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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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158話 卒業試験







 俺は卒業試験について必死に調べて回った。

 その名の通り、試験で合格しないと卒業できないからだ。


 それで解かった事。


 卒業試験恒例の障害物競争。

 それはスタート地点からゴール地点まで戦車で進み、そのタイムを競うというものだ。

 スタート地点とゴール地点は定めてあるものの、途中の経路は自由という変わった障害物競争だ。

 さらに各所に障害物と言われるトーチカや戦車が待ち構えており、それに撃破されてしまったらその時点で試験は終わりだ。

 やはりここでも模擬弾を使う為、命中すれば貫徹とかは関係なく撃破となる。

 厄介なのは、それらの障害物を操るのはこの学校の教官達ということだ。

 つまり俺の事を嫌っている人達だ。


 特に俺が木銃で足を砕いた教官や、模擬演習で赤軍にいた教官達は息巻いてると噂に聞いた。

 それと、赤軍の指揮官だった中佐が障害物側の指揮をるらしいことも噂されている。

 それも当初決まっていた人事をくつがえしての参戦らしい。

 ぜってぇ俺に復讐する為だろ。 


 これは対策を練っておかないと卒業できない、いや、それどことろの騒ぎじゃすまされないかも。

 

 幸いにも入隊前に使わない戦車や装備は金に換えたから、金銭的には多少余裕がある。

 ポーションの類や魔法の機器類は買える内に買っておくことにした。

 下手したら命に係わるからここで出し惜しみはしない。


 そして、楽しい学園生活はあっという間に過ぎ去って、いよいよ卒業試験という一大イベントが始まろうとしていた。


 朝早くから全員が集められ、簡単な説明の後、卒業試験である障害物競争はいきなり始まる。


 演習場内に障害物場が作られ、スタート地点とゴール地点が設けられている。

 スタート地点とゴール地点が決まっているだけで、どういったコースを通ろうが自由というルール。

 戦闘の有無は関係なく、撃破されずにゴールまで時間内でたどり着けばよい。

 撃破された場合は再テストとなるが、それも3回までと決まっているらしく、暗黙の了解で3回目のテストは教官達が手を抜く仕組みの様だ。

 落伍者を多く出し過ぎるという事は、前線行きの兵士の数を少なくすることになる。

 それを避けるためにも卒業生の数はあまり減らせないという訳だ。


 そして卒業試験という名の障害物競争が始まった。


 最初の1回目の挑戦で出発した訓練生のほとんどは、むなしく黄色い命中弾跡を派手につけて帰って来る戦車ばかりである。

 時々ゴール地点へと飛び込んでくる戦車もいるが、どれも1時間以上かかっている上に、良く調べると黄色い弾着跡が見つかり撃破判定となっていた。

 最短コースでいけば20分弱で通り抜けられるはずなのだが、やはりアンブッシュしてそうな場所は警戒して迂回したりするコースを取っているのだろう。

 ただしトーチカは移動ができないので、その設置場所は初めから知らされている。

 しかし、戦車と違ってトーチカに命中しても破壊とはならず、わずかな銃眼の隙間から中の兵器に命中させて初めて破壊となる。

 事実上無敵と言っていいかもしれない。


 そして俺達は今、乗員と共に作戦会議中である。

 校長が言った通り、乗員はドランキーラビッツの平民のメンバー。

 それは言わずと知れた我が愛する妹、エミリー。

 そして必中のモフモフであるミウ。

 そういえば、ミウは必中の魔法が戦車砲にも使えることは秘密だが、魔法自体が使えることは軍に申告済みだ。

 そしてもう1人、ケイの付き人として遅れて入学した本当のモフモフ、コボルトのナミだ。

 ナミはゴブリンの戦闘奴隷を送り届ける為、少し遅れての入学だった。

 ケイの付き人として入学という経緯なので、平民だが貴族であるケイと一緒に行動、つまり士官候補生の校舎にいたという訳だ。

 それを試験の時だけこちらになんとか呼び寄せた。


「ナミ、大変なところすまないな。ところでケイ達の方はどうなんだ?」


 俺が気になって士官候補生の生活を聞いたところ、恐ろしい返答が返ってきた。


「ケイさんは上級貴族のうえ、軍閥にも顔が利く有力企業の血縁ですから、完全に女王様扱いです。だから全く問題ありません」


 ケイめ、生れながらにして人生の成功者かよ。

 見てろよ、嫌ってほど尻を引っ叩いて「もうしませんっ」って言わせてやるっ――妄想の中だけどな。

 

 まあ良い。

 とりあえずは作戦を練らないといかんからな。


 ちなみにコボルトの入隊は通常は却下されるのだが、今回は付き人という事だったんで入隊を許可された。

 コボルト種族と人間はそこまで仲が良くないという事だ。

 とはいってもケイの軍閥での影響力という圧力を軍の上層部が気にしたんだろうな。


 そんなことを考えているうちにも皆から意見が出される。

 一番の問題はどういったコースをとるかだ。

 この選択で待ち伏せの有無や、コース自体の難易度までが決まってしまうのだから。


 あ、ボス君達の車両だ。

 この間、焼きを入れてやった不良先輩グループの戦車だ。

 車種は50㎜砲装備の8輪装甲車、『パーマ』とか言ったかな。

 時速80㎞も出る快速重装甲車だ。

 快速にモノを言わせて一気に突っ切る作戦とか言ってたな。

 ただし演習場は舗装されてないからそこまで速度は出ないはずだ。

 しかし8輪は伊達ではないからどうなるか楽しみだ。


 しかし、しかしである。

 スタートして20分で牽引車に引っ張られて帰ってきた。

 トーチカの脇をすり抜けようとして、側面に命中弾を受けてひっくり返ったようだ。

 あの快速装甲車を仕留めるとは、中々腕の良い教官がトーチカに配置されているようだ。

 これは警戒しないといけない。

 マジでタコ殴りにされる。

 そうだ、最初にみんなに言わなければいけなかった事があったな。


「なあ、みんな聞いてくれ。俺は教官達に凄く嫌われている……どうだ、参ったか」


 エミリーがさげすんだ目で俺を見ている。

 さすが我が妹だ。

 俺の性格がわかっているようだ。

 敵を作るのは得意だからな、俺。


 そんなことをしているうちに、早くも俺達の出番がやってきた。


 なんだか速いなと思ったら、なんと1両も無傷でゴールにたどり着けず、早い段階で撃破されたらしい。

 つまり、成功車両なしだ。

 チャンスはあと2度あるとはいっても、これはあまりに酷い有様だな。

 訓練生のレベルが低いのか、教官のレベルが高いのか、それともその両方なのか。


 よし、ここはドランキー・ラビッツの凄いところを見せましょうか。 

 初回チャレンジでゴールして見せましょうかね。

 

「全員乗車、急げっ」


 さて、俺が選んだ戦車はⅢ型突撃砲だ。

 シーマン戦車は車高が高く見つかりやすい。

 見つかってしまえば、あっという間に無線で居場所を連絡されて、袋叩きにされるのは目に見えている。

 それならばと車高が低く見つかりにくい突撃砲を選んだのだ。

 砲塔がない分不利なのだが、車高が低く見つかりにくく砲弾にも当たりにくい。

 キューポラの増設で周囲の警戒力も向上してる。

 そしてリミッターがカットされているので速度も出るし、照準器は変更したばかりでシーマン戦車のものよりも圧倒的に優れているし、今や長砲身の75㎜砲を搭載しているのだ。

 低伸弾道性能に優れ初速も早い。

 上手くいけばトーチカの銃眼も狙える。

 

 操縦手は言わずともエミリー。

 砲手がミウでナミが装填手だ。

 俺はいつもの様に指示するだけの戦車長だ。

 戦車に乗ったら得意の近接戦闘なんて役立たないからな。

 これでけ好条件がそろえば無敵だろう。


 そして、出来るだけ発見されないように、出来れば戦闘しないでゴールする、というのが重要な作戦だ。


 そして長砲身75㎜砲を搭載した3型突撃砲は、スタート地点でエンジン音を響かせていると、他の訓練生の注目を浴びる。

 戦車持ち込み者はあまりいない上に、ここまで改造してある戦車もここではあまり見ないからな。

 今回は転輪と軌道輪に呪符を施し、懸架装置もチューンしてある。

 エミリーの操縦に耐えられる足回り仕様にしたのだ。

 それと長砲身75㎜砲に換装したときにマウント部分を変えてある。

 今までは台形の角ばったマウントだったんだが、今は丸みを帯びた形状で避弾経始ひだんけいしにも優れている。

 外見上の変更ではここが一番わかりやすいかな。

 今までの区別するために、グレートバージョンのGの頭文字で、3型突撃砲Gバージョン、略して『Ⅲ突G』だ。


 さあて、目にもの見せてやろうか。

 

 









パーマ装甲車はドイツのプーマのことです。


今回はキューポラとか懸架装置とか転輪に軌道輪などと専門用語連発でした。

一般の方にはちょっと難しかったかもしれませんが、そこは軽くスルーしても恐らく大丈夫かと思います。

知らないと損をするとかはないです。

(本当は知ってた方が良いw←ミリオタ)





という事で次回もよろしくお願いします。

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