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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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159話 トーチカ攻略





 

 スタートの合図であるフラッグが振られた。


 それと同時にエンジンを唸らせて一気に加速、直ぐに茂みの中へと入って行く。

 スタートして直ぐの狙い撃ちを避ける為だ。

 これで何両かが仕留められているとの情報で、俺達もそれを警戒してのコースどりだ。


 しかし茂みに入ると75㎜砲の長い砲身が邪魔をする。

 砲身に木のつたや長い草が絡みつく、さらに急な窪みだと砲身の先が地面につっかえそうになる。

 くそ、これは考えてなかったな。

 だけど今更ぼやいてもしょうがない。

 最初の計画通りのコースを取る。


「エミリー、止まれ!」


「え、え、待って、待って~、そんなに急には無理よお」


 相当な速度が出ているのだ、急には止まれない事くらいは理解している。

 それを見越しての停車命令だ。

 エミリーは車体をドリフトさせながらも速度を落とし、停車寸前で元の方向へ車体を向けて止まった。

 改めて考えても、恐ろしいほどの操縦技術である。

 「これ戦車やぞ?」っていう突っ込みが聞こえてきそうだが、それは「エミリーだから」という返答で解決できるだろう。

 キャタピラが外れないのは足回りのチューンのおかげだ。

 

 停車したところで俺は、キューポラから飛び出した砲隊鏡を使って前方の違和感を覗き見る。

 ビンゴだ。


「前方400mに偽装が施された戦車。ミウ、見えるか?」


「はい、見えてます。酷い偽装ですね」


「大きさからいってロックアイ戦車だな。狙えるか」

 

 すると直ぐにミウから「照準完了」と返答があった。

 模擬弾はスタート地点からすでに装填してあるから、直ぐにでも発射できるという訳だ。


 一応、他に敵車両はいないか周囲を見回すも、敵戦車は見当たらない。

 ここで俺は迷う。

 

 今なら必中の距離で敵に気が付かれていない。

 だが上手く迂回すれば戦闘は避けて通れる可能性は高い。

 どうする?


 みんなが俺の命令を固唾かたずを飲んで待っている。


 そして俺が出した答え。


「てっ!」

 

 ミウが即座に模擬弾を発射。


 真っすぐな弾道は敵戦車の側面に吸い込まれて、金属音を響かせて弾頭は破裂。

 そして撃破判定の印である黄色い液体をその車体へと散らした。

 すると直ぐにハッチから教官が出て来てキョロキョロと辺りを見まわす。

 被弾してもなお〈と言っても塗料で染まっただけだが〉、何がどうなったか直ぐには理解できないらしい。


 俺は悪戯心が湧きだした。


「全速前進、あの戦車の横を通り過ぎてくれ」


 Ⅲ突Gは進路を撃破戦車へと向けて走り出す。

 近くまで来るとハッチから顔を出している教官が見えた。


 俺が足を砕いた教官じゃねえか!


 俺に復讐したくてスタート付近に陣取ってやがったな。

 まあ、その程度の腕じゃ俺は倒せんよ。


 だけど、なんか凄く悔しそうだな。

 ちょっと可哀そうだがこれも卒業試験なんでね。


 その教官が俺達の戦車にやっと気が付き、俺の視線と教官の視線が交差した。

 俺は咄嗟に笑顔で手を振っていた。


「あ、どうもっ」


 するとそれがかんに触ったのか、急に拳銃を抜いてこちらに撃って来た。

 もちろん模擬弾なんだが。

 俺は急いで車内へと身を隠しハッチを閉じる。

 戦車に対しての拳銃弾の命中は無効ルールなので問題ないのだけど、撃破された乗員が撃ち返しちゃまずいでしょう。

 これは車体上面に取り付けてあるリモート式の34型多用途機関銃の出番だな。

 俺はその教官を照準するように機関銃手でもあるナミへ命令する。


「ナミ、教育してやれ」


 俺の言葉にナミが反応してこちらに顔を向ける。

 その表情は笑っている。

 いつも無表情なあのナミがだ。

 そして不敵な笑みのまま言った。


「よろこんで」


 そして銃弾は発射された。


 発射速度が恐ろしく速い為、まるで電動のこぎりの音の様に聞こえる。

 わずかの数秒間だけの発射だったのだが、それでも発射された弾丸は相当数だったようで、教官の上半身は黄色で埋め尽くされた。

 あのインクは魔法水でなければ落ちないから、あの教官はあの格好で待機所へと戻って皆に恥をさらすことになるな。


 そこでやっと近くにいた判定官が黄色く染まった教官の元へ駆け寄って、数人がかりで取り押さえるのが見えた。

 「何をする、俺は教官だぞ」とかわめいてるな。


 さて、次へ行こうか。


 Ⅲ突Gはさらに茂みの奥へと進んでいく。


 先ほどの戦闘音で周囲が騒がしくなったのがわかるんだが、やはりこの車高が低いのは有利に働いているようで見つかる気配がない。


 俺はふとつぶやく。


「このままだと後10分も掛からないでゴールしちゃうよな」


 するとエミリー


「う~ん、そうだけど、何が言いたいの?」


「つまらなくねえか」


 するとナミが口を挟む。


「すいませんが私も物足りないです。士官候補生の付き人として入ったので、実車教育は受ける権利さえありませんでしたし。なんかストレス溜まってます、重要な事なのでもう一度言いますと、“溜まってます”」


 ナミが怖い。

 いつもと違う。


「そ、そうだな。それなら少しくらいなら時間もあるしね。ここはちょっとだけ暴れてからゴールってことでどうでしょ?」


 と俺は恐る恐る言ってみたんだが、その意見はすんなりミウと影の番長にも受け入れられた。


「うん、お兄ちゃんがそう言うなら私もいいよ。少し暴れよっか」


 いや、エミリーの暴れるのはちょっと待てなんだが。

 それは口に出し言えない。


「じゃあ、トーチカでも潰すか。場所もわかってるから簡単だしな。そういえば時間制限ってあるのか、この卒業試験?」


「お兄ちゃん、それくらい知っておいてよね。えっと確か3時間だったと思うよ」


「よし、それなら少し余裕もって1時間前までは暴れようか」


 余裕をぶっこき過ぎなこの俺の発言。

 後になって後悔することになるのだった。











箱庭的な中での戦闘が続きます。

次回はいよいよ後方待機中だった戦車部隊の戦車、シーマン〈M4シャーマン〉が主人公に相対します。

教官とは違い実戦部隊です。

それが何両参加しているかは現時点では不明ですが、主人公達は苦戦することに。


さて、どうやって切り抜けるのか?!

乞う御期待。




ということで次回もよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 車体上の機銃ですが、弾倉交換は済ませたのでしょうか? もしも換装していなかったら、最後の最後で泣きを見ることになりそうな予感がして性がない
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