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僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第1章 主人公を求めて
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02 委員長はスパイかも?


 眩しさをから目を閉じていたが、光が収まったようなので閉じていた目をゆっくりと開ける。

 今いる部屋は教室3部屋分ぐらいの広さがあり、正面に女性を模った像がある。床にはおそらく教室の床に現れたものと同じであろう魔方陣が描かれている。周りにはぐるりと僕たちを囲う様に騎士が立ち、その内側にはローブを着たいかにも魔法使いの風貌の者たちがこちらを観察している。

 像の前には2人。一人は15歳ぐらいの純白のドレスを着た女の子。もう一人は白い服に派手なマントと金色の帽子をかぶり、金色の杖を持った爺さんだ。

 きたきたきたーーーー! 異世界転移きたーーーーー!




 ―――そう思い喜んでいる時期が僕にもありました。



 ………巾着がない。そう、いつも持ち歩いているあの巾着、箸と歯ブラシの入っているあの巾着がないのだ。

 移動するときなどは持ち歩いているのだけど、授業中は邪魔なのでいつも机の上に置いていたのだ。ただ魔方陣が現れたときは興奮していて、巾着のことはすっかり忘れていた。鞄にも予備が入っていたのだけれど、鞄もここには無い。

 ……まじか、虫歯になったらどうすんの。

 ……はぁ…もう元の世界に帰りたい。


「我らが世界へようこそ、勇者様方。まずは我々の召喚に応じて下さったことに深く感謝いたします。ここではなんですから、場所を変えるとしましょう。我々について着てください」


 派手マントがなんか言っている。ああ、ストーリーが進行し始めたのか。とりあえずここにいても仕方ないのでついていくしかないか。



 ◇



 先ほどの部屋よりも広くて豪華な部屋に案内された。部屋の前方の真ん中には大きな水晶があり、正面には大きな石版がある。 

 これはテンプレ通りならステータスなどを見るための道具だよね? 欲しいのだけど持って帰ったら駄目かな? 怒られるかな?

 水晶から少し離れたところに椅子が並べられており皆各々座り始める。僕は当然一番後ろの一番端だ。主人公と言えば一番最後にステータスを見られることにより他の人と比べられ、「おいおい、なんであいつあんなにステータス低いの」「ぷぷ、まじかよだっせーー」「ありえねーだろ」と罵られるんだよね。でも色々あって最後には強力なステータスを手に入れ、クラスメイト達を見返してスカッとするんだよね。

 派手マントが前に出てきて説明を始めるようだ。


「さて勇者様方、この国の名は聖王国イトゥーナ、そして私は聖王教会の教皇をしておりますサムエーレと申します」


 派手マントの言葉にクラスメイト達が騒ぎ出す。


「イトゥーナってどこだよ?」

「つーかさっき召喚とかって言ってなかったか?」

「え、なに? 海外? 意味分かんないんだけどー」

「さっきまで私たち教室にいたよね?」

「鞄とか無いんだけどどこだよー」


 慌てて教師が立ち上がる。


「おいみんな、とりあえず話を聞こう。俺たちは何も分かっていないんだ。だから話を聞いてから相談することにしても遅くはないだろ」


 はいはいテンプレテンプレ。


「ありがとうございます。では殿下、よろしくお願い致します」

「はい」


 派手マントが下がり、今度は純白ドレスが前に出てきた。


「私の名前はアウロラと申します。この聖王国イトゥーナの第3王女です。まずは皆様をこちらの都合で呼び寄せてしまったことを深くお詫び申し上げます」


 そう言うとスッと流れるようにこちらにお辞儀をした。

 クラスメイト達は純白ドレスがお辞儀をするとは思ってもいなかったらしく驚いている。

 純白ドレスが下げていた頭をゆっくりと上げる。

 斜め45°の最敬礼とは、こっちの文化をよく理解しているね。

 頭を上げた純白ドレスはクラスメイト達を見渡すと、目に力を入れ話し始めた。


「今、この世界の国々は未曾有の危機に陥っています。それは魔物や魔族たちを率いて魔王が侵略してきたからにほかなりません。もちろん我々も抵抗しました。祖国を守るため、同胞達を守るため。しかし魔族たちの力は強力で多くの同胞達がその命を散らしていきました。そこで我々は女神様に祈りました。『どうか我々に悪しき魔王を倒せる力を』と。女神様は答えてくれました。『この召喚の魔方陣を使えば魔王を倒せる勇者を呼び寄せることができる』と。そして藁にもすがりたい我々は勇者召喚を行ってしまったのです」


 そう言いきるとクラスメイト達を見回し、今度はすがる様な目を向けだした。


「どうか、どうかこの世界をお救い下さい勇者様方。皆様方こそがこの世界の希望なのです!」


 祈るように手を組み、その目から涙を流しながらクラスメイト達に訴えかけてくる。

 クラスメイト達はその光景に息を呑む。

 うん、なかなかの演技力だね。うちの演劇部に欲しい人材だ。

 委員長の『桜庭(さくらば) 花蓮(かれん)』が手を上げる。


「あの、それで元の世界に帰る方法はあるのですか?」


 さすが委員長、この空気を無視してストーリー進めるためのテンプレセリフをしっかり言うとは。


「はい、魔王を倒すとその体内にあるコアが手に入ります。それを使用すれば全員帰れるはずです」


 クラスメイト達が安堵の息を漏らす。


 はいはい、テンプレテンプレ。『はず』って明言避けてるし、魔王を倒さないと確認する方法がないから証明できないし。


「魔王を倒した暁には皆様にはそれぞれの貢献度に応じそれ相応のお礼もさせて頂きます。もちろん皆様の世界でも換金できるよう宝石や貴金属などをご用意します。そして魔王を倒された方にはさらにすばらしい特典もご用意させて頂きます」


 おおーーーっと歓声が上がる。


 お次はニンジン作戦ときましたか。すでに半数以上が乗り気になっているように見えるけど、賭けるのは自分の命なんだけどちゃんと理解しているのかな。


 再び委員長が挙手をする。


「ですが私達は戦いとは縁のない国にいました。ですのでいきなり戦うなどと言われても戦う術を持っていないのですが」


 委員長って実はオタク?狙ったようにテンプレな質問をしてるのだけれど。まさかこの国から送られてきたスパイなのか!?


 純白ドレスも待ってましたと笑顔で答える。


「皆様にはあの召喚の魔方陣を通る際に女神様から特別な力が付与されているのです。今、我々があなた方と話ができるのは、その力の恩恵によるものです。魔方陣を通ってきた皆様には『通訳』と言うスキルが備わっています。もちろんそれだけではありません。それを今から調べていきたいと思います」


 そう言い終わると、純白ドレスはドヤ顔した。


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