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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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163/282

163話 卒業







 Ⅲ突Gは川を越える為に、華麗にジャンプした。

 川幅は5mほどしかないのだが、対岸までの距離を合わせると10mある。

 Ⅲ突Gの全長の倍以上の長さだ。


 空中に舞い上がると、何故か時間がゆっくり進む様な錯覚を感じた。

 空を飛ぶってこういうことなのか。

 経験したことのない浮遊感を味わいながらも、俺はハッチから出した上半身を後方にゆっくりと向ける。


 するとグレイハンド装甲車も俺達と同様に、川の手前で跳躍した。

 その時、ハッチから上半身を出すゴップ中佐はというと、口を大きく空けたまま目玉が飛び出るんじゃないかという様な表情で下を見ている。


 どうやら俺達につられてジャンプしてしまったようだ。


 俺達のⅢ突Gは対岸へとバウンドしながらなんとか着地。

 衝撃がすげえが、なんとか渡り切ったぜ。


 そしてゴップ中佐と装甲車はというと、全然距離が足らずに川へと勢いよく突っ込んだ。

 川からは巨大な水しぶきが上がり、ゆっくりと川の中へと装甲車が沈んでいく。

 事態をやっと飲み込めた中佐が、沈み行く装甲車から凄い形相で俺を睨んで言った。


「覚えてろよ、このままで済むと思う…ゴボゴボッゴボッ……」


 予想以上に川は深かったようだ。


 そして俺達は危なげながらも、時間内でなんとかゴールしたのだった。


 俺達がⅢ突Gから降りるとゴールに待ち受けていた訓練生が、どっと俺達メンバーの周りに駆け寄ってくる。

 そして俺の背中を代わる代わる訓練生達がバシバシと叩いていく。

 これが最初にゴールできた戦車の乗員への、恒例の迎え方なのだそうだ。

 だけど、俺以外の女性陣は背中じゃなくて頭を撫でられてるように見えるんだが。

 特にコボルトのナミなんかは首をモフモフされてるじゃねえか。

 おかしくね?


 さらに色々と声をかけられる。


「やっぱ、お前すげ~よな。小っちゃいくせに中々やるな」


 小っちゃいは余計だ。


「おい、なんで女の子ばっかりなんだよっ、ハーレムかよ!」


 背中の叩き方が強いって!


「なあ、なあ、操縦士の女の子誰だよ。頼むから紹介してくれよ?」


 お前の名前は“呪いのノート”に書き加えておこう。


「コ、コボルトじゃねえか。本物だよな、すっげぇ……モフモフだ……」


 おいナミ、その“クゥ~ン”って声はなんだよ。


「ケン・モリス訓練生、新記録だそうだ」


 はい、はい、記録ね、んん、新記録?

 よく見れば教官、というか判定官をやっていた下士官が声を掛けてきたようだ。

 その新記録という言葉に一同が静まり返る。


「ええと、何の新記録なんでしょうか。タイムはギリギリだったですよ」


 そういえば校長に、障害物競争のタイムレコードを楽しみにしてる的な事を言われてたけど、制限時間ギリギリだったからそれはないしな。

 

「いや、タイムレコードではない。モリス訓練生、お前の戦車の撃破数、つまり教官戦車の撃破数の新記録だ」


 あれ? そんなに撃破したかな。


「撃破数なんて3~4両じゃなかったですかね。新記録なんていうほど倒してないですって」


 俺がそう言い返すとその判定官は即座に返答する。


「何を言ってる。もしかして知らないのか。ああ、それなら教えてやる。お前はフィールド内のすべての敵を排除したんだよ。トーチカを含めてな。タンク・トラップがかなり有効だったようだぞ。これは戦車学校創設以来の快挙だ。搭乗員全員の名前が学校に残るぞ。特にモリス訓練生、お前は戦車長としてレコードホルダーの記録が残るからな。表彰もあるぞ」


 その話を聞いた途端、エミリーにミウとナミの3人はお互いに手を取り合って大喜びだ。

 周りで聞いていたギャラリーもざわつく。

 でも俺はというと。


「はい、そうですか、あざっす」


 と素っ気なく返したに過ぎない。

 だってこの学校の記録に残ったところでねえ。

 別にどうでもいいわ。

 まあ、口には出しませんでしたけどね。

 ハンター業界だったらそれなりに喜べたんだけど、この学校じゃねえ、素直に喜べませんて。

 特に金になるわけでもないし。

 そもそも実力と言うよりも、バケツ・トラップっていう裏技での記録だしな。

 まあ、もらえるもんは貰っておくか。





 そして翌日、卒業式典が平民と貴族一緒に行われ、各種の表彰式も同じ式典で行われた。

 俺は戦車長として個人的に表彰され、戦車学校名誉生徒とかに抜擢された。

 勉強は赤点ギリギリだったのにな、なんか他の訓練生に申し訳ない。

 それと副賞とかで、Ⅲ突Gの乗員全員に自分の名前が刻印された拳銃を貰った。

 それも高級革製ホルスターと一緒にだ。

 俺は口径8㎜のホクブ14型拳銃で女性陣は同じくホクブ小型拳銃だ。

 特に女性陣が貰ったホクブ小型拳銃は中々手に入りにくい品で、正直言えば俺もそっちが欲しかった。

 ただし、俺の14型はカスタムメイドで将軍が持つような奴だ。

 ホクブといえばケイの実家のホクブ兵器産業の事だな。

 そのホクブの武器が副賞というのは、何らかの力が働いてる臭いが、この際どうでもいいか。

 軍隊にいれば親に連れ戻される心配はないらしいしな。


 それに驚いたのが貴族連中の表彰シーンだ。

 ケイが表彰されていたからだ。

 なんでも実技はダメだったらしいが、座学は行内トップだったんだと。

 まあ、それだけではないような気がするんだがな。

 ここでも大企業の力が働いたんではなかろうか。

 ソーヤとタクは貴族界ではそれほど力を持っていないのか、成績も普通だし何も賞を取っていなかった。

 ちょっと可哀そうだな。

 そういえばケイの爵位を聞いてないな。





 こうして俺達は戦車学校を卒業した。

 これで晴れて正式に階級が決まり、配属先が指示される。


 ケイ・ホクブ…少尉

 タク・ナンブ…軍曹

 ソーヤ・ラムド…軍曹

 ケン・モリス…伍長

 エミリー・モリス…上等兵

 ミウ・アベイ…1等兵

 ナミ・ヤシキ…2等兵

 

 という階級になった。

 エミリーは魔法が優秀だったので上等兵スタートとなり、魔法記章まほうきしょうが左腕に着けられた。

 この記章が着いていると魔法特技兵という種別になるようだ。

 ミウも魔法記章まほうきしょうが着いている。

 魔法がある一定レベル使える兵士が着けることを許される腕章わんしょうだ。

 なんかはくがつく感じでちょっと羨ましい。


 そして配属先が書かれた命令書が今、小隊長であるケイの手元にある。

 ケイがその命令書に目を通して言った。


「ん~、なんかゴブリンとの最前線へ送られるみたいね。ま、オーク戦線じゃない分よかったわね」


 それを聞いた俺が感想を漏らす。


「そっか、俺はちょっと物足りないけどな。で、いつ出発?」


 俺の言葉を聞いたケイが急に声を荒げる。


「おい、ケンちゃん伍長。上官に向かってその口の利き方はなんだ」


 え?

 いきなりなんだよ。

 だいたい“ケンちゃん伍長”って呼び名がおかしいだろ。

 ったく、腹立つけどしょうがない。


「はっ、申し訳ありませんっ。小隊長」


 するとケイ。


「ふふふふ、ああ良い気分なこと。よし、その場で回ってガーガー、ピースカピーピーって言ってみて」


「ケイ……マジで“ピー”したり“ピーピー”したりするぞっ!」


「まってよ、冗談、冗談だからぁ。何、本気にしてんの」


 いや、冗談に聞こえなかったぞ。

 まあ、いいか。


 こうして俺達は戦場へと向かうのだった。









さて、遂に戦車学校卒業です。


そして主人公はゴブリン戦線へと向かいます。

あれ?

ハンターの時と変わらない?


いいえ、そんなことは…ない……と思う……



ホクブ14型拳銃とはナンブ14年式拳銃の事です。

ホクブ小型拳銃はベビーナンブの事ですね。







という事で次回もよろしくお願いします。








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