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僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第1章 主人公を求めて
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18 ガンマン聖女誕生?


 迷宮4日目


 50階層を超えると魔物が連携を取るようになってきた。しかも魔物との戦闘をするとその音や声に反応し、魔物が次々と集まってくるのだ。なので今までは陣形などなかったが、委員長が前、真ん中に天沢、後ろに僕という順に並び、委員長と天沢が前からくる魔物を担当、僕が後ろからくる魔物を担当することとなった。

 とにかくこの階層は魔物の数が多い。おそらく他の冒険者はこの階層まで来ていないのだろう。ほとんど休む暇なく戦うことになり、始めは防御に徹していた僕だけど、積極的に攻撃し魔物を倒していくことにした。

 2時間以上戦い続けても魔物が減る気配を見せないので、こちらも戦い方を変えることにする。後ろの通路を障壁で完全に塞いでしまい、2人と共にまず前の魔物を殲滅する。

 殲滅が終わると、2人ともホッとした顔を見せる。


「正直51階層をなめていたね、ここまで魔物が多いとは想像してなかったよ」


「私もここまで酷いとは思わなかったわ……」


「はい、倒しても倒しても魔物が次々出てきてキリがありません……」


「なので場所を袋小路に移動しようと思うんだけど」


「正面の魔物だけを相手するわけね」


「いいと思います。後ろを気にしながら戦うのは気が抜けませんし」


 袋小路に移動し、僕と委員長が前衛、天沢が後衛でどんどん魔物を狩っていく。

 やはり後ろを気にしなくてもいいのはありがたい。この階層はウルフ系の魔物が多く、少し離れた位置にいるウルフを倒さずにいると遠吠えを上げ仲間を呼ばれ、2人の援護に向かうことができなかった。だが後ろを気にせず戦えるなら3人の火力を集中できるので、どんどん呼んでもらいこの階層の魔物を狩りつくせばいい。そして階層の魔物をあらかた狩り尽くした後に進めば楽に攻略できるだろう。

 2人も先ほどまでとは違い、顔に余裕が出てきている。


「それにしても多いわよね。いったいあと何匹いるのかしら?」


「朝からずっと戦っていますけれど、減る気配が見えないですよね」


「このまま終わらないようだと最悪撤退も考えないといけなくなるね」


「それにはまだ早いわ、今は迷宮の進化の影響で魔物が多いだけかもしれないもの」


「そうです、それに秋人君もこの迷宮にいるかもしれませんし」


 ………………秋人? なぜここで秋人が出てくるのだろ?


「あ! そ、そうだよね、その通りだよ」


 思い出した! 秋人の救出という名目で迷宮にきてたんだ。


「あなた、忘れてたでしょ」

「忘れないでください、その為にここにきてるのですから」


「そそそ、そんなことないし……」


「……なにその分かりやすい動揺の仕方は」


 呆れられてる!?


「2人とも遊んでないで、今は戦闘中ですよ」


 天沢に怒られた。


「「ごめんなさい」」


 でもこうずっと戦ってると慣れてきて、作業みたいになってくる。今はいいけどそのうち眠くなりそう。


「あと100匹ほど倒したら休憩入れよっか?」


「ええ、今日はずっと戦ってるだけだから、少し休憩を挟んだほうがいいわね」


「少しずつ魔物の数が減ってきてるみたいですけど、いつ終わるか分からないですからね」


「今日はこの作業で1日終わりそう」


「確かにこれは戦闘ではなく作業よね」


「魔物を倒すことに慣れてきて、どう戦えばより早く倒せるかを考えるようになってきましたよね」


「効率を追い求め過ぎると冒険者じゃなく廃人になるよ」


 一狩では終わらないんだよね。物欲センサーのせいで……。


「ゲームじゃないんだから……」


 なぜ理解できるんだ!? さすが委員長。


「廃人ですか?」


 天沢はそのままでいてね。


「攻撃力があるから槍よりも双剣って手もあったかな、手数で攻めるのはありだと思う」


「槍でも十分安定した戦いができているじゃない」


「そうですね、リーチの長さを生かして最小の動きで倒しているのを見ると本当に無駄な動きがないのが分かります。それに槍は先制が取れますし、短所である間合いの内側に入ってこようとしても障壁を使えば相手を引き離すことができ、いつでも自分の間合いで戦えます」


 ん? 天沢が格闘技の解説者みたいなことを言い出したぞ。委員長もちょっと驚いてる。


「双剣は手数が多いように思えますが片方を防御に、もう片方を攻撃に使用するのが一般的です」


 あれ? まだ続くの?


「その為、手数が倍になるというわけではなく、右側にいる相手を右手で攻撃しその後、左側にいる相手を左手で攻撃といった感じで順番に攻撃していくので左右の相手を同時に攻撃みたいなことはその瞬間、無防備になるため実力者がそのような真似をするなんてありえないと言ってもいいでしょう」


 なに? 天沢って槍マニアなの!?


「つまり、双剣を使い相手を倒すのも、槍を使い相手を倒すのも倒す早さというのはあまり大きくは変わらないのです。しかも双剣は……」


 まだ終わらないの!?


「まって、まって。今は戦闘中だからまたその話は後にしよう」


 でもその話は天沢の前では絶対に振らないようにしよう。


「きょ、興味深い話だけど、今は戦闘に集中しましょ」


「あ、そ、そうですね……。すいません……」


 まさか天沢がここまで武器について熱く語るとは思わなかった。

 天沢がしょぼんとしているが、その持つ杖から放たれる魔法は的確に魔物の頭を吹き飛ばしている。

 そのうち職業がスナイパーとかになりそう。


「じゃあ予定の100匹を超えただろうから、一度休憩にするよ」


「分かったわ」

「分かりました」


 障壁を正面に展開する。これで魔物が入ることは出来なくなった。

 インベントリからテーブルと椅子、テーブルの上に飲み物や簡単な食事を取り出す。タオルも取り出し水で濡らし2人に渡す。タオルで顔や鎧に付いた血や汚れをふき取り椅子に座る。委員長は剣モードで戦っていたためかなりの返り血が付いているので、頑張って拭いている。

 天沢は椅子に座らず、障壁の向こうにいる魔物を見ている。


「天沢? 休憩しないの?」


「あ、ごめんなさい。少し気になることがあったので……」


「気になること?」


「はい、これって透明ですよね。光魔法なら通過するような気がして…」


「するけど?」


「え? するのですか? じゃあこちらから光魔法で一方的に攻撃ができるってことですよね」


「あ、できる……はず……」


「じゃあ、ちょっと試してみますね」


 天沢が光魔法を魔物に次々と撃ち込んでいく。

 聖女ってこんなガンマンみたいな戦い方をする職業ではないでしょ……。


「あ、通りますね」


 最初の一発で分かっていたよね。その後何発も撃ち込まなくても十分分かるよね。

 休憩って言ったのに休まず嬉々として魔法を撃ち続ける天沢と、それを羨ましそうに見ている委員長。

 結局、天沢が休憩を始めたのが障壁を展開してから約1時間後だった。


お読み頂きありがとうございます。

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