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僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第1章 主人公を求めて
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07 SとかAとか


 召喚された日の翌日は王座の間にて報告と今後の打ち合わせだ。


 クラスメイト達と共に食堂で朝食を食べると騎士たちに王座の間に案内された。

 一際大きく豪華な扉の前に騎士たちが立つと、クラスメイト達が揃っているのを確認し「勇者様方ご入場」と大声で告げ、扉を開ける。


 リーダー様を筆頭にリア充グループが入り、他のクラスメイト達も入っていく。


 何故か教師が最後尾にいるのだか、この人はこれでいいのか?


 扉をくぐると体育館1個半ぐらいの広さの部屋がある。部屋の中央より少し前方に10段ぐらいのゆったりとした段差が見える。その階段を上りきった上に王らしき初老の男性が背もたれの長い椅子に座っている。王冠をかぶり豪華なマントを纏い金色の杖を持ってこちらをじっと観察している。そしてその左隣には順に30半ばぐらいの男性、20歳ぐらいの男性、そして昨日いた純白ドレスがそれぞれ椅子に座っている。


 おそらくあそこに座っているのが王族なのだろうね。


 部屋の両サイドには軍人や貴族らしい服装を着た人たちが一列に並びこちらを値踏みしているように見える。

 騎士たちが王族と軍人や貴族の間を遮る様に並び、階壁際にも立っている。


 案内してきた騎士たちが段差の5メートルぐらい手前で立ち止まると、リーダー様たちにもそこで立ち止まるように言う。


 皆が立ち止まると王がまず突然の召喚の謝罪と魔王討伐に参加することに対する感謝の言葉や、王族の紹介。

 それが終わると今度は両サイドに立っている軍人や貴族、近衛騎士団長や宮廷魔術師団長の紹介が始まった。

 最後にこの国にいる間の衣食住の保障と武器や防具の支援などを保障するというお墨付きを貰い解散となった。



 ◇



 翌日から、午前はこの世界の一般常識や魔術についての座学、午後には体力をつける為のマラソンや実技訓練などが開始されることとなった。

 そして一ヶ月後には近くにある、迷宮に潜ることが決定した。


 はいはい、テンプレテンプレ



 ◇



 訓練2日目にレベルが2に上がった僕は、次なる感動を求めるために街に出た。そう、けっしてサボりなどではない!


 3日目の午前の座学を終え昼食を食べると、訓練場へは行かず王宮の門の前まで来ていた。そしてそのまま門を出ようとすると衛兵達に止められた。


「お、お待ちください。街へはどういうご用向きでしょうか?」


「僕は神騎士としての勤めを果たさなければならないのです」


 右手のひらを胸に当て目をつぶりながらそう嘯くと、衛兵の一人が慌てて騎士を呼びにいき、2人の騎士を案内につけられ街に出る許可を得た。


 まあ実際は案内ではなく監視役なのだろう。


 街に出るとまずは冒険者ギルドに向かうことにする。やはり異世界と言えば冒険者は基本だしね。


 門を出るとしばらくは豪華な豪邸が並ぶ。このあたりは貴族の邸宅が並び、外壁に近づくと庶民の家があるそうだ。


 メイン通りをまっすぐに進むと商業ギルドがあり、そこを左に曲がってしばらく進むと冒険者ギルドがあるそうだ。


 冒険者ギルドの看板は盾の上に剣が斜めに合わさったこれぞと言うものだった。


 扉をくぐると右側が酒場になっており、左側に受付がある。中には20人ぐらいの人がいて、こちらを何事かと見てくる。


 ふむ、ここが夢にまで見た冒険者ギルドか。ここで登録していずれドラゴンなんかを倒すとSランクとかになるのだろうな。だけど新人が登録しようとするとベテランだけど性格の悪いハゲたおっさんに絡まれるのはお約束だよね。くふふ。


 空いてる時間なのか、受付が空いてるのでそこに向かう。受付は6台あるがどこも美人の受付嬢が座っているのはテンプレだな。

 やはりギルドの受付と言えば美人と相場が決まっているのだろう。


 とりあえず左端の可愛い受付嬢のとこにいく。


「すみません、登録に来たのですが」


 受付嬢が僕と後ろの騎士達を見て驚きながら対応してきた。


「え、と、登録でよろしかったでしょうか?」


「ええ、もちろん」


「で、ではまずこちらの用紙に必要事項をご記入頂けますでしょうか。終わりましたら、受付までお持ちください」


 受付嬢から用紙を一枚渡される。用紙には『氏名』『生年月日』『職業』と書かれていたのでささっと記入する。


 職業欄には『神騎士』は目立つだろうから『騎士』と記入しておく。


 側で見ていた騎士達もホッとしていたから正解だろう。


 記入した用紙を受付嬢に渡す。受付嬢がサッと目を通し、こちらを向く。


「初宮様ですね。ではこの水晶の上に手を載せて下さい」


 王宮にあった物とは違い、ハンドボールほどの大きさの水晶だ。手を載せると中で光がクルクルと回っている。受付嬢が金属のカードを当てるとその光がカードに吸い込まれるようにして消えた。


「はい、よろしいですよ」


 カードと用紙を上司らしき人に渡した受付嬢が、冒険者ギルドの説明をしてくれるようだ。


「ギルドカードはこの大陸にいる限り、身分証明書として使用することができます。ですので他の街に入る際はギルドカードを提示すれば入ることができます。ただし、犯罪を犯された場合はこの限りでないので注意して下さい。ギルドカードには『名前』『生年月日』『職業』のほかに、冒険者ギルドのランクが記入されることになります」


 おお、やはりランクがあるのか。Sランクのギルドカードを見せて「僕はSランクだけど何か?」とかって言っちゃおうかな。くふふ。


「ランクについては上からS、A、B、C、D、Eランクとありますが、Sランクは現役を引退された方がその功績に応じて与えられるものですので、現役ではAが最高ランクと言って差し支えありません」


 ……え? Sって実質的なランクじゃないの?


「登録後はまずEランクから始めることとなります。ランクを上げるには同ランクの依頼を10回以上受け8割以上の達成でワンランク上の依頼を受けられるようになります。ワンランク上の依頼を5回以上受け8割以上の達成でランクが1つ上がります。同ランクの依頼の失敗が多くなりますと、ランクが下がりますので注意して下さい」


 なるほど、1ランク上げるのに最短で15の依頼を受けないといけない訳か。つまりAランクまで最短で60の依


頼か。これだけ聞くと簡単そうだけど、上位ランクは難しい依頼が多いのだろうね。


 受付嬢がカードを出してくる。


「このカードを持っていればお金を預けることが可能です。そのお金は各都市の冒険者ギルド、商業ギルドで出金することが可能です。そしてそれを行えるのは基本的に本人だけです」


「基本的に、とは?」


「ご本人が亡くなられた場合に限り、予め登録された他の方も出金することが可能です」


 夫婦で予め登録とか、親子でってことかな。


「最後に、このカードは初回のみ無料で配布されますが、再発行は銀貨15枚かかりますのでなくさない様にしてくださいね」


 受付嬢に、出来上がったギルドカードを渡された。


 銀色に輝くそのカードを受け取ったとき、初めてこの世界に来たことを実感した気がした。



 ……あれ? 絡まれるイベントは?



 ◇



 訓練の日から一ヵ月後


 ついに迷宮に潜る日の前日になった。みんな厳しい訓練により、レベルも10前後まで上がっている。今日は馬車に乗り、今いる王都を出て迷宮のすぐ側にある迷宮都市ラビリポルタに泊まる予定だ。みんな王都を出るのが初めてなのでテンションが上がっている。

 出発の時刻になったので騎士団長が前に出てきた。


「さて皆、これからこの王都を出発し、ラビリポルタに向かう」


「「「おおーーー」」」


 騎士団長がそう言うとクラスメイト達から歓声が上がる。


 皆、訓練漬けの日々から開放されるのが嬉しいのだろう、かなり厳しい訓練をやっていたからね。僕?3日後には自主訓練と言う名のサボりに励んでいたよ。おかげでレベルは最低の3だったりする。リーダー様や委員長は12まで上がってるとか。ほんとみんな頑張ったよね。


「ただし、王都を出ると言う事は魔物と遭遇するということだ。いや魔物だけではなく野盗などに襲われることもある。もちろん我々が出てくる魔物だろうが盗賊だろうが討伐するが、万が一がないとも言い切れない。だから各人、警戒はしっかりしておくように」


 そう聞くとクラスメイト達の顔に緊張が走る。魔物も殺したことのない僕達に襲い掛かってくる人と戦うなんてことは考えたこともないだろう。


「みんな大丈夫だ!」


 お、リーダー様の登場だ。


「もしも騎士の方々が討ち漏らすようなことがあっても、俺がこの剣で襲い来る敵をすべてたたき斬ろう」


 リーダー様が腰の綺麗な剣を抜き、天にかかげる。


「おれっちも付き合うぜ、翔!」

「そうだな、訓練の成果を見せてやろうぜ」

「私も炎の魔法で焼き払ってやるわ」


 緊張していたクラスメイト達の顔にやる気が満ち溢れてきた。それを見ていた騎士団長もにやりと笑みを浮かべている。


 あの剣ってもしかして聖剣とかかな? 秋人の商品売買で聖剣って売れるのかな?


 リーダー様がビクッとして怯えたようにキョロキョロ周りを警戒し始めた。


 『危険察知』に反応したのかな、冗談なのに。




 クラスメイト達が次々と馬車に乗り込む。僕は最後尾の馬車だ。


 王都を出ると人が歩いていたり、馬車が走ってたりするものの建物などはなく、土の道となだらかな丘と少し遠くに森が見える。

 馬の蹄の「パカパカ」と鳴る音と、馬車の車輪の「ガタゴト」と鳴る音を聞きながら、長閑な風景を見るととても魔物がいるようには思えなくなってくる。

 しかし時折、馬に乗っている騎士達から魔物の発見の報告が聞こえてくるとここは異世界なんだと実感させられる。


「……や、……みや、初宮」


「……ん?」


「着いたぞ、起きろ」


 秋人が肩を揺らしてくる。

 ……あれ?いつの間にか寝てた?馬車の外を見てみると、既にどこかの街の中に入っているようだ。


「……ここは?」


「ラビリポルタだよ。よく平然と眠れるな」


 秋人が呆れた目で僕を見てくる。


「まだイベントには早いし……」


「……道中で50匹ぐらいのゴブリンに襲撃されるイベントはあったよ。一条や委員長も騎士と一緒に戦ってたよ」


「……ふーん」


 そんなイベントがあったのか、僕の読んだラノベにはなかった展開だ。


「今夜はこの街の宿に泊まるからね、皆もう集まってるよ」


「はーい」


馬車から下りて集合場所に向かった。


お読み頂きありがとうございました。

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