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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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196話 ルームメイト






 列車の窓から外の景色を眺めていると、戦場の景色が包み隠さず見えてくる。

 至る所に負傷兵があふれかえっていて、「乗せてくれ」と手を伸ばしてくるのだが、当然のことながら列車が止まることはない。

 沢山の破壊された車両に、埋葬されることもない死骸の数々。

 人族ってこんなに押されていたんだと改めて実感した。

 

 列車の速度が徐々に落ちてきた。

 途中駅に停車するらしい。

 駅に近づくと凄い人の数が見えてきた。

 ホームの周囲にまで人でビッシリだ。

 駅弁でも買おうかと思ってたんだが無理そうだな。

 列車が止まると一気に人の波が列車に押し寄せる。


「頼む、乗せてくれ。俺には妻と子供がいるんだ」


「列車に近づくな、それ以上近づくと撃つぞっ」


 そして銃声が響く。


 列車を護衛する兵士は容赦などなかった。

 人形の様に崩れ落ちる男。


 その結果として押し寄せる人の波が和らぐ。

 効果としては十分なんだろうがやり過ぎではないだろうか。


 しかし知らなかった。

 こんなにも戦況はひっ迫してるのか。


 そう、これが今の人族の本当の戦況だ。


 同じ列車に乗る軍関係の人、つまり軍属にあたる人の話によると、オークの参戦でたった数日の間に一気に戦線が後退したんだそうだ。

 それで多数の人族の街が敵の陣営に落ちてしまい、多くの避難民が発生し、駅や道路にはその避難民が溢れかえることになったのだそうだ。

 

 なんとかしたいとは思うが俺には何もできない。

 見て見ぬふりするのが精一杯。

 そんなことを考えながら王都へとたどり着いた。


 初めて王都へ来たんだが、そこは俺達が住む場所とは別世界だった。

 まずは王都の駅はでかい。

 そして人が多い。

 出迎えてくれた下士官兵がいなければ、俺は間違いなく人ごみに揉まれて迷子だっただろうな。

 出迎えの下士官兵2名に付き添われて駅を出れば、そこには自動車が走りまわっている。

 数台とかのレベルではない。

 俺は軍用車両に乗せられて学校へと向かう為、街中を走って行く。

 王都の街並みに俺の度肝を抜かれ、まるで子供の様に窓にかじりついて外を眺めてしまった。

 まず驚いたのは道路の上を列車が走っているのだ。

 なんでも路面電車とかいうらしい。

 そして、あちこちに高いビルが立ち並び、それは日陰の場所が幾つもできるほどで、空が狭く感じる。

 さらに同じようなお店が何件も立ち並び、この街では物が溢れている。

 何よりも街の人が明るい笑顔だ。

 

 王都に来る前に俺が見ていた悲惨な光景は、いったい何だったんだろうか。

 王都の人々は戦況がどうなってるか知らないんじゃないのかと思う。

 俺はたまらず案内の兵士の1人に質問する。


「ちょっと聞いてもいいですか?」


 すると兵長の階級を付けた兵士が応えてくれた。


「はい、なんでしょうか、曹長殿」


「この街の人達は戦況がどうなってるかは知ってるんですよね」


「ええと、外から来た曹長は知らないようですけど、王都では緘口令かんこうれいが引かれています。押されている事は知っているはずですが、実際にどの程度かは知らないのが現状です。だから人々は楽観的です。人族が負けるはずがないと思っています」


 ちょっと驚きだ。

 王都の都民には隠しているのか。

 まあ、本当の事を知ったらパニックになりかねないか。


 そして学校に到着すると、案内役の兵士2人とはここでお別れとなる。

 そこで最後に案内の兵士の1人が俺に面と向かって言った。


「モリス曹長殿は平民なのに士官学校へ入るんですよね。自分も平民なんですが、あなたは我々の英雄です。応援してますんで頑張ってください」

 

 そう言って彼らは敬礼をした。

 

 俺はちょっと胸が熱くなり力の入った敬礼を返すと、嬉しそうに2人は元来た道を帰って行った。


 暫くその場で立ち尽くしていると、後ろから声を掛けられる。


「あなたがケン・モリス曹長かな?」


 俺が振り向くとそこにいたのは20歳くらいの金髪の美女。

 少尉の階級を付けている。

 

「は、はい。ケン・モリス曹長、只今到着致しましたっ」


 慌てて敬礼する。

 

「ようこそ、王都士官学校へ。私は教官のエリン・アドラム少尉よ。よろしくね。まずは宿舎へ案内するわね」


 俺は荷物を担いでアドラム教官の後ろを歩くんだが、まあ、なんというかねえ。

 大人の魅力っていうんですかね。

 身長は165㎝ほどの長身細身の金髪ポニーテール。

 悔しいが俺よりも背が高いっっ。

 何よりも後ろから見ると腰のくびれがヤバくて、さらにケツを左右に振りながら歩くんだなこれが。

 エリン教官っていうよりもエロリン教官だな。

 俺は脳内妄想を繰り広げながら前かがみ状態で、宿舎までなんとか無事にたどり着いた。


 校舎は古い造りだが貴族が使うだけあって立派なもので、生徒の宿舎もまた立派な建物だった。

 宿舎の建物に入り案内されたのは2人部屋の前。

 ルームメイトは授業中とのことで今はいないそうだ。

 そう、俺は中途入学という珍しいパターンらしい。

 

「荷物をまとめたら入学手続きをしておきなさい。授業は午後からね」


 それだけ言い残してエロリン教官は行ってしまった。

 ちょっと心残りだ。


 中に入るとベットと机とロッカーが2セットずつあるだけの殺風景な部屋だった。

 そういえば昼食がまだだった、腹減って死にそうだ。

 そんなことを考えながら荷物を解いていると、誰かが入って来た。

 

 扉の方に目をやると、そこにいたのはモフモフした生き物だ。

 俺が驚いて固まったままでいると、そのモフモフはしゃべり出す。


「いやあ、初めまして。ちょっと驚いてるね。僕は見ての通りのウッドチャック人の義勇兵だよ。どうやら君が中途入学して来るっていう人族のルームメイトだね。僕はマクマク・ダウダって言うんだ、よろしく頼むよ」


 そんなことを言いながら手を差しだしてきた。


 そうか、ウッドチャックっていったら確かリスだかネズミの種族の亜人だったと思う。

 希少種族だって聞いたことあるな。

 

「あ、ああ、ケン・モリスだよ。よろしく頼むモグモグ・ダウト君」


「マクマク・ダウダだよ。勘弁してくれよ――あれ、君ってその階級……」


 不思議そうに俺の曹長の階級章を見ている。

 そうか、この学校に入るとみんな准尉になるんだよな。

 だけど俺は平民の出だから曹長のままだ。

 とは言っても曹長も准尉も我が軍では階級の順列差はない。

 言い換えれば准尉というのは『士官候補生の下士官』であり、下士官である以上は下士官最高階級の曹長と同等という事らしい。

 だからどっちが階級が上という事はない。


 しかし、このマクマク・ダウダが疑問に思ってるのはそういう事ではないだろう。

 曹長の階級を付けた兵がこの学校の生徒であるはずがないという事だ。

 あるとすれば何らかの理由で士官学校に入らずに、戦場へと出てしまったお貴族様が遅れてこの士官学校へ入学したとか。

 そんな事ありえんだろうな。


 俺は彼が言いたいことがわかったが故、なんと答えようか少ない脳みそをフル回転させて出た言葉が。


「お、俺は特別推薦枠とくべつすいせんわくで入学したんだよ」


 別に嘘はついていない。

 ただ、微妙に話をらしただけだ。


「なんだ、そういう事か。でも特別推薦枠って聞いたことないね。そもそも推薦入学なんてのがある事自体が知らなかったよ、君って凄いんだね」


「いやあ、大したことないよ」

 

 よし、見事に引っかかったな。


「そうだ、手続きとかまだだろ。僕が職員室まで案内するよ」


「いやあ、それは助かるよ」


「それから僕の事は“マクマク”って呼んでくれ。僕も君の事をケンと呼ぶからさ」


 まあ、ルームメイトだしな。

 問題ないだろう。

 だけど心の中ではモグモグ君だがな。


 俺は野戦服から礼装の制服へと急いで着替えた。

 するとまたしてもモグモグ君が俺を見て驚いている。

 今度は俺の勲章を見て尻尾をピクピクさせている。

 そうか、勲章は見たことないのか。


「モ、モリス君。き、君は勲章まで貰ってるのか。それにその腕のも勲章だろ。となるとここに来るまでに2個も勲章をもらっているのか!」


 胸に着いているのは確かに勲章で歩兵騎士金章だけど、腕のは魔獣撃破金記章とかいうのだったかな。

 これは記章だから勲章には入らないんじゃないのか。

 どうでもいいんだが。

 礼装になるとこうした勲章とか記章はつけなくてはいけないからな。

 確かにあると無いのとじゃ箔が違う。


「ああ、これね。魔獣をたまたま倒してね。そしたら勲章と記章を一緒にもらえたんだよ。本当に運がよかったよ」


 ちゃんと勲章と記章と言っておいたぞ。

 これで勘違いしても向こうの勝手だからな。


 そしてモグモグ君に案内されて入学手続きをして、教科書や支給品を受領して部屋に戻った。

 授業は午後から受けてくれって言ってたんで、俺とモグモグ君は食堂で昼食をとる事にした。

 

 食堂も凄い立派。

 俺が居た戦車学校とは大違いだ。

 そういえば生徒はみんな礼装をしている。

 野戦服じゃだめみたいだな。

 ずっとこの礼装でいなきゃいけないのか、これは肩が凝りそうだ。


 生徒には人間以外にモグモグ君のような亜人や獣人までいた。

 獣人に貴族がいるとは俺も知らなかったな。

 いや、俺みたいに特別枠なのかもしれないな。

 あれ、女の子がいるじゃねえか。


「なあ、モグ、マクマク。士官学校って男女別じゃないのか?」


「それが最近になって生徒の数が少なくなって統一化されたって聞いたよ。それから僕の名前はマクマクだよ」


「共学とはラッキーじゃねえか!」


 俺は両手を握りしめるのだった。













ウッドチャックの亜人というのが出て来ました。


ウッドチャックという実在する動物が元ネタです。

ネズミ目リス科マーモセット属の哺乳類です。

それが2足歩行してる感じでしょうか。


ネット検索すればすぐ出て来ます。







そういえば先日、緊急事態宣言解除になったんで、気晴らしで仕事帰りに書店に寄ってみました。

それがいけなかった。

気が付いたら「世界の戦車 パーフェクトBook」とか言うのを買っていました。

826種類戦車両写真付きという文句に釣られました。

よく考えりゃネット検索すれば写真見れますし。

定価1,870円……

やっちまいましたね。

また本棚の肥やしが増えました。








という訳で次回もよろしくお願いします。








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― 新着の感想 ―
[良い点] リスっぽい獣人というとあれか、「盾の勇者」の着ぐるみシリーズがイメージに近そうだよねぇ [気になる点] 識字率が問題だ ケンちゃんてば文章読めなさそうだし、筆まめでもないし、文字通りお上り…
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