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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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166話 監視所





 ハンター時代は戦車の整備といったら全部自分達でやるのが当たり前だったのだが、今俺達がいる環境には整備兵などと言われる専門の兵士がいる。

 もちろん、ある程度自分達で出来ることは自分でやるのだが、それでも全然楽になったし、何より金が掛からないのは嬉しい。

 それに飯はもとより、弾薬や燃料がタダ。

 楽園かよ!

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 と一瞬思ったんだが、エミリーの一言で現実に引き戻される。


「お兄ちゃん、今月の借金分はどうやって払うの?」


「……」


 ちょっとだけ忘れてたよ。

 折角良い思いしてたのに……





 補充を済ませて時間通りに戦車の前に整列していると、ケイがナミを連れてやってきた。

 ナミはすっかり秘書みたいな役割になってるな。

 そしてケイは自分の周りに分隊長である軍曹達を集めて話を始めた。

 なぜかのその中に伍長である俺もいる。

 もちろんケイの命令だ。


「えっと、それでは本日の任務を知らせるよ。この後――」


 話を聞くと、どうやら敵の監視所を潰しに行くらしい。

 その監視所というのは見晴らしの良い丘の上にあり、機関銃に加えて対戦車砲も据えられているという事だ。

 歩兵部隊が何度か攻略に挑戦したそうだが、すべて失敗に終わっているらしい。

 それを俺達K小隊と歩兵2個小隊で攻めるというのだ。

 敵の戦力は判明しているだけで47㎜対戦車砲2門、81㎜クラスと思われる迫撃砲数門、対戦車ライフル装備の敵歩兵多数という情報だ。

 それと敵の75㎜砲クラスの野砲による砲撃が加わる。

 

 この情報を見て思ったのは、楽勝じゃねえかと。

 47㎜砲くらいじゃ俺達の戦車は貫通しない。

 81㎜迫撃砲は戦車に狙って当たるもんじゃないし、よほど当たり所が悪くない限りは耐えられるだろう。

 75㎜野砲は喰らうとやばいが、これもそう当たるもんじゃないしな。

 それにすべて敵はゴブリンだし。

 つまり簡単な任務だと。

 これは俺達にとっての初戦なんで、上層部がこの程度の任務にしてくれたんではないかと思う。

 

 しかし、最後にケイが言葉を付け足した事により俺は落胆した。


「それから入ったばかりの情報なんだけどね。その監視所の後方に戦車を見たという不確かな情報もあるね。あ、それってオークの戦車だったみたいだけど……」


 何、オークの戦車だと。

 戦車の種類にもよるんだけど、タイプ34とかだったら増援を望む!


 しかし、あくまでも不確かな情報とかで、そんな情報では部隊の増援とか無理だと。

 当たり前の話か。


 結局はこの戦力でやるしかないという事だ。

 あとはケイの指揮能力を祈るしかない。

 俺みたいな下士官風情が悩む事ではないよな。

 ここは軍隊だから、俺は上官の命令に従うのみだし。

 

 そして不安を胸に抱えたまま、俺達のK戦車小隊と歩兵2個小隊を満載したトラックは出発した。


 途中ふと思ったんだが、歩兵と戦車を合わせて3個小隊のこの中隊ほどの部隊なんだが、この中での最高階級が歩兵隊の士官である中尉だった。

 つまり階級からいってその中尉がこの部隊の指揮をる訳だが、戦車の運用とか作戦とかわかるのか?

 するとその質問にケイが答えてくれた。

 

「ああ、それね。なんか指揮権は私に任すって言われたんだよね」


「へえ、そうなんだ……っておい! なんで階級が下の少尉が指揮を執るんだよ。おかしいだろ」


 俺が声を荒げるのだが、ケイは全く動じない。


「だって中尉さんがそうしてくれって言うから、別にいいじゃん。好きに動けるんだし」


「いやね、そういう事言ってるんじゃなくてさ。ああ、もう。それってやっぱりどこからかの権力という圧力が加わってないか?」


 俺がストレートに言ってやるとケイは。


「う~ん、そういえばね、“お父様によろしく”みたいな事も言ってたかも。なんか得した気分だよね。この身分が生まれて初めて役立ったよ」


 なんてポジティブなんだよ。


「ケイが良いならいいけどな、しっかり作戦命令と指揮は出してくれよ」


「はあ、何言ってるのよ。そんなのはケンちゃんがやるに決まってるでしょ」


 この女、どこまで人任せ何だよ。


「だからな、ここは軍隊で上下関係で指揮系統は決まってるんだよ。ケイが上官で俺がその部下ね?」


 するとケイが勝ち誇った様子で言った。


「あ、言ったね。その言葉忘れないでね。はい、それじゃケンちゃんに命令するね。この部隊の指揮をりなさい。これでどう?」


 こ、こいつ!

 ああ、憎らしい!

 戦車内で押し倒してああして、こうしてやろうか!


「くっそお、わかったよ。俺の負けだ。そのかわり命令は自分の口で伝えろよ。そうしないと問題が起きるから」


「そのつもりよ。だから同じ戦車に身内だけで乗ってるんじゃないの」


 こいつ、悪知恵ばっかり働かせやがる。


 


 

 そして特に敵に遭遇することなく丘の見える場所までやってきた。

 あまり近づくと敵の迫撃砲の射程に入ってしまうので、そのギリギリの距離くらいで俺達部隊は一旦停車した。

 この位置だと敵の野砲からの死角位置となって敵砲撃もまぬがれるという事も、何度かの味方攻勢で判明しているそうだ。

 ここから敵の監視所は見えないし、向こうからも恐らく見えていない。


 それと敵の監視所はベトン製のトーチカとなっていて、味方砲兵の75㎜砲クラスの砲撃にも耐えたそうだ。

 それで直接銃眼に戦車砲をぶち込んで破壊しろという事らしい。


 まずはここで拠点づくりをする。

 荷物を卸し、歩兵もここで下車させる。

 負傷兵の救護や弾薬補充はここで行うのだ。


 そしてまずは偵察からだ。

 オーク戦車が待ち構えていたりしたら大変だからな。

 そこはしっかりケイも把握しているらしく、歩兵部隊から小規模の偵察隊を2組編成して行かせた。

 しかし、暫くしてから大した偵察も出来ずに2組共帰ってきた。

 というのも、あまりに見通しが良すぎる場所に監視所がある為に、直ぐに発見されて猛攻撃されてしまったんだと。


「とてもじゃないですけど近づけません。それに発見されたら最後、機関銃と迫撃砲の猛攻撃を受けます」


 そう報告をする偵察隊の軍曹も傷だらけで、報告の後に救護所へ向かわせた。

 幸いにも死者は出てないが、負傷兵が何人も出てしまった。

 だからと言ってポーションの類はそう易々とは使えない。

 負傷者を全部賄えるほどの数のポーションを用意する余裕など製造元にはなく、軍隊の予算的にもとても無理な注文なのだ。

 よって、余程の事がない限りはポーションは使わないのが普通。

 それに軍隊用のポーションは低品質なために、あまり効き目が良くない事も付け加えておこう。

 だけど個人の持ち込みでのポーション使用は問題ないのだが、俺達“ドランキーラビッツ”にそんな予算はない。

 今月分の借金をどうやって捻出しようか考えているくらいだからな。


 救護所を見てみると偵察隊の4人が負傷したらしい。

 敵情視察だけでこれだ。

 別に新兵ばっかりとかではないらしいが、練度もそれほどではないようだし、実戦経験もそれほどある部隊ではない。

 あまり期待してはいけないか。

 

 ただ、偵察で解かった事もある。

 敵の機関銃などの正確な位置だ。


 まあ、こっちは戦車があるから問題ないか。










ちょっとペースが落ちてきました……


さーせん

<(_ _)>







ということで、次回もよろしくお願いします。




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