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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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147話 長砲身75㎜砲










 シャークスとの闘技試合が決定してしまった。

 武力では勝ったためしがないのだが、今回はエミリーが賭けの対象となっているのだ。

 絶対に負けられない。

 

 しかし切り株戦車じゃ不利な事は違いない。

 弾種は徹甲弾と徹甲榴弾のみという縛りまで了承してしまったのだ。

 これだから戦車性能を知らない素人は怖い。


 砲塔がない上に短砲身。

 対戦車榴弾が使えなければ砲身の短い歩兵砲と大差ない。

 相手のシーマン戦車と真っ向勝負という訳にはいかない。


 その代わりと言ってはなんだけど、闘技場はこっちで選ばせてもらった。

 

 人口的に作られたコンクリートの壁が多数建てられた場所、通称“ダンジョン”だ。

 

 別にダンジョンのように迷路になっているわけではないのだけど、まるで市街地であるかのように、コンクリート製や金属製のそれらしい遮蔽物しゃへいぶつが建てられているのだ。

 市街地と違うのは、その遮蔽物しゃへいぶつに人が入り込めないということだ。


 このような造りの闘技場なので、切り株戦車の短砲身に不利な長距離戦にはなりにくい。

 遠くても300m以下の距離となる。

 ただし砲塔がないのは不利という事で変わりはない。

 さらになぜかこの地は無線通信が入りにくく、モニターとのやり取りでの敵位置もつかみにくい。

 

 突然の遭遇戦となる可能性が高いのだ。

 となると上手くいけば敵戦車の側面や後面を取れる可能性もある反面、逆に取られる可能性も出てくる。

 だけど、この闘技場の遮蔽物しゃへいぶつの高さは、切り株戦車の車高よりも低い場所がひとつもない。

 常に切り株戦車は建造物よりも低い位置にあるということだ。

 だから敵戦車から遮蔽物しゃへいぶつ越しに視認される可能性が低い。


 逆にシーマン戦車は車高が高い。

 ちょっと切り株戦車の上に立って観察すれば、敵の位置を視認できる可能性が高い。


 ただ、一番の問題は正面同士でかち合った場合、切り株戦車の徹甲弾ではシーマン戦車の前面装甲を撃ち抜くのは難しい。

 だから対戦車榴弾が使えないという縛りは非常にきつい。

 側面に回り込むか後面に回り込めればなんとか貫徹できるかもしれない。

 そう、当たり所により貫通出来たり出来なかったりだ。


 これは何としても長砲身の75㎜砲に換装するしかない。

 最悪はエッグランチャーを使うか。

 戦車砲に対戦車榴弾は使ってはダメというルールだが、個人兵器として使ってはダメと言ってないからな。

 しかし意外と金髪リーゼントは考えているから、それくらいは想定済みの可能性もある。

 対成形炸薬弾の対応くらいはやってくるだろうなあ。

 まあ、用意できることはすべてやっておこう。


 まずは切り株戦車をアーク大尉のいる軍の補給所へ持って行こう。

 あそこなら普通手に入らないような軍需品も、金さえ積めば裏ルートを通じて手に入るからな。

 イケメンは嫌いだけど、この際そんな事言ってる場合でもないし。


 次の日の朝早くから、俺は切り株戦車を持って軍の補給所へと向かった。

 もちろん交渉事の上手いケイを連れて行くのを忘れない。

 そして何故か、いや予想はしていたか。

 エミリーが色々と理由を付けて一緒に来てしまった。

 もちろんアーク大尉に会うのが目的だろうがな。


 くそ、イケメンは滅びろ!


 そしてアーク大尉の許可を取って、“スパナ頭”のいる補給所に到着。

 3型突撃砲に搭載可能な長砲身75㎜砲はないか聞いてみた。

 すると、ガラクタが山の様にあり過ぎて、お目当ての75㎜砲があるかどうかまで把握できてないと言う。

 だから勝手に探せと。

 そして見つけたら安く売ってくれると言ってくれた。

 だけど、屑鉄くずてつの山はいくつもあり、その中から探すのは至難の技じゃないのか。

 まあ、やれるだけやってみよう。

 俺はひたすら屑鉄くずてつの山と格闘した。


 エミリーはパーツ探しをするわけでもなく、何かと理由を付けてアーク大尉に電話をしている。

 確か兎人とびとのロジャー大尉が裏稼業もやってるって言ってたよな。

 ヒットマン料金いくらか聞いておくか……まじで。


 そしてやっとの思いでガラクタの山の中から、3型突撃砲に搭載できる長砲身の75㎜砲を発見した。

 しかし、見つけたのはいいのだが最大の問題があった。

 その問題とは、見つけたのは闘技試合の前日の夕方だったのだ。

 もはや搭載作業が間に合う時間を超えていたのだ。

 



「ケンちゃん、どうすんのよ。こうなったら契約書の変更をお願いしに行く?」


 考え込む俺にケイがぼそりと言ってきたのだが、その光景を想像するだけで腹が立つ。

 どうせ土下座させたうえで金髪リーゼント野郎が、俺の後頭部を足の裏でグリグリしながら「お願いの仕方を知らないのか?」とか言いそうだ。

 それを想像して俺が否定の声を上げようとした時、いつの間に現れたのかエミリーが声を上げていた。


「絶対やだ。だいたいあの切り株の75㎜砲でも撃ち抜けるところもあるんでしょ。だったら負けると決まった訳じゃないじゃん」


 俺もだいたい似た様なことを考えていたんだが、賭けの対象になってるエミリーがそんな事言ってて良いのかってことだ。

 しかしながらそのエミリーに言われてしまったら、何も言えなくなってしまう。

 ケイもそれを理解しているのか、「エミリーさんがいいなら……」と目線を逸らす。


 そうなると少しでも強力な砲弾を買って来なくちゃいけない。

 今度は残り少ない時間で砲弾を探して走り回る事となった。

 そして買えたのは被帽徹甲弾くらいなもので、劇的に貫通力が増すという訳ではない。

 元々の砲の初速が遅いから、性能が良いと言われる徹甲弾にしたところであまり変わらない。

 こうして不安を残すまま、シャークスとの一騎打ちでの戦車戦を迎えることとなった。




闘技試合当日のお披露目タイムでシャークスのシーマン戦車は、特に想像を超えるような改造はなかった。

 しかし75㎜砲は長砲身の76㎜砲に換装されていたり、車体前面と側面の一部に補強材が組まれていて、そこに増加装甲代わりに土嚢どのうが詰め込まれていた。

 それと砲塔のまわりには履帯がぶら下げられている。

 増加装甲の類は試合後にすぐに取り外せるようにしたかったのだろうな。

 あれだけ土嚢どのうや履帯を取り付ければ機動性が結構落ちるからな。

 まあ、その程度は想定内だ。


 逆にシャークスのメンバーは、不思議そうに切り株戦車の砲身を眺めている。


 ちょっと違和感があったかな。


 俺は内心バレたかと不安でしょうがなかったが、ジロジロ見られただけで特に何も言われずに終えた。

 何を隠そう昨日の夜に、急造で長砲身の75㎜砲を作ったのだ。

 と言っても本物ではない。

 切り株戦車の短砲身の上から被せて長砲身に見せたまがいモノだ。

  

 なぜそんなモノを作ったのかというと、短砲身の75㎜砲のままだと堂々と正面から接近されてしまうからだ。

 腐っても奴らもベテランのハンターと名乗れるレベル。

 3型突撃砲の短砲身75㎜砲の威力がどれくらいか知っているはずだ。

 仮に知らなくてもそれくらいは調べてから試合に臨むはず。


 しかしこちらが長砲身の75㎜砲となると向こうも警戒しながらの行動となり、移動もゆっくりとなる。

 その隙に俺達は速度を上げて回り込もうって考えだ。

 前に改造したようにエンジンのリミッターはカットしてあるから速度だけは自信がある。

 試合開始と共に全開で突っ走る。

 電撃作戦の予定だ。


 ただ、時間が無かった為、長砲身のまがいモノの造りが雑だったのだ。

 それでシャークスのメンバーにジロジロ見られたという訳だ。

 感づかれてはないと思う……そう信じたい。



 そして闘技試合の時間が来た。













やっと試合が始まります。

因縁の対決です。






次回もよろしくお願いします。

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