは真っ直ぐにブレタン戦車の転輪に吸い込まれた。


 着弾して爆発が起こり、ブレタン戦車の右側転輪の一個が弾けて割れる。

 その衝撃でキャタピラが切断された。


「やったぞ、ミウ。よしエミリー、後ろに回り込め。後面装甲をぶち抜いてくれる」


 俺はかつてない速さで徹甲弾を装填する。

 今の装填速度は世界選手権があれば金メダルだな。


 エミリーの操縦もだいぶ慣れた感じで、ひょいひょいとブレタン戦車の後方へと回り込む。

 ブレタン戦車というとまだ砲塔に絡まった倒木に悪戦苦闘して動けない。


 そしてエミリーは俺の指示がなくてもピタリと標的の真後ろで車両を停止させる。

 そして後方にいる俺達に向かって一言。


「ミウ、お兄ちゃん。ブ・チ・か・ま・せ!!」


 距離にして数メートル先で、ブレタン戦車が俺達にケツを向けてまごまごしている。


 外しようがないこの距離で照準眼鏡を覗くミウ。

 その横顔には誰が見ても解るほどの笑みが漏れていた。


「ふふ、撃ちますよ!」


 なんかハイテンションじゃね。


 ミウが引き金を引いた。


 あれ?

 どうした?

 何故か敵戦車に変わりはない。


 エミリーがつぶやく。


「あれれ。お兄ちゃん、砲弾どこ飛んだの?」


 顔から血の気が引いた気がした。


「くっそお、不発だ」


 俺は危険な行為とわかって無理やり砲弾を排莢させる。

 本当は不発弾を取り除く時は慎重にやらないといけない。

 不発に見せかけて実は……って場合もあるからだ。

 遅発って現象だね。


 でもそんな事よりも、目の前の敵戦車の方が脅威なのだ。


 新しい徹甲弾を装填しようと砲弾ラックに手を掛けると、ブレタン戦車のハッチが開き始める。

 そして車内から次々に搭乗員のゴブリン達があふれ出てくる。


 俺は砲弾を取らずに短機関銃を手にして、ブレタン戦車に威嚇射撃をした。


 短機関銃の弾丸が装甲板に弾かれる音が盛大に響く。

 その音がゴブリン搭乗員に恐怖心をあおる。


 1匹のゴブリンが俺の威嚇射撃にも屈せずに戦車から飛び降りた。

 そして森へ向かって走り出す。


 俺は落ち着いてその後ろ姿に銃口を向ける。


「逃げられると思ったのかよ」


 そうつぶやきながら引き金に指を掛ける。


「逃げられないわよ、風刃!」


 エミリーが放った風刃の魔法が、逃げるゴブリンの背中を切り割く。


 もしもしエミリー?

 また美味しいとこ持って行く気かよ!


 逃げるゴブリンを魔法で切り割いた事により、残ったゴブリン3匹は観念したようだ。


「なあ、エミリー。お前さっきからずっこくね?」


「ミウ、そいつらを縛って。確か別件でゴブリン生きたまま捕獲すると1匹に付き800シルバだったわよね。ほら、お兄ちゃんもぼやぼやしてないの!!」


「おお、そうか。そんな依頼もあったな。まだ間に合うのかな――っておい!」


 そんな会話の最中、遠くへ逃げていた銀牙のトラックが戻ってきた。


 リーダーのサキがまず謝罪を申し入れてきた。


「ケン、自分達だけ逃げてしまって済まなかった。このとおりだ」


 サキが深々と頭を下げるのに合わせて、正式メンバーであるシンセも頭を下げてきた。

 しかしカト、ヤマイ、ユリカの3人は、自分達には関係ないと言った様子だ。

 まあしょうがないか。臨時のメンバーだしな。

 それに対戦車武器を持たない彼らは逃げるしかなかったしな。


 そこでふと思い出した。


「あ、そういえばシャークスのメンバーはどうなったんだ?」


 俺の言葉に全員が一斉にシャークスの戦車に視線を移す。


 視線の先にはちょうど砲塔のハッチから、金髪リーゼント野郎が苦しそうに這い出してくるところだった。

 しかし俺達の視線に気が付いた途端、何故か手を滑らせて「ふげっ」とハッチに顔面を強打して、再び戦車内へと消えていった。


 この場に及んで笑いを取りにきたのか?


 カトとヤマイが面倒臭そうにシャークスの戦車に近づき、カトが車内を覗き込み声を掛ける。


「大丈夫か。負傷者はいないか。いなければ出発するぞ」


 すると顔面を赤くした金髪リーセントが再び這い出してきた。


「ああ、ちょっと衝撃で気絶しただけだ。こっちは全員無事だ……それで、敵の戦車はどうなったんだ」


 カトが経緯を説明する。

 すると納得がいかない様子の金髪リーゼント。


 ま、自分達がやられて何もできなかったのに、俺達がいいとこ全部持って行ったのが気に喰わないんだろうね。


 知ったことか!


 俺は遠くから金髪リーゼントを糞転がしを見る目で見てやった。


 すると俺の視線に気が付いた糞転がしが中指をおっ立てて見せる。

 その瞬間、倒れかかっていたもう一本の木が、金髪リーゼントの頭の上に倒れた。


 「ふごっ!」と小さく叫んで三度みたび車内へと消えていった。


 あ、俺って神に守られてんのかも。


 こうしてゴブリン盗賊拠点の攻撃は終わるのだった。

 というよりまたゴブリン戦車に遭遇する前に帰路につきたかったのだ。






 

設定資料


ソローリン戦車

乗員:2名

装甲:6~15㎜

最高速度:48㎞

武装:2連装6.5㎜機関銃、もしくは20㎜砲


ゴブリン製の小型戦車

砲塔は持たず武装は車体前面に装備している。

20㎜砲装備のタイプは数が少ない。

さらに20㎜砲を20㎜機関砲タイプに換装した車両も確認されている。






次話は明日投稿予定です。

明日もどうぞよろしくお願いいたします。





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