120話 本隊
今回は短めです
.
木に登って見張りをしていたミウが何かを発見したようで叫んで知らせてきた。
「車両が複数こちらに向かってきます!」
俺はミウの登る木の側まで走り寄って見上げる様にして尋ねる。
「敵か味方かわからないか?」
するとミウは少し時間を置いたのち答える。
「ゴブリン軍です。間違いありません。敵車両は全部で10以上……その内戦車が5両います!」
まじか。
それはパトロールの数じゃないだろ。
まさかのいきなり本隊かよ!
とりあえずみんなには知らせないと。
「敵部隊接近、全員戦闘態勢!」
元々撤退する前提だったから防衛陣地も簡単に手直しした程度。
ゴブリンが使っていた陣地そのままに近い状態だ。
「え、どうしたの? お兄ちゃん、何があったのよ?」
エミリーは呑気すぎだな。
他のメンバーは戦闘配置についてるっていうのに。
「ゴブリンの本隊がここに向かってるんだよ」
するとエミリー。
「あ、そういえばゴブリンの無線機が、ほら」
エミリーが指さしたのはゴブリンが使っていた無線機で、俺達は使わないからとその辺に放置していたものだ。
その無線機からゴブリン語らしい声が漏れてくる。
「ナミ! この無線機の言葉を訳してくれるかっ」
するとナミがゴブリンの無線機の側まで来て、その内容に耳を傾けながら言った。
「ゴブリンの守備隊に応答するように言ってますね。ここにいたゴブリン部隊への連絡のようです」
「そうか、ならこう言ってやれ。“ここは人族が占領した”とね」
ナミがゴブリン語でそれを返信すると、直ぐに返答が返ってきた。
「ケン隊長、返答がきました。“ならば再び占領するまで”と言ってます」
「そうか、ならばナミ。返答の代わりに75㎜野砲をぶちかます。射撃準備だ」
「了解!」
ナミが75㎜野砲のところへ戻って直ぐ、ゴブリン捕虜に何やら命令し始める。
するとゴブリン捕虜は意外と早い動きで75㎜野砲の発射準備をしていく。
つづいて82㎜迫撃砲についているゴブリン捕虜も、必死に射撃準備に取り掛かっている。
ナミの近くには水筒とコップが多数置いてある。
ちゃんと働けば水をやるとゴブリン捕虜には言ってあるらしい。
わざわざ見えるところに置く事で効果が出るそうだ。
「迫撃砲はまだ射程外だ。75㎜野砲だけでいく。射撃用意!」
俺の掛け声に合わせてナミが、水筒の水をコップに注ぎながらゴブリン捕虜に指示を出す。
ゴブリン捕虜は水欲しさにナミの命令に従って動き出す。
「撃てっ」
俺の言葉を聞いてからナミがゴブリン語に訳して命令を伝えるので、わずかにタイムラグが生まれるが、75㎜野砲はしっかりと敵部隊へ向かって75㎜砲弾を飛ばした。
砲弾は敵部隊のすぐ近くに着弾して爆炎を上げた。
そうそう上手くもいかず命中はしなかったみたいだが、それほど大きく外すこともなかった。
そんな中、トラックに乗っていたゴブリン兵士の何匹かが、爆発に驚いてトラックから転げ落ちている。
そしてハチの巣を突いたように急にゴブリン部隊がワラワラと動き出す。
「次弾装填急げ、続けて連続射撃。ナミ、後は任せるぞ」
後の指揮はナミに任せて俺は、他のメンバーと一緒にスポンジ戦車へと乗り込んだ。
真っ先に動き出したのは敵ゴブリンの戦車部隊だ。
やはりゴブリン捕虜の言ったように精鋭の戦車部隊なのか、『紅蓮戦車隊』とか言ったよな。
奴らの戦車部隊、ゴブリンにしては反応が早い気がする。
75㎜野砲の2発目が着弾した頃には敵戦車部隊はその場から離れていた。
トラックに乗っていた敵ゴブリン歩兵は、初弾の75㎜榴弾の着弾に大慌てで、トラックから降りると周辺に散らばって退避し始める。
ゴブリン歩兵の数も結構多そうで、これは厄介な展開になってきた。
数で攻められると人数の少ない俺達は不利になる。
歩兵を下車させたトラックは動き出し、それと一緒に他のトラックも安全な場所に移動するようだ。
それまでに何発も75㎜砲弾を撃ち込んでいるのだが、これはという有効弾が1発もない。
まあ、それでも少しは負傷を負わせているはず。
そこへたまたま1発の75㎜砲弾が命中した。
もちろん我々の75㎜野砲の砲弾である。
それは敵トラックの荷台に命中してその荷物を空高く舞い散らした。
「やった、野砲命中!」
しかし、命中したのはそれ1発だけで、その後は砲弾を無駄に消費しただけだった。
早々に動き出した敵戦車は、3両と2両の2手に分かれて左右から攻めてくるらしい。
上手い具合に砂漠の高低差を利用して接近してくる。
おかげでスポンジ戦車からも狙いがつけられない。
いくら75㎜砲の射程に入ったとしても、照準器に捉えられなければミウの命中魔法も使えない。
だからといって下手に撃ってスポンジ戦車の存在がバレるのも困る。
その間に敵ゴブリン歩兵がオアシスに向かってジリジリと接近してくる。
敵ゴブリン歩兵が82㎜迫撃砲の射程範囲に入ったところで、奴らの頭上に82㎜迫撃弾を降り注がせてやった。
しかし捕虜のゴブリンが放つ弾は75㎜野砲と同様に、簡単に当たるもんでもなく、たまに至近弾で少しばかりの被害を与える程度だ。
砂漠のような砂地では、迫撃砲の威力が減ってしまうというのも要因のひとつでもある。
でも奴らの侵攻速度は遅らせることが出来ている。
あの数で一気に攻められると非常にまずい。
それを防いでくれるのは非常に助かる。
「よし、俺達は敵戦車を食い止める。右に回った2両はほっとけ。あっちはさっき埋めた罠がある。左の戦車部隊を迎え撃つ」
するとケイ。
「え、あんな罠だけで大丈夫なの?」
「どっちみち全方向の敵には対処できないだろ。だから右は後回しだ。エミリー、発進して」
そしてスポンジ戦車は、左に回り込もうとするゴブリン戦車3両に向かって走り出す。
しばらくしてオアシスの反対側で爆発音が聞こえた。
きっと俺が仕掛けたトラップに引っかかったんだろうな。
余っている砲弾や迫撃砲弾を罠として埋めたのだ。
ちゃんとした仕掛けを作ったものもあるけど、そのまま信管を上にして埋めたのもある。
なので戦車が踏み潰してもすべてが爆発するかは微妙だったんだが。
それに探知機でバレる可能性もあるし。
でもゴブリン戦車は見事に罠にかかってくれたようだ。
願わくば、2両とも行動不能くらいになって欲しい。
せめて後退でもいい、時間を稼げれば今はそれでも良いんだが。
こうして俺達の戦車はゴブリン戦車3両を迎え撃ちに向かうのだった。
ううむ、全然書けないですわ。
すみません <(_ _)>
次回投稿も少し時間が掛かるかもです。
ですが、次回も、よ、よろしくです……




