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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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171話 乱戦






 俺は15㎏以上ある対戦車ライフルを担いで、Ⅲ突Gの所へ足早に向かっているのだが、やはり重い、重いんですよ。

 肩に担いで移動しているんだけど、重くて辛い。

 だけどグズグズしてると、ゴブリンが味方陣地へなだれ込んで来てしまう。

 乱戦にでもなったらこのお荷物を渡すどころではなくなってしまう。

 急がないと。


 頭の上を銃弾が交差する中、背を低くしながらもやっとのことでⅢ突Gの近くまで来た。

 しかし、もう少しというところで俺の腕にも限界が。

 余りの酷使こくしに腕がプルプルいってる状態だ。

 そこでたまたま近くを通りかかった歩兵部隊の兵士に、ちょっと手伝って貰おうと声を掛けた。


「こんな時にすまんが、これを運ぶのを手伝ってもらえないかな」


 すると帰ってきた言葉が。


「ギギャギャ?」


「!」


 そう、暗くてわからなかったが、よく見りゃゴブリン兵だったのだ。


 ゴブリン兵は持っていたライフル銃の銃口を俺に向けた。

 俺も咄嗟に手に持っているライフル銃を構えようとしたのだが、あまりに重くて長いその鉄パイプの様な代物は、今の俺の腕の状態で構える事なんて無理があった。

 その結果、俺はバランスを崩して対戦車ライフルから手を放し、後ろに転んでしまった。

 

 その瞬間、俺は1発は喰らうと覚悟を決めた。

 だけど次の瞬間に必ずこいつを仕留める!


 しかし偶然にも対戦車ライフルは、ゴブリンの足の上にドシャッと落ちた。


「ギッギャァァァッ!」


 しめた!

 ゴブリンが叫び声を上げたその隙に、俺は反動をつけて跳ね起きると、ゴブリン顔面にヘッドバットをかます。

 するとゴブリンは目を白黒させながらフラついた。

 そこで俺はそいつの持っているライフル銃を奪い取り、そのまま後ろへ押し飛ばした。

 そしてそいつが倒れた瞬間に銃床で顔面を粉砕。

 ゴブリンは沈黙した。


 ふう、危なかったぜ。

 あれ、何だこれ?


 奪ったゴブリンのライフルに違和感があり、握りしめたライフル銃に視線を向ける。

 前のレバーアアクションとは違い、ボルトアクションだな。

 このボルトアクション式のライフル銃なのだが、人間が使うライフル銃なんかよりもだいぶコンパクトというか短い。


 なにより“チャチ”く見える。


 ゴブリンのライフルと知らなかったら夜店の射的の銃かと思うだろう。

 良く言えば騎兵銃のようなコンパクトなライフル銃だ。

 小さな体格のゴブリンには扱いやすいのだろうな。


 という事は、ゴブリン共は正式ライフルを変えたということか。

 などと感心して油断していると、突如気配を感じて前方に顔を上げる。

 5~6mほど先にゴブリン兵が立っているのが見えた。


 俺がそいつにライフル銃を向けようとした瞬間、そのゴブリン兵の頭がスパッと真っ二つに割れた。

 それは見覚えのある魔法攻撃だ。


 ふとⅢ突Gの方を見ると、エミリーが手を振っている。

 エミリーの風刃の魔法だ。

 エミリーめ、また美味しいところを持って行きやがったか。

 まあ、可愛いから許すけどね。


 とりあえず俺は戦車ライフルを引きずりながらⅢ突Gに到着した。


 そしてやっとのことでミウに対戦車ライフルを渡すことが出来ましたよ。


 そこで一旦落ち着いて周囲を見まわすと、味方歩兵陣地の一部にゴブリン兵と魔獣が侵入しているのが見える。


 まずい状況じゃねえか。


 思った以上にゴブリン共に押されている。

 っていうかゴブリンの数が半端ねえな。

 数に物を言わせるゴブリンお得意の戦法だ。


 その中でも特に一際目立っているのがあの魔獣だ。

 トラのようなその魔獣が走り抜けると、その度に必ず歩兵が1人か2人は噛みちぎられていく。

 さすがに戦車には奴の牙は効かないだろうが、このままだと歩兵陣地がやばい。


 後はミウが命中魔法であの魔獣を仕留めてくれることを願うだけだ。


 だが、あまりに早い動きな上、塹壕へ出たり入ったりと姿をはっきりと捉えられないらしく、一向に対戦車ライフルの銃声が聞こえない。

 エミリーも魔法攻撃を何度も繰り返してはいるようだが、仕留めるまでには至っていない。


 しょうがない、俺が囮になってあの魔獣を引き付けて、その隙に対戦車ライフルで仕留めてもらうか。

 このまま歩兵部隊に被害が出ても困るしな。

 別に俺が直接倒さなくていい訳だし、逃げ回るだけなら何とかなる気がする。

 でも命の危険がある事は間違いないので、ちょっと高めのヒールポーションをすぐ取り出せる位置に腰のポーチをずらす。


 俺は覚悟を決めて、ゴブリンのライフル銃を構えながら歩兵陣地へと乗り込む。


 乱戦状態となった塹壕では、あちこちでゴブリンと味方兵士が格闘戦を繰り広げている。

 俺も先ほど奪ったゴブリンのライフル銃を握って、混戦の中へとダイブした。

 

 身近なゴブリン兵を見つけて、その後頭部へライフル銃の銃床を叩きつける。

 うつ伏せで地面に顔面から突っ込んだゴブリンの後頭部を左脚で踏みつけながら、右側にいた別のゴブリン兵の顔面に銃床を叩きこむ。

 間髪入れずに塹壕に飛び込んできた新たなゴブリン兵に銃口を向け、引き金を絞った。

 空中で頭を吹き飛ばしたゴブリンが、ベチャリと音を立てて塹壕の中の地面に激突した。

 直ぐにボルト操作をして次弾を装填。

 新たなゴブリンを見つけて弾丸を叩き込んだ。


 くそ、ゴブリンが多くて魔獣を追えねえよ。

 

 だが、獲物は向こうからやってきた。


 ゴブリンが跨る魔獣が塹壕を飛び越えながら、こっちに向かって走って来るのが見えた。

 俺が派手な動きを見せたからだろうか。

 真っすぐ俺に向かってくる。


 俺は塹壕の上へと出ると一目散に逃げ出した。

 すると魔獣は俺の後ろを真っすぐに追いかけ始める。


 やばい、追いつかれちまう!

 当たり前だが、俺の走る速さよりも向こうが圧倒的に早い!


「おおおお、かじられる~~っ!」


 必死に逃げる俺の真後ろで、トラの様な魔獣が牙をガシガシやっている。

 もう無理、ってところで一際大きな銃声が響いた。


「やったか?!」


 走りながら後ろを振り向くと、上半身が吹っ飛んだゴブリンを乗せたトラのような魔獣が、大口を開けて俺に食いつこうとしている真っ最中だった。

 

 ミウが狙撃したのは騎乗しているゴブリンの方だった。

 うおおお、ゴブリンはいい、魔獣を撃ってくれって。魔獣を!

 

 走りながら後ろを振り向くのは良くない。


「ふべべべべっ」


 俺は足をつまずいてしまい、万歳のような恰好で前のめりに倒れ、顔面を地面に嫌ってほど擦り付けた。


 それが幸運だったのか、勢い余った魔獣は俺を踏みつけながら俺を追い抜いてしまった。


 魔獣が慌てて停止して振り返ったところで、下半身しかないゴブリンの身体が地面に振り落とされた。


 すると騎乗者がいなくなった魔獣は急に態度が急変し、キョロキョロと周囲を確認することしばし、何を思ったか明後日の方向へと走り去ってしまった。


 その時になるとゴブリン兵も徐々に後退を始めた。

 どうやら撤退してくれるらしい。

 それを見て素直に助かったと思った。

 これ以上戦闘が長引くと、味方の死傷者も増えるからだ。

 

 この時間になると朝日が周囲を照らし始めて、ここの惨状が改めて見えてきた。

 ゴブリン兵も多数倒れてるが、味方兵士も多数が倒れている。

 タクやソーヤの方を見ると、敵のセメトン戦車の残骸が数両見えるだけで、味方戦車は全部無事のようだ。

 いや、タクの2号車が調子悪いみたいだな。

 破壊はされていないがエンジンを点検している。


 しかし、そんな中で人だかりができている一画があった。

 

 あれ? 

 まだ戦闘しているのか。

 その人だかりからは、まだ銃声が聞こえるのだ。


 俺がその人だかりに向かうと、そこにはゴブリンが騎乗する魔獣がいた。

 騎乗するゴブリンも魔獣もあちこち負傷をしているらしく、特に魔獣はかなりひどい。

 あちこちに銃弾を受けているらしく、もはやこの人だかりから走って逃げることもできないらしい。

 それを味方兵士が取り囲んで、拳銃で撃ったりしてからかっているのだ。

 もちろん急所ははずして殺さない様にだ。

 そもそもこの魔獣に対しては拳銃では威力不足だ。


 そういえば侵入した魔獣は1匹じゃなかったんだよな。

 だけどまったく厄介な事態だな、これは。










ゴブリンのライフル銃はカルカノM1891騎兵銃が元ネタです。

セメトン戦車はセモベンテです。





という事で次回もよろしくお願いします。

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