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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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145/282

145話 フラッグ奪取







 俺に武器を向けていたゴブリン歩兵達が体制を崩すまいと床に手を着く。

 おかげで俺への攻撃はこない。


 そして次の瞬間、1階から俺達の今いる3階へ砲弾が撃ち込まれた。

 衝撃に耐えながら砲弾が放たれた方向に視線を移す。


 そこには壁を突き破って突入したスポンジ戦車が、砲弾と銃弾を撃ちまくる姿があった。


 それが判った瞬間、俺は猛ダッシュでフラッグへと走る。

 ゴブリン歩兵達がスポンジ戦車に気を取られている今がチャンスだ。


 しかし俺の手があと少しでフラッグに届くというところでまたしても床が崩落した。


「うおっ、あと少しなのにぃぃぃいいいっ!」


 やばい、この高さから落ちたらタダではすまん!


 ガラガラと音を立てて崩れ落ちる中、俺は咄嗟に壁から突き出ている鉄骨にしがみついた。


 俺がいた床が物凄い砂埃を舞い上げて崩落した。


 ゴブリン歩兵のほとんどがその崩落ほうらくに巻き込まれ、1階へとコンクリートと共に滑落かつらくしていった。


 フラッグはっ!?


 鉄骨にぶら下がった俺は首を左右に振りながらフラッグを探す。

 しかし瓦礫の埋もれてしまったのか、オレの今いるところからは全く見ることができない。


 下ばかりを見ていた視線をふと3階へと移すと、崩落から逃れたフロアが少しだけ残っていて、そのわずかに残る床部分にフラッグはひっそりと立っていた。

 俺の今いるところの斜め上3メートルのところだ。


 そのフラッグを守ろうと生き残ったゴブリン歩兵が、壁際にわずかに残った床をつたって、恐る恐ると近づいているのを発見した。


 そうはさせないと俺はラムド拳銃の銃口を向ける。


 左手は鉄骨に掴まっているから、ぶら下がったままの片手射撃となる。

 となると狙いが中々定まらない。


 1発発射――外れ。


 2発目発射――外れ。


 ゴブリン兵は武器を持っていないようで、かといって逃げ道もない。

 俺に向かってしきりに唾を吐きかけてくる。

 あいつはバカか?

 届くわけないだろ。


 あのゴブリンの今できる最善の攻撃なんだろうな。

 俺は引き続き拳銃を撃つ。


 3発、4発、5発目――外れ。


 やばい、近づいてくる!


 6発、7発、8発目――外したっ。

 そしてスライドオープン。

 弾切れかよ!


 それを見たゴブリン歩兵はパッと表情が明るくなる。


「まじかっ」


 その時、ズルッと左手の中で鉄骨がすべる。


「ひぃぃっ、あっぶねっ」


 危なく落ちるとこだったが、なんとか耐えた。


 しかしゴブリン歩兵は笑顔で近づいて来る。

 やばい、フラッグを持っていかれる!


 空の弾倉を捨て、一旦銃をホルスターに戻す。


 やばい、やばい、どうしよう。

 ゴブリン歩兵は一気に距離を縮める。

 そして遂にフラッグに到達するのだが、奴はそれを通り過ぎる。


 どこへ行く気かと思ったら、俺のぶら下がっている真上へと来て立ち止まる。

 そしてそのゴブリンはニタ~といやらしい笑みを見せると、仁王立ちしてやや前かがみで俺の顔を覗き込む。

 

 この流れは足で手を踏みつけられる、お約束の儀式なのか?!


 しかしそいつはそんなお約束な事はしなかった。

 そいつは俺に向かって唾を吐きかけ始めたのだ。


「うわっ、こいつ、きったねっ、よせって」


 さすがの俺も、その攻撃には我慢が出来ないほど腹が立った。


 弾倉交換出来ていない拳銃を抜く。


 しかし奴には弾倉が空だという事はバレていて、指差して笑っていやがる。


「おい、よだれ野郎。これでも喰らえっ」


 俺は拳銃を奴の左脚のスネ部分に向かって投げつけた。


「ギギャアッ!」


 見事命中。


 よだれ野郎は左脚を抱えるように持ち上げた。


 そんな足場が不安定な場所で片足状態だ。

 当然バランスを崩す。


 だが、そこでそいつが落下しておしまいなんてことはさせない。

 それでは俺の腹の虫が収まらないのだ。


 俺はその鉄骨を使ってさか上がりをするように跳ね上がり、わずかな部分の床に降り立つと、よだれ野郎の襟首を掴んで顔を寄せて言った。


「これはほんの お・か・え・し だっ」

 

 唇をブルルルルルッと震わせて、奴の顔面にフルオートで唾を吐きかけてやった。

 そして「あばよっ」と一言掛けてから1階へ突き落し、よだれ野郎が1階の床に激突するよりも前に拳銃を拾って弾倉交換。

 奴の驚愕の顔面に弾丸を叩き込んだと同時に、そいつは床に激突した。


 近接戦闘で俺に勝とうってのが甘いんだよ!


 俺はゆっくりとフラッグに近づき、ゆったりとした気持ちで勝利の合図の発煙筒を焚く。


 そして闘技場に試合終了のサイレンが鳴り響くのだった。



 



 

 

 後になってわかったんだけど、どうも予想とはだいぶ違った試合結果だったようだ。

 それは勝敗どうのこうのとかではなく、試合内容に関してだ。

 まさか戦車から降りて白兵戦を仕掛けるとは、誰も予想していなかったんだそうだ。

 ましてや単身敵陣へ乗り込むとか信じられないと。

 これは闘技事務所の人に言われたことだ。

 

 まあ、俺に言わせれば「ああ、そうなんだ」程度の事だ。

 それよりも早く街まで戻って祝勝会だ。


 俺達は市街地に到着すると興奮冷めやらぬまま、適当に目に付いたレストランに入っていつもよりも少し高い料理を頼んで、早速乾杯をするのだった。


 ゴブリン戦闘士を含めると20人くらいの団体となる。

 店の3分の一くらいを俺達で占めてしまっている状態だ。


 そんな中、10人ほどの団体が店に入って来た。

 どうやら予約してたらしく、俺達のすぐ近くに座った。

 そしてその中の1人が俺達を一瞥いちべつすると、わざと聞こえる様に言った。


「ここは田舎もんが来るようなとこじゃねえんだけどな。それにゴブリンを店の中に入れるとか、どこのバカチンだよ。臭いったらありゃしねえ」


 俺はその言葉に反応して声のする方へ振り返る。


 そこには見たことがある顔がいた。


「金髪リーゼント……」


 シャークスのリーダーである、壁ドンの“セイヤ・シマ”だ。





 







出ました、宿敵の金髪リーゼント。



前にエミリーに壁ドンしてナンパしようとしたあの男ですね。

闘技場でも1回だけ主人公は目にしていますね。


あの小憎らしい男です。


流れ的に……






という事で次回もよろしくお願いします。




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