22話 討伐と遺恨
トロルが倒れた瞬間にエミリーが声を上げる。
「やったわ。私、トロルを倒したわよ!」
いや、私達だろ。
『達』が抜けてるぞ。
「エミリー、そのまま奥へ前進」
戦車を洞窟の奥まで前進させる。
枝道があるのかと思ったのだが、そんなことは無かった。
最奥部はこのトロルの寝床だったようだ。
あとはトロルの武器らしい爆薬付きのでかい槍がたくさん置いてあるだけだ。
これは使われなくて助かったな。
他に金になりそうな物だと、寝床として使ってたらしいでかい毛皮があるのだが、あまりにも臭い。
でも巨体のトロルが使うでかさの毛皮だから、相当巨大な魔獣の毛皮なんだとは思う。
売れれば高い値がつくんじゃないだろうか。
でもやっぱり臭いんだよ!
エミリーは言う。
「臭くても持って帰るのよ。お兄ちゃん、早く回収して。それとトロルの牙もそこそこお金になるから回収してね。急いでね」
はいはい、人使いが荒い妹様だね。
ミウにも手伝ってもらい、毛皮と牙を回収。
すぐにこの洞窟から脱出する。
急がないとシャークスと銀牙に、残ったお宝を持って行かれちゃうからね。
俺達は洞窟の入り口まで戻ってくるとすでに戦闘は終わっていたようで、シャークスと銀牙のメンバーが広場中央で集まっていた。
ああ、遅かったかあ。
こりゃあ、お宝持って行かれただろうなあ。
一応取り決めだと、盗賊がため込んだお宝は山分けなんだけど、各チームが破壊したり倒したものはそのチームに権利がある事になっている。
それで山分けの話になったんだけど、盗賊のお宝は別に問題なかった。
しかし俺達が破壊したソローリン戦車の権利に横槍が入った。
金髪リーゼントの奴ら、シャークスのチームからだ。
奴らの言い分では、自分達も攻撃に参加したんだから少し分け前をよこせっていう事だ。
その証拠にシャークスの35型戦車が射撃したという、37㎜砲の砲弾痕があるはずだと言う。
いや、俺らの主砲も37㎜砲なんだけど!
そんなもんどっちが撃ったか判断つかないだろ。
とりあえず破壊されたソローリン戦車に俺達とシャークスメンバーが集まる。
俺達は2発射撃して2発とも命中している。
その命中箇所もはっきりと覚えているから、ここだと指差して指摘してやった。
すると以外にも、金髪リーゼント野郎がそこは認めたのだ。
そのかわり自分達が撃った砲弾はここに当ったと指差した。
そこはキャタピラ部分だった。
確かにキャタピラは破壊されている。
よくよく調べると、地面に喰いこんで変形した徹甲弾が見つかった。
俺は正直「本当かよ?」と思った。
「俺達が破壊したあとに撃ったんじゃねえの」って思ったよ。
だって奴らは洞窟内へと、主砲と同軸の機関銃で射撃してただろ。つまりは砲塔を旋回しないとソローリン戦車へは射撃できないって事だ。
砲塔を旋回してたところなんて見てないぞ。
でもさ、その証拠もない。
今あるのは砲弾痕が3つと破壊された敵戦車があるだけだ。
それだけだと砲弾を当てた者同士での話し合いとなるのが通例だ。
それと炎上してしまった戦車に価値などない。
ゴブリン戦車といえども修理すれば動かせる程度であれば金になる。
でも今回は完全破壊だ。
修理不能だった。
残る手段は討伐報奨金だけだ。
それもゴブリン戦車の討伐報奨金というのは、耳にしたことがないから払われるかも謎だ。
とりあえず破壊した証明にと、ハンター協会で借りてきたカメラで写真は捕ったけどね。
どうせ支払われてもはした金だろうと思う。
そのはした金にも関わらず、いちゃもんつけて持っていかれるかと思うと腹が立つ。
なんか横取りされている気分だよな!
なんか悔しい!!
ハンター協会への持ち込み事案として、協会が仲裁に入って話し合いでもいいのだが、それだと協会に手数料を持っていかれる。
安い金額のうえ手数料まで掛かるとなると意味がない。
そう考えると自分達の話し合いで決めるしかなかった。
結果、報奨金の20%で決着がついた。
当然話し合いの結果も俺は納得がいかない。
さすがにエミリーはキレ掛けていたけどなんとかなだめた。
こんなところでスイッチ入られると厄介だからな。
こうしてシャークスの奴らとはさらに遺恨が残る事になるのだった。
設定資料
トウブ回転式拳銃
口径:9㎜
弾数:6連発
銃身長:12㎝
広く出回っている中折れ式のリボルバー拳銃。
ダブルアクションのみの撃発機構なため、命中率はあまりよくない。
しかし安価なため低ランクのハンター達の間では護身用の拳銃としてよく見かけられる。
次話投稿は明日の予定です。
明日もどうぞよろしくお願いいたします。




