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2話 ゴブリン遭遇戦

短めです。





 砲弾は護衛の味方軽戦車の前方機関銃を破壊して装甲を貫通。

 そのまま戦車内へと砲弾は飛び込んだ。


「くっそ、あの戦車乗員は素人か!」


 俺がそういった次の瞬間には味方軽戦車の内部で爆発が起きたようで、砲塔のハッチが内部の爆発によって勢いよく吹っ飛んだ。


「お兄ちゃん、乗員の人達は……」


 エミリーが何か言いかけるが言葉が止まった。

 その言葉の続きを察した俺が言葉を続ける。


「ああ、無理だ。助からないよ。ここにいちゃまずい。逃げるぞ」


「でも、輸送トラックはどうするの?」


「そんなのほっとけ。逃げようとしてUターンしている間にあの対戦車砲でやられちまうよ。あのトラックの乗員が生き残る道はトラックを捨てることだな。きっと無線で救援を頼んでいるはずだから、トラック仲間が迎えに来てくれるだろ」


 俺は隠れていた岩陰から逃げようと振り向いたのだが、その先に緑色の肌の亜人集団がいた。


 ゴブリンだ。


 俺はやばいと思って直ぐにしゃがみ込むのだが、すぐ後ろのおバカさんが「なにあれ?」と平然と声を上げる。しかも立ったままゴブリン達を指さしている。


 「あちゃ~」と思った時にはもう遅かった。

 ゴブリン達もエミリーを指さしている。


 俺は慌ててエミリーの腰のベルトを掴んで強引にしゃがませる。


「きゃっ」


「腰が高いんだよ! 見つかっちまっただろうが」


 エミリーは小さな声で「ごめんちゃい……」と言ってくるが、あまり反省の色が見えない。

 ゴブリン相手に俺が負けるはずがないと思っているんだろうな。

 でもな、向こうは4匹もいるんだぞ。


 ゴブリン4匹がこちらに向かって走り出す。


「ったく、しょうがない」


 俺は背負った銃を手に持ち替える。


 そして折り畳みストックを伸ばして肩に当てると、ボルトを引いて発射準備をする。その頃にはもうゴブリン達は目の前まで迫っている。


 このくらいの距離でいいかと俺はゴブリン目掛けて引き金を引く。


 俺の持つ短機関銃の銃口から発砲炎が吐き出され、標的のゴブリンへと多数の弾丸が散らばっていく。


 口径9㎜、総弾数32発の折り畳みストック付きのマシンガンだ。

 モデル38というどこにでも売っている一般的な短機関銃。

 比較的頑丈であり命中精度もそこそこで故障も少ない。つまるところ素人でも扱いやすい銃ということだ。


 拳銃と同じ弾丸を使用するので距離を開けると威力が劣る。それで、できるだけ引き付けてからぶっ放したのだ。


 ちなみにゴブリンの使う武器といえば、クロスボウや拳銃弾を飛ばす程度の威力の低い旧式ライフル銃や拳銃だ。

 しかし大抵は槍や投石で攻撃する者がほとんどだ。

 そこまで武器の普及率は良くない。

 人間の武器に比べたら大抵のゴブリンは遙かに貧弱な武器だ。それでハンター達からはゴブリンは雑魚扱いされている。


 弾倉の半分ほどを空にしたところで、俺は立ち上がりゆっくりとゴブリンへと近づく。もちろん銃は構えたままだ。時折死んだマネをするゴブリンがいるんでね。


 そして残酷なようだけど念のために、倒れているゴブリンにとどめの銃撃を加える。

 さっきの軽戦車の様にはなりたくないから。


 死体を見たところ、やはり武装は貧弱そうだ。

 クロスボウに槍に拳銃だ。


 俺が止めをさして周囲を確認。左手を上げて『来ていいよ』の合図を送るとエミリーが小走りで来て、討伐証明であるゴブリンの角をナイフで切り取りながら、所持品を漁っていく。

 初めての時はビビって何もできなかったエミリーも、今じゃ手慣れたもんである。ゴブリンの死骸の側で飯も食えるほどになった。


 さっさと仕事を終えたエミリーは残念そうにつぶやく。


「う~ん、大したもの持ってなかったぁ」


 その仕草に若干口元を緩めた俺だが、直ぐに対戦車砲に警戒の視線を送る。


 今の銃声は聞こえているはずだ。

 対戦車砲は恐らくゴブリン共の主である、人間が操作しているんだろう。

 大抵、人間の盗賊は奴隷ゴブリンを従えている。

 大型の武器など盗賊のゴブリンが所持してるはずがないからだ。

 対戦車砲や戦車を所持しているゴブリンも確かにいるんだけど、それは軍隊に所属するゴブリン兵だ。

 それも人間とゴブリンとの間で戦争があった過去の話だ。

 そんな崩壊したゴブリン王国の生き残り軍隊など、いたとしてもどうせわずかだろう。

 取るに足らんな。


 そこまで考えたところでふと倒したゴブリンに視線を移して驚いた。

 死体のゴブリン共に奴隷の首輪がないのだ。


「エミリー、もしかしたらあの対戦車砲、ゴブリンだけで操作してるかもしれない」


 ぽつりと言った俺の言葉に、エミリーが「へ?」と言った顔をする。


「だからさ、あの死体を見ろよ。奴隷の首輪がないだろ。誰にも飼われてないってことだろ」


 そこまで言ってやっとエミリーは理解したようだ。


「えっと、そうしたらどうするの?」


「まあ、結局は変わらないんだけどさ。殲滅せんめつするよ。相手が盗賊だってことに変わりはないからね」


 若干の不安を抱えながらも、俺達は敵陣地に回り込んで襲撃するために、林の中を警戒しながら迂回していくのだった。


 








第3話と4話も明日投稿する予定です。


どうぞよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
Unknownから不意討ちされたら、最大火力で制圧射撃か煙幕を焚いて撤退が原則だからね。 後手に回った上に止めも撃たれるなんて、目も当てられないから、ケン氏の嘆きも当然だよね。
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