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僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第1章 主人公を求めて
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08 初戦闘


 いざ、迷宮ーーーー!。


 今日は気を引き締めないとね。昨夜はワクワクし過ぎてあまり眠れなかった。何故か僕の宿部屋のルームメイトはクラスメイトではなく2人の騎士だったんだけど、もしかして監視かな? 迷宮もサボるとか思われているのかな? 心外だ。


 街の中で集合し、迷宮まで歩いていく。


 街を出て迷宮までは徒歩20分ほどの場所にある。自分達と同じように迷宮に向かうであろう冒険者の姿が見える。騎士の鎧姿より冒険者の自由な鎧姿のほうが憧れるのは何故だろう。そして僕の左右を昨夜同じ部屋だった騎士達が固めているのは何故だろう。おかげで冒険者達からちらちらこちらを見る視線を感じる。


 迷宮の前にみんな集合している。迷宮前には多くの人がごった返していて、さながらお祭りのようだ。迷宮に潜る冒険者に対し商品を売るために多くの露天が並び声をかけている。地図なんかも売っており、クラスメイトも何人か購入したようだ。己が技量を売り込むもの、荷物運びを生業としているものなどが大きな声で自分を売り込んでいる。


「すごい活気だよな」


 少し緊張をした面持ちをした秋人が後ろから声をかけてくる。


「もしかして緊張してる?」


「そりゃするさ、俺は他の連中と違ってステータス低いし……」


「大丈夫だよ、ちゃんと騎士の人たちがサポートしてくれるし、僕達はその通りに動けば問題ないよ」


「でもこういうのってラノベとかだと絶対トラブル起きるよな……」


「ああ、イベントね。大丈夫、秋人は無理をしないよう行動すればいい。どんなイベントも僕が何とかするから」


 秋人に起こりうるイベントを僕が行えば、きっと僕が主人公に返り咲ける。むふふ。


「で? 本音は?」


「そして僕が主人公になる!」


 右手でガッツポーズをする。


「はいはい、めでたしめでたし。でも初宮も気をつけなよ、迷宮は何があるか分からないものなのだから」


「分かっているさ、むしろそれを待っているのだから!」


 むふふ。


「だめだこりゃ」


「はい注目!」


 騎士団長が前に出てきた。横には他の騎士と魔法使いが並ぶ。


「今から迷宮に潜るがその前に、皆と一緒に騎士団が俺を含め10名、宮廷魔術師が3名、皆のサポートとして一緒に潜ることになる。何かあればこいつらを頼れよ。今回潜るのは10階層までだからそこまで危険な魔物は出てこない。だが油断をしてると大怪我につながるから気を引き締めろ」


 後半のセリフ、僕に向けられていた気がするのは何故だろう?


「迷宮で大ポカしたやつは晩飯抜きだからなー!」


「「「はーい」」」


「では入るぞ、まずは一条のグループが先頭だ、戦うのは全員にやってもらうからそのつもりでいろよ」


 騎士団長が迷宮の受付で騎士団証を見せて入る。一条たちも続いて騎士団証を見せて入っている。


 僕達は全員、予め騎士団証が渡されていて、ギルドカードのように街や迷宮に入る際は提示すれば入ることができる。


 迷宮に入ると幅が10メートル、高さ4メートルほどある。天井が明るく光っているので迷宮内は思ってた以上に明るい。もっと洞窟っぽいのを想像していたが、人工物のように壁も床も天井もまっ平らだ。みんな珍しそうに周りを見回している。1階層は冒険者達が狩り尽くしているのか一度も先頭はなくそのまま階段を下り2階層へ。

 2階層ではちらほら戦闘があったようだが最後尾にいる僕達に戦闘が回ってくることはなかった。

 3階層ではそれなりの生徒が魔物との戦いに参加したようで、興奮していたり気分が悪くなっていたりと様々だ。

 4階層でやっと僕達にも魔物と戦う機会が回ってきた。最後尾のグループは僕の他に秋人と委員長がいるが、委員長がまず前に出て蛇腹剣(じゃばらけん)で魔物を斬り刻んでいた。


 そうあのロマン武器、蛇腹剣でだ。訓練初日、武器庫で各々自分に合った武器を手に取り選んでいた。武器庫には


剣、小剣、槍、杖、弓、メイス、斧など様々な武器があったが、蛇腹剣も目立つ位置に飾られていた。

 蛇腹剣とは刃の部分がワイヤーで繋がれ剣としても伸ばして鞭としても使えるロマン武器だ。一度は使ってみたいと言う願望はあるものの、扱いが非常に難しく実践向きではないため本来ならネタ武器扱いなのに、委員長は難なく使いこなしている。

 委員長には『武具の嗜み』というユニークスキルがあるためその恩恵なのだろう。羨ましい……。


「フッ!」


 僕もバットというまんま蝙蝠の魔物を槍で一突きにする。まだ上層なのでそこまで強い魔物は出てこない。

 魔物は殺しても消えてはなくなったりはせず、長時間放置すると迷宮に取り込まれるそうだ。なのでその前に殺した魔物の部位や体内からコアと呼ばれる色の着いたビー玉のようなものを取り出す必要がある。これらを売ることで冒険者は生計を立てているのだ。


 今回はバットだったが、これがゴブリンなら臭くてグロくてその割りにあまり高く売れないので人気がない。

 そんなことを考えていたら、秋人の番にゴブリンが出てきてしまって申し訳ない気持ちになってしまった。


 ゴブリンは身長1メートルぐらい、緑色の人型の魔物で腰には汚れた布を巻いている。戦い方は武器や魔法を使ってくるそうだが、上層のゴブリンには魔法を使うものはいないらしい。今回のゴブリンも右手に錆びたナイフを持っており、こちらに敵意をむき出しにしている。


「はぁぁ!」


 秋人がゴブリンに剣で袈裟斬りしようとするが、踏み込みが甘かったのか少し切っただけだ。


「ギャーーー!」


 斬られたゴブリンが威嚇し、秋人に対しナイフを振り回してくる。


「やぁぁ!」


 一歩下がって剣を上段に構え一気に振り下ろすと、ゴブリンの右手を斬りおとした。

 その右手をぼーぜんと見ているゴブリンの胸元に秋人が剣を突き刺した。


「はぁはぁはぁはぁ」


 初めて命のやり取りをしたせいか剣を握った手が小さく震えている。


「よし、なかなかいい動きだったぞ」


 騎士の1人が秋人肩を2度たたき、秋人も小さく頷いた。


「今からグループを3つに分けるぞ、そして各々のグループで10階層を目指す」


 秋人が最後の1人だったので、またリーダー様のグループから回すのと思ったらそうではないらしい。

 グループ分けをするのは大人数で固まって歩くと遅くなるし、効率も悪くなるからだそうだ。

 僕、秋人、委員長は第3グループだ。

 クラスの人数は35人、教師は今回留守番なので第1第2は12人のグループだが第3は11人のグループだ。


「では第3グループ出発する、遅れずについてくるように」


 第3グループのリーダーをやることになった副団長を先頭に、10階層を目指すこととなった。


読んで頂きありがとうございます。

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