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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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156/282

156 軍事裁判?!






 他の乗員達と一緒に教官室の扉の前に立つ。


「みんな、覚悟はいいか。入るぞ」


 俺の掛け声に乗員達は黙って頷くだけだ。

 演習後に直ぐに呼び出しという事は間違いなく命令違反についてだろう。

 俺だけじゃなく、みんなの緊張感も半端ない。


 俺は深呼吸をした後、意を決して扉をノックしようとしたその時だった。

 廊下を1人の教官が歩いて来て声を掛けてきたのだ。


「そこの訓練生、もしかしてお前らが赤軍司令部を奇襲したメンツか?」


 折角覚悟を決めた矢先に横ヤリを入れられた感じだ。

 一気に緊張感が吹っ飛んだ。


「は、はい。そうです。教官殿。呼び出しに応じてまいりました」


 俺がそう言うと、教官が皆を見回した後、恐ろしい事を言った。


「そうか――お前がケン・モリスみたいだな。お前だけ別室だ、こっちだ」


 なんと!

 俺だけ懲罰部隊なのか!

 勘弁してくれ。


「何やってる? ここだ、入れ」


 ショックで茫然としていると、隣の部屋の扉を指さす教官。


「へ? こ、ここですか?」


 変な声を上げてしまったんだが、自分で言うのも何だがそれは無理もないと思う。

 というのはも会議室と書いてある部屋だからだ。

 会議室で会議ということは……

 考えたくもないが『軍法会議』という言葉が頭に浮かぶ。


 教官はなおも入れとかす。

 俺は恐る恐るノックして扉を開けるしかない。


「し、失礼します。ケン・モリス訓練生、入ります」


 すると中には大きな長テーブルが置かれていて、校長を挟んで両サイドに赤軍と青軍の指揮官である中佐、そしてその他諸々の士官連中が座っていた。


 これはやはり軍事裁判か!

 終わったよ……


 これは最低でも懲罰部隊行き、最悪マジで銃殺刑だわ。

 ああ、くっそ~。

 もっとエミリーにイチャイチャしとくんだった。

 もっとミウの尻尾をモフモフしとくんだった。

 それと1回でいいからケイの尻を力一杯、引っぱ叩いておきたかった。

 その時のケイの表情を見ないで死ぬのはいやだ~

 神よ、なぜわたくしを見放すのですか~~~~~


「ケン・モリス訓練生、そこへ座れ」


 有無を言わせない口調だった。

 俺は言われるがまま椅子に座り、覚悟を決めた。


 話が始まり、それを聞いていると、どうやら軍事裁判ではないような気がしてきた。

 時折、赤軍の中佐が何か俺がズルをしたんじゃないか的な事を言ってきた。

 見つからずに司令部まで来れるはずがないとか。

 模擬演習での俺達の戦車の行動の事だ。


 しかし俺が侵入経路の説明をすると、そこには赤軍部隊の配置をしていなかったらしく、中佐は何も言えなくなってしまった。

 だいたいどうやってズルをするんだよって話なんだが。

 

 話の流れからすると裁判っぽい気もしないではないんだが、俺が命令違反したことなど全く出てこない。

 むしろどうやって2両の戦車だけで司令部を奇襲して、尚且つ占領したかが焦点になっているような。

 

「そういえばケン・モリス訓練生、貴様の上官の小隊長からの命令はたしか偵察だったはずだな。それなのに何故、偵察任務から奇襲へと作戦を変更したんだ。それに赤軍の司令部の位置も知らなかったはずだが」


 青軍の司令官からついに命令違反についての質問が出てしまった。


「は、はい。敵情を見る限り、士気、及び練度は最低だったのでこれは少し教育して――あ、違う、赤軍本隊の偵察まで行けるんじゃないかと。そしたら“たまたま”赤軍司令部が見えてしまいまして。そしていつの間にかに戦闘になってまして、気が付いたらこんな結果に……」

 

 やばい、これでごまかせるか。


 すると校長が言葉を挟む。


「なるほどのお。お前の腕前からしたら敵司令部の奇襲くらい簡単だったということじゃな。そしてそれを実際にやって遂げたという事かの。それを“教育”という言葉で表現したか。ほっほっほっほ、なかなか面白い奴じゃな」


 これはやばいのか、それとも良い方向なのか、どっち?

 この緊迫した環境に耐え切れなくなった俺は、とうとうストレートに聞いてしまった。


「あ、あの、俺ってもしかして銃殺刑ですか、それとも懲罰隊行きですかね?」


 すると校長は少し驚いた表情で言った。


「何を言ってるのじゃ。そんなはずなかろう。モリス訓練生、お主はこの戦車学校始まって以来の快挙をやって見せたのじゃぞ。最短時間のうえ最小部隊での勝利。褒められる事はあっても責められる事はない。安心せい」


 え?

 そうなの?

 俺は無罪放免ってことか?

 一応念の為聞いてみる。


「それでは、俺は無実ってことで良いんでしょうか……」


「もちろんじゃよ。それとまだ言ってなかったんじゃがの、卒業時には下士官として任務に就いてもらう事が内定しておるしの。ええと、伍長だったかのう。じゃがのお、これは決定ではなく、あくまでも内定じゃがな」


 ちょっと驚いた。

 確か平民は新兵の学校卒業したら兵卒、つまり2等兵か1等兵となるのが通常だ。

 成績の良い者や元ハンターで3等級とかだと上等兵、2等級だと兵長、1等級だと伍長もありえるらしい。

 さらに例外で、元ハンターとしても実績があり、学校でも優秀だと軍曹スタートもあるらしい。

 しかし平民は下士官が精一杯で少尉以上の士官にはなれない。


 そんな中で俺は伍長からのスタートだと。

 1等級ハンターと同じ階級だと。

 全く実感が湧かないんだがな。


 想像できるのは「お前生意気だぞ、やっちまえ」という展開。

 ぜってぇいじめられるじゃねえか!

 兵長くらいだったら学校で上手いことやったからと言い訳できる範囲だろう。

 元3等級ハンターレベルで伍長はまずくないか。

 かといって俺に拒否権などない。


 俺の混乱とは関係なく校長は話を進めていく。


「それからのお、もう知っておるとは思うんじゃが卒業試験があるじゃろ」


 知らんがな。


 正直に初耳と知らせるとわざわざ説明してくれる。


「なんと、知らないとな。う~ん、そうじゃな、簡単に言えば戦車で走る障害物競争じゃよ。ただし教官達が操る戦車が障害物なんじゃがな。もちろん模擬弾装備じゃよ。楽しみじゃのお、ふぉっふぉっふぉっふぉ……ごほっごほっ」


 大丈夫かこのおじいちゃん。

 校長はさらに付け加える。


「ゴッホ……そ、そうじゃった。その時はお主らのお仲間も一緒でも大丈夫じゃよ。ただし訓練生だけじゃがな。それと通常なら首席訓練生が最終走者となるんだがのお、今回は特別にお主の戦車が最終走者じゃよ。期待しているぞ」


 首席訓練生を押しのけての俺とは驚きだ。

 座学抜きなら俺もそこそこの成績なんだがな。


 でもエミリーとミウが一緒か、それなら無敵だ。

 教官共を蹴散らしてやる。


「それから今年はのお、この近くで整備の為待機している戦車隊がおってのお、何両かが卒業試験を手伝ってくれるそうじゃ。ふぉっふぉっふぉ、今年は白熱した障害物競争になりそうじゃのお」


 まて、実戦組が参加とか、俺が卒業できなくしたいのかよ。


 こうして軍事裁判と恐れていた会議は、単なる演習結果の調査と、俺の功績の確認と評価らしかった。

 早い話、褒められたみたいだ。

 でも卒業試験の話をされたら嬉しさも吹っ飛んだ。


 兵舎に戻ると呼び出された他のメンバーもいて、話を聞くとやはり聞き取り調査だったそうだ。

 でも卒業後の階級に関しては特にコメントはなかったらしいので、彼らの卒業後の階級は規定通り。

 よし、階級の事は同じ部隊の者には黙っておこう。


 しかし翌日になって学校中の誰もが俺の卒業後の階級の話を知っていた。

 もちろん通常なら首席訓練生が務める最終走者とやらの事もだ。


 これは学校在学中にも「お前が生意気な奴か」っていじめられるパターンじゃねえか。

 兵舎裏への呼び出しとか勘弁だ。


 こうして一躍有名になった俺は、残りの学園生活をなんとか生き延びていくのだった。














急にブックマがじわじわと増え出しているようで、皆さま有難うございます。




次話も8割ほど完成していますので、今日か明日には投稿できそうです。

あ、でも閑話っぽい感じです。




という事で次回もよろしくお願いします。

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