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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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161 仕返しの罠





 車高が低いというのがやっぱり有利に働いている。

 人間の背の高さほどある草が上手く車体を隠してくれているのだ。

 そのおかげで敵は俺達を追い切れていないようだ。


「よし、今のうちだ。かかれっ!」


 何をやっているかと言えば、トラップをしかけている真っ最中だ。

 教官達がトラップをあちこち仕掛けているのだが、沼のトラップ以外は全部避けて通ってきた。

 といっても全部、操縦手のエミリーが気が付いて勝手に避けて来たんだけどね。

 早い話、教官達の生ぬるいトラップに対して、“教育”してやろうという訳だ。

 まあ、“仕返し”ともいうが。


 それで模擬弾の弾頭部の塗料を抜き出してのトラップ作成に、貴重な時間を割いている真っ最中なのだ。

 

「あ、その木の枝がちょうど良いかな。ロープを垂らしてくれ」


 と俺が言えば、直ぐに獣人のミウがささっと器用に木に登って作業を始める。

 そしてあっという間にトラップを仕掛ける。

 トラップといっても非常に簡単なモノ。

 時間が余りないから、戦車が通りそうな場所の木の枝にロープをぶら下げて、その先に塗料入りのバケツや砲弾の空薬莢をぶら下げる。

 そして戦車が通ればそれにぶつかり、中に入った黄色い塗料がぶっかかるという罠。

 そんなトラップを逃げながら数か所仕掛けた。


 それでもまだ敵には視認されてはいない。

 しかし気配なのか草木の動きなのか排気煙を視認したのかわからないけど、目星をつけて模擬弾を撃ち込んでくる。

 まあ、そう簡単には当たらないとは思うが、逃げ回ってばかりはいられない。

 この戦いには3時間という時間制限があるのだ。


 ならばいっその事、思い切った行動もありかもしれない。

 敵の数は砲撃からして恐らく4~5両だ。

 

 やってみるか。


「よし、そろそろ、敵を攪乱かくらんするぞ。エミリー、敵の合間を縫って走ってくれ。ミウは動くモノがあったら自由に撃っていいぞ。ナミ、連続発射するから全力で装填頼むぞ」


「「「了解!」」」


 掛け声とともにエンジン全開で木々の間を突っ切ていく。

 直ぐにロックアイ軽戦車が前方を右から左へと横切る。

 しかし左に走り去るときには黄色い塗料が側面砲塔を染めていた。


「撃破確認! 次!!」


 俺はハッチから顔を出して周囲を警戒し、その情報を車内無線で乗員に伝える。

 するとエミリーは俺が思った通りに操縦し、ミウは俺が撃ちたい方向へ砲弾を発射する。

 するとナミは直ぐに次弾装填し、装填手用のハッチから顔だして後方を警戒し、その情報を俺に知らせてくる。


 なんか皆、成長してねえか?

 戦車学校ってやっぱり凄いのか?


 ナミが後方にシーマン戦車が見えたと伝えてきた。

 俺は即座に車内無線でそれを知らせる。

 するとⅢ突Gは180度回転してピタリとその方向へ砲身を向ける。

 それをミウが微調整して照準する。


 そして砲弾が発射されると直ぐにⅢ突Gは動き出し、その場を移動する。

 するとそこへ敵の砲弾が撃ち込まれるも、すでに俺達はいない。


 Ⅲ突Gの長砲身75㎜砲から発射された模擬弾は、シーマン戦車の砲塔正面を黄色く染めた。


「シーマン撃破っっ、シャアァァァァッ!!」


 俺達の実力はベテラン戦車兵に通用するってことだ。

 何よりもこの“ドランキーラビッツ”のメンバーで倒せたのが嬉しくてしょうがない。

 皆もそれがわかっていて車内が一瞬湧くのだが、敵はまだ少なくても3両はいる。

 俺が直ぐに「まだ終わってないぞ」と言えば、戦闘モードへとみんなの表情が直ぐに変わる。

 喜ぶのはまだ早いのだ

 

 ただしシーマン戦車が撃破された途端、敵の行動が著しく変わった。


 防御そっちのけで突撃してきたのだ。

 といってもこちらの正確な位置まではバレてないはず。

 でも俺達も敵の正確な位置が判っていないから、どっちも少し焦っているというか、混乱しているというかなんとも言えない行動だ。


 俺達の位置を適当に予想したんだろうか、敵戦車の1両が突撃してきた。


 しかし、残念なことにそこにはすでに俺達の姿はない。


 つまり、トラップを仕掛けたところに突撃したという事だ。


 非常に残念なのは、俺達の今いる場所からだと、敵戦車がトラップに引っかかる瞬間を見れないということだ。

 それだけが本当に悔しい。


 案の定、しばらくしてトラップを仕掛けた辺りから、撃破の旗が上がるのが確認できた。

 車種は判らないけど、これで敵戦車が1両減った事は確かだ。

 シーマン戦車だと嬉しんだけどな。


 その時、ナミが教官達の無線を傍受したらしく、その回線内容を車内へと流してくれた。


『なんだ、どうしたってんだ。何、罠が仕掛けてあっただと? 罠ってなんだ――はあ? 敵が仕掛けた罠だと! ふ、ふざけるなぁぁぁあぁああ!!!』


 その無線を聞いて俺達は大爆笑だ。

 そしてさらに。


『こちら2号車、どうした?』

『すまん、こちら3号車。罠にはまった……』

『どういうことだ? 仕掛けた罠の地図は渡してあるだろう』

『味方の罠じゃない。例の教官気取りの訓練生が罠を仕掛けやがったんだよ。それも急造だが効果てき面の罠をな。完全にやられた、後を頼む。あいつ思った以上に手練れだ、気を付けろ』


 それを聞いて俺は拳をギュっと握りしめた。


「よし、今のうちにここからずらかるぞ。時間があまりない、ゴールまで突っ走れ!」


 こうしてⅢ突G戦車は全力で敵戦車との混戦する中を突っ走るのだった。










投稿間際に大ミスに気が付いて急遽修正。

危ないところで大ミスをやらかすところでした。

(;゜Д゜)

おかげでだいぶ文字数が少なくなりました。







という事で次回もよろしくお願いします。



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― 新着の感想 ―
[一言] 〉すまん、こちら3号車。罠にはまった…… 死体が喋ってますね、あとで教官たちは吊し上げられるかも…。
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