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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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113話 野砲陣地への偵察





 バッタの魔物がゴブリンの野砲陣地へと群れを成して突っ込んでいく。


 あろうことか半狂乱のケイも塹壕から立ち上がって大騒ぎしながら走り出す。


「ああ、あのバカっ。タク、ソーヤ、ケイを止めるぞ、急げ!!」


 さすがに眺めていることもできないので、ケイを助けに行く羽目になってしまった。


 すぐにケイに近づいたのだが、とにかくバッタの魔物が多すぎる。

 10㎝ちょっとの大きさと、普通のバッタとあまり変わり映えがしないのだが、よく見ると目が赤く光っていて、普通じゃない虫ということがすぐにわかる。


 ケイの後ろまで迫ったソーヤがケイの右肩を掴んで「ケイッ」と声を掛けるのだが、反してケイは「いっやぁ~~~っ」と叫んで右手の甲でソーヤの右頬みぎほほへ裏拳をめり込ませる。

 その一撃でソーヤは地面に沈んで遠ざかって行く。


 しかしそれを見たタクは慌てることなくケイに走り寄ると、背中から両手を前に回して押さえつけようと試みる。

 しかしケイはその場でストンと腰から地面に落ちてタクの両手からスルリと逃れる。

 だが、それだけで終わりではなく、「来ないで、来ないで、来ないで~~~っ」と叫びながらオーバーヘッドキックの要領で、タクの顔面に右足のつま先をめり込ませた。


 可哀そうなタクは、空中に鼻血をまき散らして仰向けに倒れていった。


 残るは俺だけだ。

 こうなったら仕方ない。


 俺は持っていたショットガンの銃床じゅうしょうをケイの後頭部目掛けて振り上げる。

 その時、ケイが「あっ」と小さな言葉を漏らしたかと思ったら、そのまま前のめりに顔から地面に突っ込んだ。

 単純に木の根っこに足を引っかけたのだ。


 そうなると俺の振り上げたショットガンの行き場所がなくなるわけだ。


「うわうわ、うわっと」


 俺はコケて転んだケイの背中を走り抜けて、目の前に出て来た殴りやすそうなものに銃床じゅうしょうをめり込ませ、そのままもつれて倒れ込んだ。


「あっぶねえなあ、俺も顔面から突っ込むとこじゃ……」


 上体を起こそうとショットガンを杖のようにして起き上がろうとすると、俺の下敷きになっている生き物が目に入った。


 それは俺のショットガンの銃床じゅうしょうをどかそうと必死にもがいている。

 なんか嫌な予感がするんだが。


 俺はゆっくりとショットガンの銃床を横にずらせてみた。

 何かと目があって、慌ててショットガンの銃床を元の位置に戻す。


 深呼吸してからもう一度ショットガンの銃床をゆっくりとどかしてみる。


 そこにいたのは、鼻血をダラダラと流して苦しそうなゴブリン兵だった。


 ケイが叫ぶ。


「伏せてっ!!」


 俺は咄嗟とっさに伏せようとして、ゴブリンの顔面に頭突きをかます。

 ゴブリンの悲鳴と共にケイが拳銃を連射する。


「ギギャ、ギャ、ギャ」


 ケイが狙ったのはさらに奥に顔を出すゴブリン兵だった。

 珍しくケイが撃った弾丸がそのゴブリン兵の顔面に食い込んだ。


 よく見ればタコツボらしき個人塹壕こじんざんごうが造られているようで、ところどころでモグラたたきゲームのようにゴブリン兵が、顔を出したり引っ込めたりしている。


 ゴブリンの塹壕陣地ざんごうじんちの真っただ中ということだ。

 幸いなのはバッタの魔物がまだ猛威を振るっており、ゴブリン兵の大多数が俺達に構っていられるほど余裕はない状況だったことだ。


 俺はショットガンを構えてゴブリン兵へと撃ちまくる。

 ポンプアクションで次弾装填するたびごとに、俺の下で仰向けで鼻血を垂れ流すゴブリンの顔面を銃床で殴りつける。


 3連射する頃には俺の下にいたゴブリンは動かなくなった。


 そう言えばバッタは俺達に襲ってこないよな。

 いや、よくよく見るとゴブリンにも襲い掛かる様子はない。

 身体に止まることはあっても咬みついたりはせずただじっとしているだけで、ゴブリンはというとバッタに襲われると勝手に思い込んで、身体に止まったバッタを大慌てで払ったり、少し余裕のあるゴブリンは空中に飛んでいるバッタに銃弾を撃ちこもうと必死になってライフル銃を振り回している。


 俺の左肩にバッタが止まった。


 恐る恐るバッタの方へ顔を向ける。


 目が赤い。

 やはり魔獣だ。


 だが、何もしてこない。

 どういう訳だろうか。

 すべての魔獣は人間を襲ってくるというのが人間側の認識である。

 人を見て襲ってこない魔獣など聞いたことがない。


「ソーヤ、タク、少しじっとしてもらえるか。バッタが襲ってこないぞ」


 俺の言葉にソーヤとタクが驚いた顔で俺の肩に止まっているバッタに視線を移す。

 2人はしばらく何もしないバッタの魔獣を見ていたが、ぽつりとつぶやいた。


「「信じられない」」


「ああ、俺も自分の目を疑うよ。自分の肩に止まった魔獣が何もしてこないんだからな。それに他のバッタも見ろよ」


 俺の言葉にソーヤとタクは周囲を見回す。


 バッタの群れが辺りを飛びまくっているのだが、ゴブリンを襲っているバッタは1匹もいない。

 バッタの群れはゴブリンを襲うことなく徐々に群れ移動しているようだ。

 ソーヤの背中やタクの肩にもバッタは止まるのだが、じっとしたまま何も害を加える様子はない。


 そのバッタの群れの移動する方角は明らかにゴブリンの野砲陣地だった。

 野砲陣地に何があるってんだよ。


 まあ、俺達にとっては都合がいい。


「くそ、ケイめ。いつの間に先へ進みやがった。ソーヤ、タク、ケイを助けるぞ!」


 ケイはまたゴブリン方面へ移動しているようで、少し先をふらふらとしていた。

 俺達3人はまだバッタが飛び交う中をケイのいる場所まで走る。


 塹壕ざんごうに隠れていたゴブリン兵は、バッタと格闘しながらも後退を始めた。

 さらに奥にある野砲陣地まで撤退するようだ。


 するとフッとケイが消える。

 いや、塹壕ざんごうに落ちたのか?


 ケイがいるであろう塹壕に俺達がたどり着くと、その中でまるで饅頭まんじゅうの様に丸くなって震えているケイがいた。


「ケイ、もう大丈夫だ。バッタはゴブリンと一緒にあっちへ行っちまったよ。それにあのバッタは襲ってこないみたいだよ。その証拠に怪我はしてないだろ」


 俺の言葉に周りをキョロキョロと見ながらケイはゆっくりと立ち上がる。

 そして小さな声で言った。


「襲ってこなくても怖いものは怖いのよ……」


 まあ、そういうもんか。


 とりあえずゴブリン陣地を偵察するチャンスだ。

 状況がつかめれば降伏勧告もできて、多数のゴブリン捕虜を確保できるのだ。

 そうすれば報奨金も入る。


 なんたって水場は俺達が抑えているんだからな。


「よおし、銃を構えろ。オアシスのギリギリのところを迂回していくぞ」


 いやいやながらもなんとか銃を構えるケイを連れて、バッタが群がるゴブリンの野砲陣地を偵察に向かう。


 少し離れたところにある適当な窪地に入り、双眼鏡でバッタが群がっている方角を観察する。

 やはりゴブリン兵はバッタの対応に夢中すぎて、俺達の事など構う余裕などありそうにない。

 これはもっと近くで観察できるんじゃね。


「タク、一緒に来い。もっと近づくぞ」


 ケイとソーヤをこの場所へ残してさらにタクと俺は草木に隠れながら接近する。


 見えてきた。

 結構な数のゴブリン兵と野砲が見える。

 それに見たくないものが見えてしまった。

 タクが思わず声を出す。


「戦車っ、もう1両いたんですね!」


「そうみたいだな。だけどまたブレタン戦車が1両だけだ。全く問題ないな」


 ゴブリンの戦力は匹数が予想よりも多いが、主力武器は戦車が1両と75㎜クラスと思われる野砲が1門だけだ。

 全く問題ない。

 バッタの魔物がしばらくゴブリン陣地にとどまっていてくれれば簡単に落とせる。

 し、そうでなくても水場を確保しているから持久戦に持ち込めば勝てる。

 幸いな事に、バッタはどこかへ飛んでいくようなぞぶりは見せない。


 よくよく観察すると、ある一か所にバッタが集中しているのに気が付いた。


「なあ、タク。バッタが異常に集まっている場所があるよな。何に集まってると思う?」


「さあ、バッタが群がりすぎて見えませんよね。なんか美味しい物でもあるんすかね」


「まあ、いいか。タク、スポンジ戦車に戻るぞ」


「はい、了解です」


 俺達はケイとソーヤと合流すると、スポンジ戦車へと戻るのだった。










「T‐34レジェンドオブウォー」の完全版を見てきました。

やばいっす!


小説中にあれ?というのが出て来たらそれは映画の影響ですw



ということで次回もよろしくお願いします




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― 新着の感想 ―
[良い点] 「T‐34レジェンドオブウォー」は名作なので、それを小説内に取り入れてると嬉しいですね。
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