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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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170話 丘を守れ

やっぱりお前らはそうなのか!






歩兵部隊に歩哨はまかせっきりで、俺達戦車兵はそれぞれの戦車の横でゆっくりと睡眠をとっていた。

 だが、突然の爆音に俺は飛び起きた。


 周囲を見れば夜明けが近いらしく、遠くの空が明るくなりかけている。

 Ⅲ突Gの乗員であるエミリーとミウも飛び起きて、寝ぼけ顔のままキョロキョロしている。

 続いて20~30m離れた丘の斜面が爆発した。


「エミリー、ミウ、戦車に入れ。敵の攻撃だ」


 しかし爆発が小さいな。

 ゴブリンの45㎜軽迫撃砲か?

 だとしたら敵が近くまで迫っているってことだ。

 

 くそ、どこからだ。

 あれ、ケイはどこだ?


 ……いた、まだ寝ていやがる。

 夕べ、隊長用のテントで寝ろといったんだが、それだといざという時に戦車に乗り込めないからここで寝ると言い張るもんだから、しょうがなくここで寝かせていたんだが、まあ起きない。

 よくもまあ、この爆音の最中にスヤスヤ寝ていられるよな。

 新兵とかだと恐怖と不安で何日も寝られないなんてこともあるのに、こいつは……


 俺はケイを寝袋ごと戦車の中に頭から放り込んだ。


「うわっ、何、何っ、痛い、痛い――んぎゅぅっぅっ」


 ああスッキリだな!

 溜まりに溜まったうっぷんをやっと返せた気分だよ。


「いやあ、良い朝だな、今日は!」


 俺がすっきりした顔で伸びをしていると、エミリーが車内から怒鳴りつけてきた。


「お兄ちゃん、早く戦闘準備してよっ」


「ああ、わりい、わりぃ」


 そそくさと車内へと入って行く俺。


 ミウがケイを寝袋から解放する間に、俺は無線で“角兎の巣”に連絡を入れた。


「角兎の巣、こちら1号車どうぞ」


 すると直ぐに返事が返ってきた。


『こちら角兎の巣、ナミです。ケンさんですか。敵の攻撃のようです。4号車方面で戦闘中、ゴブリン歩兵多数。それと戦車が数両います。気を付けてください、突撃砲タイプのようですが詳しくは不明、どうぞ』


 ゴブリンの突撃砲タイプって言えばセメトン戦車か。

 75㎜砲を搭載してるタイプか。

 これは厄介だ。

 対戦車榴弾とかで撃たれれば当たり所によっては貫通する。

 側面から撃たれればシーマンもⅢ突Gもやられる。


「よし、ナミ。2号車と3号車を4号車の応援に行かせろ。くれぐれも油断するなと伝えてくれ。それと歩兵部隊には戦車には手を出さなくていいから、ゴブリン歩兵だけを足止めするように伝えてくれ」


 俺が無線を終える頃には、なんとかケイが装填手席に着いたのだが、呑気にまだあくびをしていやがる。

 

 今のところ俺達の今いる側には敵が見えない。

 潜んでいるだけかもしれないが、今のところは何もなく、4号車の陣地方向から戦闘音が聞こえてくるだけだ。

 だけどこのまま終わる気が全くしない。


 正にそう思った時だった。


「ケンさん、前方200mのところで何か動きました」


 そう言ったのはミウだ。

 獣人は人間よりも目が良い。


「戦車か?」


 俺の質問にミウが少し悩んだ後に言った。


「そうですね……確かにゴブリンなんかよりも、明らかに大きいんですが、目が光ったように見えたんです。戦車じゃないと思います」


「もしかして魔獣か?」


「かもしれません。そうだとしたら音もなく接近される可能性があります。気を付けて下さい」


 ウルフライダーとかと乱戦になったら、この砲塔が無い戦車じゃかなり不利だ。


「みんな、場合によっては乱戦になるかもしれない。その時ケイはリモート機関銃の操作、エミリーは魔法で攻撃、ミウは短機関銃が木箱にあるからそれを使って、車内から敵を攻撃してくれ」


 するとケイが質問してきた。


「ケンちゃんはどうするのよ」


「ああ、俺は自由に外を動くさ」


 その時だった。

 ミウが突然叫んだ。


「来ますっ!!」


 俺がキューポラから確認すると、距離にして100メートルほど。

 暗闇に乗じて匍匐前進ほふくぜんしんしてきたのだろうか、薄明りの中、ゴブリン歩兵が一斉に立ち上がったのが俺の目にもはっきりと映った。

 

「「「ギギャアアアアアッ!!」」」


 ゴブリン歩兵が雄叫びと共にこちらに向かって走り出す。

 そのゴブリンの後方、少し離れたところに魔獣が数匹見えた。

 ライオンやトラのような4脚猛獣系の魔獣のようだ。

 テイマーであるゴブリンを背に乗せて、ジグザクに走りだした。

 Ⅲ突Gの戦車砲で狙える速度ではない。

 

「榴弾装填で通常射撃。目標はゴブリンの集団の真ん中。1発だけ撃ったら全員接近戦闘用意!」


 この距離なら機関銃やエミリーの魔法攻撃の方が効率が良いと判断しての指示だ。


 俺の指示通り、1発だけ榴弾を撃ち込んだ後、それぞれが戦闘の準備をする。

 俺はというと頭に白いタオルを巻いてから皆に伝えた。


「俺は外に出て敵を攪乱する。目印はこのタオルハチマキだ。間違っても俺を撃つなよ」


 そう言って俺は動き出す。

 あ、そうだ。


「ミウ、これはフリじゃないからな。俺を撃つなよ!」


 ミウには強く言っておいた。

 これで多分大丈夫だろう……多分。


 エミリーの「お兄ちゃん気を付けて」という言葉を背に、俺は拳銃を片手に車外へと出て行った。

 短機関銃はミウに渡したから俺は戦車学校で貰った拳銃があるだけだ。

 でもこれは記念品だし、使っちゃもったいない気もするよな。

 そんなことを考えているうちに、ケイが車体上部に設置してある機関銃を車内リモートで撃ち始めた。


 味方歩兵もすでに攻撃は始まっている。

 だが2号車と3号車を4号車方面へ応援に行かせているから、実は俺達の守るこの陣地は手薄状態だったりする。


 しかも敵の接近を許してしまったから白兵戦となる。

 特に厄介なのが体長5~6mはあろうかという、テイムされたトラのような魔獣が目につく。

 頭部と胴体には魔獣の革製らしい鎧まで装備している。

 拳銃では倒せそうにないか。

 対戦車砲くらい強力な武器じゃないと……そうだ、あるじゃねえか。

 

 監視所の防御陣地で使っていた対戦車ライフルが!


 俺は急いでゴブリンの鹵獲品ろかくひんの集積所へと向かい、一番良さげな対戦車ライフルを手に取ると、それを持って今度はⅢ突G戦車の元へと走った。

 

 そう、対戦車ライフルをミウに届ける為だ。

 これでミウに狙撃してもらえば、あの魔獣も倒せるんじゃないか。

 戦車砲と違ってこれなら激しく動く魔獣も狙えるはずだ。













ゴブリンの突撃です。

対戦車ライフルはデグチャレフ対戦車ライフルあたりです。

これなら1人でもなんとか持てそうだったので。

比較的軽い部類の対戦車ライフルです。






という事で次回もよろしくお願いします。





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