表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第1章 主人公を求めて
5/129

05 これが欲しかった


 ステータスの確認を終えた僕達は一度自分達の部屋に案内されることとなった。そして夕食の際に集まり、みんなで今後のことを話し合うことが決まった。


 与えられた部屋は20畳ぐらいあり、ベッドも天蓋つきで家具も調度品も豪華だ。とりあえず壁に掛かっている絵画を外し、インベントリに入れる。そのまま部屋を出て、秋人の部屋を探す。

 秋人の部屋は一番遠くにあり、明らかに客人を泊めるような雰囲気ではない場所にあった。

 ノックをし、返事を待たずに部屋に入る。部屋を見渡すと簡易ベッドと机と椅子があるだけの狭い部屋だ。

 秋人はベッドに座って不満そうにこちらを見てくる。


「……普通、返事があってから入るもんだろ」


 秋人はちょっと不満そうなので謝罪しておく。


「ごめん、ごめん。ちょっと待ちきれなくて……」


「なにが?」


「ほら、僕っていつも巾着を持ち歩いているじゃない」


「ああ、あれね。今は持ってないのか?」


「うん、召喚の際に持たずに来てしまったからないんだよ」


「荷物は一緒に来なかったもんね。それでそれがどうしたの?」


「秋人のユニークスキルに『商品売買』ってあったよね。あれで商品を買えないかなって思ってね。もう試した?」


「いやまだ、そもそも使い方が分からないし」


「商品売買って頭に思い浮かべてみて」


 秋人が目線を上に向け「商品売買」と声に出す。すると秋人の前に14インチほどの半透明のウインドウが浮かび上がってくる。


「おお、なにか出てきた」


「スキルなんだからわざわざ声に出さなくてもいいんだよ」


「そっか、初めてだからつい」


 恥ずかしそうに頭をかいている。

 秋人の横に座り、ウインドウを覗き見るが、何も映されていない。


「……見えない」


「え? うそ、いくつかボタンが出てきているけど?」


 なるほど、本人にしか見えない仕様になっているわけだ。

 ウインドウには『入金』『取り出し』『購入』『売却』というボタンがあるそうだ。


「じゃあ購入ボタン押してみて」


 僕がそう言うと秋人がウインドウを操作した。


「思ってたよりも色々あるな。『日用品』『家具』『食料品』『武器』『防具』『戻る』というボタンが出てきたよ」


「本やDVDはないのか?」


「ないよ、でも本はともかくDVDは電気がないと見れないでしょ」


 この世界にいる限りアニメは観れないのか。


「レベルが上がればカテゴリーや種類が増えるかもよ」


「このスキルって結構優秀だったりする?」


 みんなが欲しがるスキルであることは間違いないだろうね。


「代わりになるスキルもなかったし必要とされるスキルじゃないかな」


 そう聞くと嬉しそうな顔をする秋人。


「でも体よく使われそうだよね、報告するかは秋人の判断でいいんじゃない?」


 色々想像したのか、とたんに苦い顔をする。


「言わないほうがいいのかな?」


「言ったとしても立場が良くなったりするようなものではないと思う。秋人のステータスがクラスメイト達の平均ぐらいあれば事情は変わったのだろうけど」


 秋人は、ため息をつき「そっか」とつぶやく。


「なにイベントが起こればステータスが大幅に上がり強くなる。すべて時間が解決してくれるさ」


「それ、アニメやラノベの話だよね! ギリギリで生き残り精神が侵されたりする感じのやつだよね!」


「無理ゲーの一歩手前の超ハードモードで選択を間違えたら大怪我を負ったり死んでしまうような強敵がうようよいて、さらでそこに1ヶ月ほど過ごすとかかな」


「……普通に暮らせたら十分なんだけど」


 それは主人公としてどうなんだろ……。


「その為にはまず、こちらの世界の常識や力を手に入れないといけないね」


「はぁ、そうだよね。そしたら出て行けるかな?」


「素直に出してくれると思う?」


「ないよね、あのお姫様はちょっと信用できないし」


「分かってるね、魔王を倒したところで元の世界には帰れないと考えておくべきだね」


「じゃあ元の世界に帰る方法はないの?」


「さあね、あの召喚の魔方陣を解析するか、転移タイプのスキルを手に入れるかすれば帰れるかもね」


 とはいえ、あの手の魔方陣は一方通行って相場が決まってるけどね。


「そんなことより『日用品』のカテゴリーに箸と歯ブラシってある?」


「そんなことって……、あるよ、どっちも250エルって書いてある。でもエルなんて通貨、持ってないよね?」


 エルか、こっちの通貨かな。


「じゃあこれを使って」


 インベントリから部屋にあった絵画を取り出す。


「え? なにこれ? どうしたのこれ?」


 秋人が驚いて聞いてくる。


「部屋に飾ってあったのを取ってきた」


「いやいやまずいでしょ、ばれたらどうするの?」


「とりあえず『売却』でこれを売ってしまえばいい、どうせ証拠はなくなるんだし」


 秋人は戸惑っているが、無理やりこんなところにつれてこられたんだ。使えるものは使うべきだ。

 絵画を前に置くと秋人がウインドウを操作する。


「本当に売ってしまっていいんだね」


「おーけー」


 返事を返すと秋人がウインドウを押す。

 すると絵画が消えてしまった。


「あ、80万エルが画面の上に表示されてる」


「じゃあそれで箸と歯ブラシを2セット購入してみて」


「分かった」


 秋人がウインドウをポチポチ押すと秋人の前に箸と歯ブラシが各々2つ出てくる。それを受け取るとインベントリに入れる。


「ありがと、これで安心だ」


「他にはなにか購入する?」


「そうだね、色々日用品や保存食を購入しておこうかな」


 そう言っていくつか購入しインベントリに放り込む。だいぶお金も余っていたが、それは秋人が来るべき時のために必要になるだろうから受け取らなかった。


 色々手に入ったことに満足し部屋を出て行くことにする。


「まだまだ買いたいものがあるから死んじゃ駄目だよ」


「分かってる、精々頑張るよ」


 その返事に満足し、部屋を出て行った。


お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ