12話 ロックヘッド戦
すいません、遅くなりました!
「この窪みが丁度いい。ここから2人は援護射撃をたのむよ。あ、言い忘れるところだった。絶対に俺を撃つなよ。間違っても俺を背中から撃つんじゃないぞ、わかったな」
俺の言葉にミウが不思議そうな表情で答える。
「あの~、それって“撃てよ”っていう意味ととらえてもよろしいのでしょうか」
「なわけねえだろ、死んじゃうじゃねえか!」
エミリーが笑いを堪えながら言う。
「静かに、お兄ちゃん声大きすぎだから」
「あ、すまん……とにかく俺は行ってくるから援護は頼むな」
俺は短機関銃の発射準備を確認すると、身を低くしてロックヘッドへ近づいて行く。
途中から腹ばいとなり、匍匐して接近する。
ロックヘッドの周囲5~8mほどは木々が全くなく、広場のような状態だ。
そこでゴブリン達は寝そべったりしてくつろいでいる。
リーダー格の奴はお約束で赤い布を腕に巻いている。
解り易くていい。
見張り役を含めたゴブリン達は、全く警戒していない様子だ。
広場まで1mというところまで接近したのに全く気が付く様子が無い。
そもそも見張り役のゴブリンはロックヘッドの岩の上に座ったまま、コクリコクリと居眠りを始めている始末。
ゴブリンの会話どころではなく、息使いまで感じる距離。
俺は卵型手榴弾を取り出して右手に握る。
街の裏通りの露店でも手に入るような安物だが、今まで不発だったためしはないからすっと使い続けている。
安全ピンを左手で引き抜き、3匹が固まって横になっているところに投げ込んだ。
手榴弾はちょうど仰向けになっているゴブリンの顔の真横に転がった。
しかし手榴弾から煙が出ていない。
つまり延期薬と呼ばれる導火線に火が付いていない。
やばい、不発じゃねえか!
眠そうな目で不思議そうにそれを見るゴブリン。
何を思ったのかその手榴弾を拾い上げて見つめるゴブリン。
すると急に手榴弾から大量の煙が吹き上げたかと思ったら、突然手榴弾がゴブリンの手の中で爆発した。
炸裂した手榴弾は大量の破片を周りにぶちまける。
瞬く間に仰向けになっていたゴブリン共は血だらけとなる。
その内の1匹、恐らく手榴弾を手に持っていたと思われるゴブリンは、上半身がミンチ肉状態となっている。
あっぶねえ。
やっぱ安物は危険かもな。
俺は気持ちを切り替えて広場に突入する。
ロックヘッドの上で居眠りをしていた見張りのゴブリンが、今の爆発音に慌てて立ち上がり、キョロキョロしながらクロスボウを構える。
そこへエミリーの魔法である“風刃”が見張りのゴブリンの首を撥ねる。
首を無くしたゴブリンは、クロスボウを構えたままロックヘッドの真下に落下する。
俺は手当たり次第に目に入るゴブリンに銃口を向けて引き金を引く。
俺の左手側にゴブリンが1匹、姿勢を低くして俺にクロスボウを構えている。
俺は反射的にしゃがみ込みながら銃口を向けようとするのだが、『こりゃ間に合わねえ』と覚る。
その時ショットガンの発射音がして、そのゴブリンはクロスボウもろとも血まみれの姿に変貌した。
ミウがショットガンで援護してくれたみたいだ。
サンキュウー、ミウ!
俺は左親指を立てて、ミウにお礼の合図を送る。
残り2匹だ。
1匹は悲鳴を上げながらこの広場からの逃走に移った。
しかし逃げる方向がエミリー達のいる方向だ。
もちろん射撃の的となる。
あっけなくミウのショットガンの餌食だ。
残るは1匹、リーダー格のゴブリンだ。
あれ?
どこへ行った?
忽然と消えた。
キョロキョロしていると、突然背中から激痛が走る。
余りの痛さに片膝を付く。
矢じりの先端が右胸から飛び出している。
クロスボウの矢が刺さっている事を理解した。
俺も油断してたわけじゃない。
でも敵の姿が見えないんじゃ警戒のしようがないだろ。
やべえ、無茶苦茶痛いじゃねえか。
このままだとやられる。
痛さに耐えながら後ろを振り向いて銃口を向ける。
後方の小さな岩の後ろの窪みにゴブリンリーダーを発見。
クロスボウに新たな矢をつがえようとしているのが見える。
体が言う事を聞かない。
銃口が思った方向へ向いてくれない。
それでも必死で銃をゴブリンリーダーに向けようとする。
エミリー達の場所からは丁度死角になる場所だ。
援護は期待できない。
俺があいつを倒さなければこっちがやられる。
苦し紛れに引き金を引く。
弾丸はゴブリンリーダーの周りの岩に命中するばかりで、逆に窪みの中に身を隠されてしまった。
視界が段々薄れていく。
まずい、俺死んじゃうのか。
薄れる意識の中で、近くでショットガンの射撃音が聞こえた。
それが最後に俺は意識を手放した。
今日の夜に次話投稿予定です。
よろしくお願いします。
 




