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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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199話 派閥







 授業割を見ると、戦車学校の時よりも実技の授業が少ない。

 実技と言ってもライフル銃と拳銃の射撃訓練と、行進や行軍といった基本的なものばかりだ。

 銃剣術の授業もあったけど、それはあまりに基本的なというか低レベルな内容だった。

 型ばかりの練習で、試合形式は一切なし。

 これでは実戦では全くと言っていいほど役に立たない。

 授業を見ていても、誰がどの位の銃剣術のレベルかさえもわからない。

 俺は士官学校の中でも機甲科コースだから、戦車実技とかの専門分野の授業も受けるのだが、これまた内容はお粗末すぎる。

 でも生徒のレベルを知って納得した。

 ほとんどの生徒は戦車に触った事さえないのだから。

 

 やはり士官学校だから実技よりも作戦とか、頭を使う方に力を入れる為なのか。

 実技よりも講義の方を力を入れてるらしく、その点で言うと俺は付いて行くのがやっとだ。

 モグモグ君は俺と違って頭が良く、そんな彼に色々と教えてもらいなんとか授業についていってる。


 そんな頭の良いモグモグ君なんだが、運動神経に関してはゼロだった。


 あんな野生動物の外見なのにだ。

 ドングリを喰う時ばかり「カリカリカリカリ」って神速で手と口を動かす癖に、それ以外の動きはモッソリだ。

 なのに、穴掘りと木登りだけは上手い。

 ドングリの木に登るあの早さなんかはまさにリスだった。


 それで勉強に関してはモグモグ君が俺の先生になってもらい、授業が終わった後に彼に勉強を教わることになった。

 その代わり毎朝、俺は彼に格闘術を教える。

 だけどモグモグ君はこれで格闘術が上達するんだろうかというくらい壊滅的だ。

 とか言ってる俺も、モグモグ君にしたら壊滅的なくらい頭が悪いと思われてるんだろうな。

 

 そんなある日。

 午前中の授業が終わり、さて昼食だという時に、またしても食堂でイベントが巻き起こった。


 食堂でモグモグ君から派閥の説明を受けている時の事。


「あそこの端っこのテーブルの2人。派閥争いの内の一つ、エロー子爵派家のドニ・エローと弟のヤン・エローだよ。目的の為なら手段を選ばない兄弟だから要注意ね。それから、あの壁際の一団が……あっ、まずい。目が合った!」


 俺がその壁際の方を見ると、5~6人で固まっているグループがいる。

 全員が坊主頭をしているんだが、1人だけ普通の髪型の奴がいる。

 多分そいつがリーダーなんだろう。

 そのリーダーらしき奴がこっちをジッと見ている。


 エロー兄弟は2人しかいないみたいだから大丈夫だろう。

 だいたいエロは正義だしな。

 しかしエロ兄弟とはやってくれる。


 しかし俺と目が合っているリーダーらしきあいつ、いい加減に目をらしてほしい。

 っていう俺も目をらしてないけどな。


 するとそいつが仲間を引き連れてこっちに向かって歩き出した。

 それを横目で見たモグモグ君が大慌てで俺に耳打ちする。


「ケン、あれが3大派閥で一番大きいグループだよ。先頭を歩いて来るのがリーダーのフローラ・リッポネン伯爵。シモンヌ・ロローと同じ爵位だね。あ、来たよ、刺激しないように頼むよ」


 えええと、フローラって事は女の子か?


 そしてそのフローラ・リッポネンと取り巻き共が俺達のテーブルの前に立つ。

 そこに立つのは中性的な容姿の人間で、男とも女ともとれるな。

 声まで中性的だった。


「君がケン・モリス君だね。私はフローラ・リッポネンだ。君の噂は聞いてるよ。よろしく頼むよ」


 そう言って握手を求められた。


 あれ?

 友好的だな。

 それと女の子なのか。

 美形ではあるが男とも女ともとれる。


 でもな、胸の山がない。

 まさか下半身に『立派やねん』と言わせるようなのがついているのか。

 俺が視線を下に持って行くと。


「おい、失礼だぞっ。初対面の相手に向かってどこを見ているんだ!」


 怒鳴られました。


「あ、ああ、申し訳ない。あのぉ、一応だけど確認しますけと女の子ですよね?」


「あ、当たり前じゃないか。まあ、確かに男っぽい恰好はしているけどね。これはそういう家系で育ったからだと思ってくれ。私だってもっと女の子っぽくしたいんだけど、中々そう上手くいかなくて……って何を言わせるか!」


 なんかチョロいんじゃないかこいつ。

 だけど3派閥の中じゃあ一番まともっぽいか。

 とりあえず女の子と判明した。

 この顔の作りならバッチリ化粧でもして着飾りでもしたら、凄い事になるんじゃないのか。

 

「いや、すまん。それじゃあ改めまして、ケン・モリスです。よろしくお願いします」


 席から立ち上がって今度は俺から握手を求めた。

 すると笑顔で俺の手を握る。

 

 あ、柔い。

 手は女の子だ。


「私の事はフローラと呼んでくれて構わないよ」


 そうか、フローラと呼ぶかのか。

 でも伯爵だから、フローラ嬢様? フローラ嬢でいいか。

 リッパヤネンの方が呼びやすいんだが。

 ん?

 一歩やねんだったっけ?

 早くも忘れた。


「それじゃあ、フローラ嬢、俺のことはケンでいいよ」


「嬢……まあいいか。ところでケン、モリス家とはどの地方の家系なんだ」


 あ、そうきたか。

 これは俺が貴族じゃないことがバレるパターンだな。

 バレたらやっぱりまずいんだろうな。

 モグモグ君にも見放されそうだ。

 ルームメイトにまで見放されたら俺は完全なボッチ確定だ。

 慎重に答えないと。


「えっと、フット湖のずっと先だよ」


 エミリーの生まれた地方を答えてしまったけど、結構距離もあるから誰も知らないと思うぞ。

 するとフローラちゃんは笑顔になる。


 げっ、まさか、知ってたのか!


「ああ、あの地方の領主のパルマ家の人か。私の父上とパルマ子爵が知り合いでね、私も小さい頃に1度だけ行ったことがあるんだよ。懐かしいな」

 

 パルマ家?

 なんか気いた事あるぞ。

 

 あ、エミリーの母さんの旧姓だ。

 え、ちょっとまってくれよ。

 エミリーの母さんの名前がエミル・パルマだったよな。

 まさかね、そんなはずはないよな。

 エミリーが貴族の子?

 いやいや、偶然だなこれは。


「何1人でぶつぶつ言ってるんだ?」


 やばい、やばい、自分の世界に入ってしまった。


「いや、なんでもないよ。ハ、ハ、ハ、ハ」


 でも良かった。

 一番規模のでかい派閥と争いなしで済んだんだ。

 ラッキーだな。

 とか考えてたら、フローラ・りっぱやねん伯爵嬢が突如確信を突く話を切り出した。


「それでだな、ケン。君はどこの派閥に入る気なんだ?」


 余りにストレートすぎる質問だ。

 まあ、変な小細工されるよりも良いけどな。

 

「フローラ嬢、俺はどこの派閥にも入らないから。敢えて言うなら、そうだな『ドランキー・ラビッツ』中隊に所属かな。ま、そういうことで」


 そう言って、俺は視線をテーブルの自分の食事に向ける。

 そして、モグモグ君が小さな声で「そんな言い方……」と言った直後だった。


「ほほ~、ケン曹長。君の強さは知っているよ。しかしだ。1人じゃ何もできないぞ。数がモノを言うんだ。それを君は理解していないようだな。それにドンキーラビットだと? 新しい派閥を作るという気か?」


 フローラ嬢がそんなことを言ってきたのだ。

 これはちょっと怒らせたみたいだな。

 『ケン』と呼んでたのが『ケン曹長』に変わったし。

 その前にドンキーじゃなくてドランキーだし、派閥じゃなくて中隊だし。


 どうも俺はこういう状況が苦手なようだ。

 言い換えれば、相手を怒らせるのは得意。


「フローラ嬢、悪いけどここで騒ぎを起こすのはちょっと……この間、言いがかりをつけてきた3人を跳ね除けたら教官に怒られちゃってね」


 するとフローラ嬢。


「なんだ、私をあの時と同じようにスプーン1本で跳ねのけられると?」


 あ、やばい。

 これは絶対に怒ってるよね。


 何故か周囲にいた生徒たちが、俺達を中心にして凄い勢いでテーブルごと下がって行く。


 なんだか自然と円形の闘いの場が形成されていくんだが。


 坊主頭の連中が直ぐに臨戦態勢に入る。

 

 フローラ嬢を入れれば全部で5人、いやもう1人いる。

 貴族の付き人ってやつらしい。

 階級章が訓練生だ。

 そいつだけは坊主というよりもスキンヘッドだ。

 つまり全部で6人。

 

 特にスキンヘッドの奴、明らかに他の奴とはオーラが違う。

 こいつはきっと強い。

 1対1ならまだしも、6対1でこいつが入られるとキツイ戦いになる。

 

 モグモグ君は俺とフローラ嬢に視線を行ったり来たり。


 さて、どうする俺?













何だかんだ言ってても、結局登場人物は増えていってしまうんですよ。

作者でさえこいつ誰だっけってなりますから。



<(_ _)>

さーせん




その内人物名鑑作りますかね。














という訳で次回もよろしくお願いします。







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