04 完璧な逃げ方
クラスメイト達が秋人のステータスを見て笑い出す。
「おいおい、なんであいつあんなにステータス低いの」
「ぷぷ、まじかよだっせーー」
「ありえねーだろ」
クラスメイト達の言葉に俯く秋人。そんな秋人を見て睨めつける僕。
「ちょっとみんな、何を笑っているの。同じクラスメイトなんだからそういうのは良くないわよ。黒氏君も気にしないで、まだレベル1ってことは伸び代があるってことだからきっと大丈夫よ」
委員長が止めに入る。さすが委員長、安定の委員長。今はそんな真っ直ぐな委員長だけが唯一の癒し。
「最後はあなただけですね、どうぞこちらに手を載せてください」
純白ドレスがステータスの確認を勧めてくるが、正直そんな気分ではない。
よく考えたら秋人って天然物の主人公キャラではないか。オタクだし、成績も運動も顔も平凡だし、そのくせクラスのいや、学園一の美少女に好かれているとか。完全にハーレム系主人公じゃないか。
ああ、もう帰りたい。帰って引き篭もってアニメをずっと観ていたい……。
「あ、あのー、き、聞いてますかー?あなたで最後ですよー」
純白ドレスが困った顔でこっちを見ている。
……はぁ、このままだとストーリーも進まないし、さっさと終わらせますか。
僕は手を水晶に載せる。水晶が強く光だし、石版にステータスが表示される。
この世界に来た時はこの瞬間を心待ちに待っていたのに、今はただの消化試合でしかない。
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初宮冬夏
年齢:17
種族:人間
職業:神騎士レベル1
攻撃:320
防御:320
敏捷:320
魔力:320
魔耐:320
スキル:剣術 盾術 光魔法 スタミナ回復 魔力回復 威圧
ユニークスキル:貫通攻撃 絶対防御 状態異常耐性 インベントリ 天賦の才 看破 通訳
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「「「「おおおおーーーーーーーーー!!!!」」」」
一際大きな歓声があがる。クラスメイト達だけでなく、純白ドレスに派手マント、そしてモブ化していた騎士や魔法使い達もが驚きに声を上げる。
「レベル1で全ステータスが300を超えているなんて・・・」
「神騎士!?もしや女神様の御使い様!?」
「既に騎士になれる実力じゃないか」
「勇者様よりもステータスが高いぞ」
「ユニークスキルの数も勇者様と同じ数だ」
「もう一人で魔王倒せんじゃね?」
「チートじゃねえか」
僕のステータスを見て皆が騒ぎ始める。
……こういうのって偽装系タイプの主人公のステータスだよね、偽装や隠密は付いてないけど。こういうステータスはリーダー様の役目じゃないの? どうなってるの?
そう思っていたらリーダー様が近づいてきた。
「初宮、一緒に頑張っていこう」
爽やかな笑顔を浮かべ、握手のポーズをとってくる。
……なに言ってんのこいつ。
いやそうか、本来ならリーダー様が主人公のライバルキャラとして君臨するはずが僕の登場でリーダー様が霞んでしまった。だからリーダー様は僕を自分の陣営に入れることで、存在感の強化を図ることにしたわけか。カースト維持も大変なんだな。
だけど僕がこのグループに入ればライバルルート確定だよね。ということはこの握手は全力回避だ。
リーダー様の手に普段からポケットに入れている飴を握らせる。そしてリーダー様の横を通りそのまま席に戻る。
「え? 飴?」
リーダー様は戸惑っているようだけど、これで完璧。